議連の減税提言も「どうせガス抜き」自公政権はなぜ減税できないのか

政治
内閣広報室
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令和5年10月4日、自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が「時限的な5%への消費減税」を含む提言をまとめた、と大きく報じられた。自民の党内議連による「減税提言」には既視感があり、SNSでは「どうせ選挙前のガス抜きだ」との反発が広がっている。

去る令和2年3月30日、自民党内の2つの議連「日本の未来を考える勉強会」と「日本の尊厳と国益を護る会」がコロナ経済対策として消費税5%への減税を含む緊急声明を発表していた。今回の積極財政議連とは、提言内容も所属議員もかなり重なっているようだ。

前回の減税「緊急声明」から半年後に安倍首相が退陣。青山繁晴参議院議員は「『減税勢力』は自民党の国会議員100人以上」と啖呵を切っていたが、令和3年10月に実施された衆院選での自民党政権公約に「減税」は全く盛り込まれなかった

「減税提言」の中身とは?

積極財政議連の総会に出席した青山参院議員が「提言」の素案を自身のブログに公開している。それによると、提案の内容は以下のようになりそうだ。

  1. 消費税や所得税の減税措置を行うこと。
  2. 事業者に対し、柔軟な資金繰り・経営支援を継続すると共に、コロナ融資返済の猶予・減免策を講じること。
  3. 地方創生臨時交付金」の引き続きの交付と、「地方交付税交付金」の安定的増額を実現すること。
  4. 食料安全保障関連予算を別枠で確保し、農林畜産水産関連予算全体を大幅に増額すること。
  5. サプライチェーンの強靱化を測るため、国内における生産拠点の設備投資を支援すること。
  6. 子育て支援金の継続給付や児童手当の対象拡大、奨学金の返済免除や減免策など、子育て世代の負担を減らす抜本的な支援を行うこと。
  7. 国土強靭化加速化5ヵ年計画の増額を18兆円に拡大し、インフラ老朽化対策を加速すること。

青山参院議員は、1の減税措置に「社会保険料の減免」を加えることが決まった、としている。提言は近く政府と自民党政調に提出される見込みだ。

自民党が減税できない3つの理由

ウクライナ戦争勃発以降、国際的に原油価格が上がり、それに連動して日本国内でも物価が高騰している。物価が上がれば、消費税負担額も自動的に上がる。国民は物価だけが上がり賃金は上がらないスタグフレーションに苦しんでいるが、岸田政権が消費税減税を検討した形跡はない。

そもそも岸田首相は積極財政とは真逆の「緊縮財政」派とみられている。では、積極財政派の首相であれば減税が可能なのかといえば、そうでもない。安倍元首相は自他共に認める積極財政派であり、アベノミクスと称する経済政策を推進したが、一方で2度も消費増税を強行した。

なぜ自民党政権は減税ができないのか。それには、自民党を支える権力構造で説明できる。自民党の権力を支えているのは「地方」「業界団体」「官僚」の3つだ。

まず「地方」だが、これは全国津々浦々の地方議員と、中央からの交付金に支えられている地方自治体だ。自民党系の地方議員(選挙では無所属でも、自民系の会派に所属する)は、選挙区全体ではなく特定地域の代表者として議員になる(地域代表制)。

彼らは自民党政権を通じて、国家財政を自治体へ再分配させ、さらには自身の基盤となる特定地域(インフラ投資などで)へ分配させることで、選挙基盤を盤石化させている。

次に、「業界団体」は大企業の連合体だが、業界の既得権を維持し、業界への補助金を得るために自民党へロビー活動し、自民党が業界団体の要望に応えることの見返りとして、個別の国会議員(各族議員)を金銭的に支援する。選挙に際してはボランティアスタッフを供給し、集票も担う。

最後に「官僚」だが、自民党は霞ヶ関の官僚のサポートなしに政権を維持することができない。政権担当能力とは法案作成力と予算編成力のことだが、自民党にはそのいずれもなく、全面的に官僚に頼っている。その官僚は、財務省幹部を頂点とする強固なピラミッド社会だ。そして最も減税に反対しているのが財務省だ。

減税するには政権交代しかない

以上のように、いくら自民党内の非主流派が100名規模で「減税提言」を行ったところで、自民党政権が減税に踏み切る可能性は殆どない。構造的に、減税は自民党の権力を強化するどころか、弱体化させる効果しかないからだ。

今回の「減税提言」も、よく読めば「2」以降は殆どが「業界」「地方」へのバラマキになっている。自民党は低所得者を含む国民全体から集めた税金を、自分たちの支持基盤(既得権層)に分配することで権力維持を図ってきた。

その結果、「給料が上がらない30年」が現出し、日本の少子化は進み、GDPは減り、国民は貧しくなった。すでに日本は経済大国の面影もなく、かつての発展途上国以下に衰退している。

このような状況を打破するには、自民党を支える「地方」「業界団体」「官僚」に代わる支持基盤を持った政治勢力によって政権交代するしかない。具体的には「都市部住民」「非既得権層」「非官僚シンクタンク」に支えられた近代政党だ。

来たる衆院選、「増税か減税か」が国民に問われる一大決戦になることを熱望する。そのためにも、野党にはしっかりと減税の旗を掲げてもらいたい。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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