「地方創生」が叫ばれて久しい。現役世代が首都圏などの大都市部に集中し、地方では高齢化・過疎化が進んでいる。この問題の本質はどこにあるのだろうか。
ある大学教授が地方紙に寄稿した文章によると、地方には「若い人が就きたい仕事がない」のだという。「就きたい」というよりも、仕事そのものの絶対数が圧倒的に少ないのが実態だ。
若者の多くは大学進学のために故郷を離れる。そのような若者が卒業後に故郷へ戻って就職できれば、もっと地方を活性化させることになる。そのような流れを作ることが理想的とされるが、成功事例は少ない。
日本には明治以来、中央集権の考えが根強く残っている。財政的にも、地方の自治体は中央政府からの分配金への依存度が大きい。そのため、県知事の多くが中央官庁の役人出身である。その方が中央とのパイプになるからだ。
このような中央集権的なあり方も、地方の衰退をもたらしてきた原因と言える。中央に依存するあまり、地方が主体的に考え、戦略的に施策を実行することが無くなった。その結果、地方に産業が育たず、就職口が減って人口流出が起こっているわけだ。
ところが「地方創生」政策の多くは中央主導であり、地方の側も中央へ注文をつけることが地方創生だと考えているフシがある。それ自体は致し方ない面もあるのだが、問題は注文の中身だろう。
地方が中央に注文する場合、多くは予算だった。つまりお金が欲しいというわけだが、中央から地方に予算が割り当てられる際、その用途まで決められることが殆どだ。ここでも、地方の側には思考停止が起こる。
しかし最近では新しい形の注文がある。それは規制緩和である。日本は産業に対する行政の権限が異常に強い国だ。いわゆる許認可行政と言われるものだが、極端に言えば、行政が認めるモノしか作れないし、行政が認めるサービスしか提供できない。
法律や政令によって規制されているものを特別に緩和できる制度が、近年始まった「国家戦略特区」である。この制度により、地方は主体的に考え行動する余地が増えたと言える。
「国家戦略特区」はいわば「特例」の制度化だが、今後は中央の権限そのものを地方自治体に移管することも必要だろう。権限移管を通じて地方自治体が主体性を回復し、新たな産業を創出することで、若者の就業人口も増え、過疎化を食い止めることができる。