ほとんどの国で「外国人参政権」が認められていない理由とは

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「ダイバーシティ(多様性)」が社会のさまざまな場面で取り上げられるようになって久しい。例えば、企業現場においては女性管理職の積極的な登用であったり、中高年の方との当活用であったりする。

例えば経済同友会は2012年から毎年、ダイバーシティに関する企業にアンケートを行っている。項目としては、上述した女性、中高年(人財)に加え、外国籍(人財)、障がい者の方などについて、聞き取りが行われている。

今回の衆院選挙においても、希望の党が公約の一つとして「ダイバーシティ社会の実現」を掲げている。これは「すべての人が輝ける社会」を目指し、特に「女性、シニアの力」を生かすというものである。

外国人についても、しばしばダイバーシティや「(多文化)共生」の枠組みの中で語られるが、本稿では中でも外国人参政権について述べてみたい。

現在、外国人に参政権を付与することは、いくつかの理由から認められていない。

そのうち人権の観点から、人権は前国家的権利、すなわち本来人間に備わっていた権利であるが、参政権は前国家的権利ではないという論理である。また外国人への参政権保障は国民主権に反する、即ち憲法上保障されないとするのが否定説の主旨だ。

過去に、外国人参政権付与に関する訴訟も行われている。例えば最高裁まで争われた訴訟も4件あるが、すべて退けられている。

世界各国の国政参政権付与の状況は、どのようであるか。概要をまとめると下図のようになる。

付与対象者国籍備考
イギリス英連邦諸国 
アイルランドイギリス議会選挙のみ
ポルトガルブラジル5年以上居住
ニュージーランドイギリス 
バルバドス英連邦諸国3年以上居住
ベリーズ英連邦諸国1年以上居住、または永住者
チリすべての国5年以上居住
ウルグアイすべての国15年以上居住
マラウイすべての国7年以上居住

居住年数の条件はあるが、チリ、ウルグアイ、マラウイのように、すべての国を付与対象としている国は稀である。またイギリスと英連邦諸国のような関係を除き、ほとんどの国は国政レベルにおいて、外国人に参政権を付与してはいない。

これが地方レベルの選挙になると、例えばEU加盟国同士であれば、やはり居住年数など一定の条件下ではあるが、参政権付与の範囲は大きく広がる。

では、なぜ外国人参政権付与については慎重にならざるを得ないのか。

一つは冒頭述べたように憲法との絡みであるが、同時にこの問題が日本の主権に深く関わってくるためである。

外国籍の方が日本で「日本人として」生活するには、帰化申請するという選択肢もある。

在留資格「永住者」や「定住者」を有し、日本で生活する方々もおられるが、日本国籍、そして参政権は帰化することで、はじめて取得できるものである。

法務省のデータで過去5年間の日本国籍取得者数、つまり帰化された外国籍の方の推移を見ると、直近平成28年は1,033人、その他の年も約1,000人前後となっている。

また「特別永住者」※の方々は、直近の数値で338,950人、構成比としては「永住者」(727,111人)に次いで多い在留資格である。その国籍内訳の大半は韓国・朝鮮の方(335,163人)である(以下、中国1,154人、台湾1,025人、アメリカ777人、その他)。

平成22年、民間シンクタンクである国家基本問題研究所(国基研)が、外国人参政権に対する提言を発表した。国基研は提言の中で、参政権に関わる問題が領土問題を含め、日本の主権に直結する問題であることを指摘。

さらに特別永住者の方が帰化する際、帰化の動機書等の復活(平成15年7月より提出免除)義務を求めたとされている。

今後、永住者、定住者を含め、長期にわたり「生活者」として日本に滞在する外国人は、増えてくるだろう。その地域で長く暮らせば暮らすほど、自ら地域づくりに関わりたいと思うようになることは自然なことである。

「他の国ではこのようであるから日本も…」という議論もあるが、国や、地域は歴史的、地理的背景の下に成り立つものである。また、どのような規制でも一度緩めたものを締め直すのは困難だ。

日本の主権(国防)と共生。この両面に関わる外国人選挙権については、「生活者」としての外国人の在り方を含め、やはり慎重に対応しなければならない。

※平成3年11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」に定められた在留資格を有する者。第二次世界大戦中に、日本の占領下で日本国民とされた在日韓国人・朝鮮人・台湾人の人たちが、1952年のサンフランシスコ平和条約締結で朝鮮半島・台湾などが日本の領土でなくなったことにより、日本国籍を離脱。その在日朝鮮人・韓国人・台湾人とその子孫について、日本への定住などを考慮したうえで、永住を許可した。

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