今夏の参院選も佳境を迎えている。今回は立憲・国民・共産・社民が32の「1人区」で野党共闘を掲げ候補者を一本化。そのうち18選挙区の候補者がいずれの政党からも公認を受けない「無所属」となっており、与党側からは「政党隠しだ」との批判も聴こえる。
そこで選報日本では、これら18名の候補者が当選した場合、いずれの会派に所属するか予想してみた。予想の根拠としてはWEB上に公開されている公式サイト・候補者SNS・各紙ニュース記事を元に推定。
もっとも、最終的には候補者本人が当選後に選択権をもっており、いずれの会派にも所属しない選択肢もある。
「無所属」野党統一候補一覧と所属会派予想
以上、18選挙区のうち立憲民主党が5名、国民民主党が7名、立憲・国民のいずれか予測困難なのが2名、日本共産党が3名、沖縄の風(沖縄社会大衆党)が1名という予想になった。
そもそも「会派」とは?
議員の所属「政党」と「会派」。この両者について普段政治に縁遠い一般国民にはわかりづらいかも知れないので簡単に解説する。
政党とは、政治目的を共有する結社・集団のことで、党員によって構成される。原則として、党員には誰でもなることができ、党員の中から党首が選ばれる。
会派とは、議会内における議員のまとまりであり、議員のみによって構成される。多くの場合は所属政党ごとに形成されるが、複数の政党が合同で会派を組むことも可能。また、同様に無所属議員が合同で一会派を組むこともある。
わが国における議会活動は、会派単位で行われることが多い。議員は当選後所属会派を届け出、その人数によって委員会などの割り当て人数が決定される。その他、様々な便益が会派ごとに提供されることもあり、いずれの会派に所属するのかは議員にとって極めて重要だ。
現在の参議院会派
会派の名称や構成は選挙のたびに変更する場合があるが、令和元年7月14日現在の参院会派構成は以下の通り。(参議院公式サイト)
ちなみに参議院は半数ごと3年おきの改選(任期6年)となる。改選前の参院議員は237名、そのうち今回で任期満了(改選)が116名(欠員5名)。法改正で定員が増え、今回は124議席を争う。
「野党共闘」の意義と背景
安倍首相もテレビの党首討論などで度々指摘している通り、立憲・国民の旧民進党と日本共産党は国家観や憲法観が全く異なる。政治思想だけではなく、各党の支持基盤(労働組合など)も対立・競合関係にあり、相容れない。にも関わらず、共闘するのはなぜか。
よく言われるのが、「政権批判票」の集中である。
選挙区(主に都道府県単位)の当選枠が1名として、自民党・旧民進党(立憲または国民)・共産党が立候補した場合、政権への批判票が旧民進党と共産党に分散する。しかしこの両者の獲得票を単純に合算した場合、自民党の獲得票を上回る場合がある。
つまり、野党共闘によって現在の政権運営に否定的な「民意」を選挙結果に反映できる、というわけだ。
しかし実際には、より複雑な打算が背景にある。
そもそも日本共産党は、ほとんど全ての選挙区に候補者を擁立することを長年の方針としてきた。選挙区での当選は難しいが、それらの選挙活動が全国比例の集票を押し上げる効果を持つためだ。
ところが党勢の衰退に伴い、そのような戦線維持が困難になりつつある。そこで、共産党は他の左派野党に対し共闘を呼びかけるようになった。
一方、旧民進党側としては、野党共闘によって共産党の固定票を得られることは魅力的だ。旧民進党と共産党の関係は、自民党と公明党(創価学会)の選挙協力関係に近い。共産党や公明党の支持者は他党の支持者に比べ、他党に「浮気」する確率が低いのである。
もっとも、このような「野党共闘」は「与党共闘」に比べ、旧民進党系の立憲・国民両党にとってリスクが大きい。共産党は他党と違って過去の「暴力革命路線」のイメージもあり、国民の多くに拒否感が強い。「共産党と一緒に見られたくない」というのが旧民進党系候補者の本音だ。
無所属は「共産党隠し」?
今回の参院選では共産党系の候補者が党の公認・推薦を受けず、無所属で立候補したことが波紋を呼び、当選後に誰がどの党(会派)に所属するのか疑心暗鬼を呼んでいる。「安倍政権には反対だが、共産党には入れたくない」という有権者の方が多いためだ。
前述した通り、18名の野党統一無所属候補のうち、共産党系と思われるのは3名だった。その他、1人区の野党共闘候補で共産党の公認を得ているのは福井県選挙区の1名のみだ。
現在、共産党は1人区に議席を有しておらず、全国比例は5名改選に対し26名を擁立している。
1人区において自力で当選者を出せる可能性の低い共産党が野党共闘によって当選者を出すことができれば、共産党にとっては「儲けもの」だ。他の1人区でも野党統一候補が勝てば、共産党は国会運営において一定の影響力を保持できるようになるだろう。
野党共闘は、非共産野党の自殺行為
投票率の低下や支持基盤の弱体化によって、自民党は選挙における公明党(創価学会)依存を深めてきた。安倍政権が最も「忖度」しているのが、公明党の意向である。安倍首相の悲願とされる憲法改正において9条改廃ではなく「自衛隊追記」が出てきたのも、公明党の許容範囲を考えてのことだった。
現在、旧民進党と共産党の共闘関係は自公ほど強固ではない。しかし共産党の狙い通りに野党共闘が進展していけば、旧民進党系の立憲・国民両党は共産党への依存を深め、国会運営においても共産党の意向を無視できなくなる。
このような野党共闘は国政選挙だけではなく、首長(知事・市長など)選挙でも進んでいる。野党共闘は国政においても地方政治においても、確実に共産党の影響力を強めていくだろう。それが露骨に表れているのが、共産党が主導する「オール沖縄」に支えられる現・沖縄県政だ。
共産党の影響力強化を嫌うのは無党派層だけではない。立憲民主党を支える自治労(地方公務員労組)も、国民民主党を支える連合(最大の労組ナショナルセンター)も、共産党系の労組と長年闘争を繰り広げてきた。野党共闘によってこれらの支持基盤が熱意を失い、最悪の場合離反する可能性すらある。
一時的に野党共闘によって与党を追い詰めたとしても、長期的には立憲・国民両党の党勢衰退を招き、ますます「自民一強」を強める結果になるだろう。まさに野党共闘は、非共産野党の自殺行為だ。
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本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。