VIVANT=別班は実在するのか? 三島由紀夫への情報訓練も

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TBS系列で放送されているテレビドラマ、日曜劇場『VIVANT(ヴィヴァン)』が面白い。現在7話まで放送されており、ネット配信(TVer、U-NEXT)も好調とのこと。

主演は『半沢直樹』の堺雅人。演出も『半沢直樹』と同じく福澤克雄が務め、今回は福澤克雄がドラマ原作も手がけていることから、作風は『半沢直樹』に近い。制作にあたってはモンゴル国で2ヶ月半に及ぶロケを敢行するなど、スケールは映画並みだ。

この作品の注目すべき点は謎の組織「別班」の存在だ。作品内の設定では、「別班」は自衛隊の非公開諜報機関ということになっている。タイトルのVIVANTは「べっぱん」が外国で訛ったもので、別班が国外で活動し、それが隠然と認知されていることを示している。

自衛隊「別班」の発想はドラマオリジナルではない。過去複数の国内マスメディアやジャーナリストが存在を嗅ぎ取り、取材を重ねているが、防衛省が一度も認めていない組織だ。

ドラマ着想の元になった共同通信の記事

近年有名なのが共同通信の配信記事である。

陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が、冷戦時代から首相や防衛相(防衛庁長官)に知らせず、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきたことが27日、分かった。/陸上幕僚長経験者、防衛省情報本部長経験者ら複数の関係者が共同通信の取材に証言した。

陸自が独断で海外情報活動 首相、防衛相に知らせず 2013年11月27日

平成25年、鈴木貴子衆院議員(自民)は、共同通信の記事に基づいて安倍内閣(当時)に「防衛省として、今後『別班』に関する調査を行う考えはあるか」などの質問趣意書を提出している。これに対して内閣は「現時点においてこれ以上の調査を行うことは考えていない」と回答した。

記事を書いた石井暁氏(共同通信専任編集委員)は『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)を執筆。「陸上自衛隊の秘密情報部隊『別班』は、ロシア、中国、韓国、東欧などにダミーの民間会社をつくり、民間人として送り込んだ『別班員』にヒューミント(人的情報収集活動)を展開させている」と断言する。

戦前から連なる、自衛隊「影の部隊」

わが国には戦前、陸海軍内部に複数の諜報機関が存在した。しかし戦後に設立された自衛隊には諜報機関がない。現在、自衛隊情報本部(平成9年に創設)が存在するものの、情報の収集と分析を主任務としており、諜報(ヒューミント)活動はできないし、海外での活動も制約される。

諜報活動には情報収集・分析の他、情報工作活動が含まれる。そもそも自衛隊は一般の軍隊と異なり、活動上の制約が多い。従って、平時でも国防を担う諜報機関を保有するのは政治的に困難だ。

戦前、日本の諜報部員を育成したのが陸軍中野学校だが、自衛隊には中野学校の後継組織として調査学校(現在の情報学校)が設立された。従って、調査学校出身者による非公式諜報機関があるのではないかと長年噂されていた。

調査学校出身者が「青桐」という同人誌を発行していたことから、「青桐グループ」と呼ばれることもある。青桐グループは昭和45年の「楯の会事件(三島事件)」にも関与した可能性がある。青桐の一人である山本舜勝氏(故人・陸将補)は、三島由紀夫率いる楯の会(学生による民間防衛組織)に対し諜報活動の訓練を施したことを「告白」している。

別班、自衛隊第二部、青桐などと呼ばれる自衛隊の非公開諜報機関がかつて存在したことは、自衛隊出身者などの証言により、ある程度確実視できる。しかし現在も存続しているかは不明だ。情報本部ができた時点で、秘密部隊は必要なくなったかも知れない。

実際には今も存続し、しかも海外での諜報活動に従事していると主張するジャーナリストもいる。ドラマで描かれるような非合法活動をしているとは考えにくいが、実在しても不思議ではない。

引き続き、ドラマの展開に注目したい。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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