海上保安庁とは? 国土の12倍を1万4千人で守る海の警察

安全保障
能登半島に向かう海上保安庁の船艇(海上保安庁公式Xより)
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令和6年1月2日、前日の能登半島地震に関連して不幸な事故が起きました。羽田空港から能登半島へ救援物資を搭載して離陸しようとしていた海上保安庁の航空機が、着陸した日本航空旅客機と衝突したのです。

奇跡的に日本航空機の乗員乗客は全員無事でしたが、海上保安官5名が殉職、1名が重傷を負いました。

SNSには、「民間空港を軍民共用するからこんな事故が起こった」などの批判が書き込まれ、そのような投稿に対する反発も広がりました。

わが国における空港の軍民共用とは、自衛隊や米軍が空港を民間航空会社と共同使用することですが、こんかい悲劇的な事故に遭難した海上保安庁は軍事組織ではありません。

管轄は国土交通省「海の警察」

げんざい自衛隊三軍を管轄しているのは防衛省ですが、海上保安庁は国土交通省の外局です。

まだ日本が占領され、GHQの指令を受けていた昭和23(西暦1948)年に施行された海上保安庁法によって、「海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため」(海上保安庁法第1条)に設立されました。

この背景には、日本の敗戦によって帝国陸海軍が解散させられたことにより日本周辺海域が無秩序化していたことがあります。不法入国、密貿易、海賊行為、海上賭博などの犯罪が横行していました。敗戦までは事実上、帝国海軍が海上の治安を維持していたのです。

海上保安庁法第31条に「海上保安官及び海上保安官補は、海上における犯罪について(中略)司法警察職員として職務を行う」とあるように、いわば「海の警察」です。武器の保持と使用も警察官職務執行法を準用することになっています。

同法25条には念押しで「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と書かれています。そのため、海上保安庁は原則として戦時国際法の適用も受けません。

ちなみに現在の海上保安庁の英語名は Japan Coast Guard です。アメリカの沿岸警備隊( United States Coast Guard )に倣ったものであることがわかります。発足に際しても、アメリカ沿岸警備隊の助言があったようです。

約1万4千人の定員、2,759億円の予算

海上保安庁の定員は約1万4千人です。中共軍民船舶の侵入が頻発する近年、海上保安庁の任務が重視され、予算と定員は増加傾向にありますが、実際には微増です。ちなみに令和6年度予算として、海上保安庁は432名の定員増を要求しました。人件費予算としては対前年度比1.04倍に過ぎません。

海上保安庁が保有する船艇は約450隻、航空機は約90機です。令和6年度分に海上保安庁が要求した予算は2,759億円で、人件費を除く物件費は対前年度比1.21倍でした。そのうち196.4億円が「尖閣領海警備能力」を強化するため、とされています。

海上保安庁が管轄する領海・接続水域・排他的経済水域(EEZ)は、面積としては日本領土の約12倍です。この面積を1万4千人の職員と2,759億円の予算で守るのは大変なことであることがわかります。一刻も早い予算増と定員増が望まれます。

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