ネパール観光年「ビジット・ネパール・イヤー」に意気込む在日ネパール人

今年、令和2年(2020年)が、ネパールの観光年「ビジット・ネパール・イヤー(以下、「VNY」)」であることは前回(令和元年(2019年)12月9日付)寄稿した記事で述べた。

ここでVNYについて再掲しておきたい。VNYは文字通り、海外からネパールへの旅行者誘致を目的としたネパールの国を挙げたインバウンドキャンペーンである。

visitnepal2020.com(英語)

VNYの公式ホームページに、ネパールの首相であるK.P.シャルマ・オリ氏のコメントが掲載されている。首相は「ビジット・ネパール・イヤーの広報を強化し、ネパールへのインバウンドを直近の約2倍となる200万人にしたい」と意気込んでいる。

ネパールの、文化・観光・民間航空省のデータによると、2014年~2018年、日本から同国への訪問者数は以下の通りである。地理的な近さもあるのだろうが、中国(153,633人、13.1%)、インド(194,323人、16.57%)(いずれも2018年の数字)等に比べると、割合は決して高いとは言えない。

尚、2015年に人数が落ち込んでいるのは、同年4月に発生した地震の影響であると思われる。

参考までに日本から海外への訪問者数上位、下位其々5つの国・地域を列挙してみる。訪問先としての潜在力は秘めていると考える。ネパールにとって、日本は潜在的な市場であると言えるだろう。

ネパール協会「何としても観光年イベントを成功させたい」

VNYに付随して、海外在住ネパール人協会九州支部会長であるウプレティ・デブラジ氏は九州支部主催のイベントを福岡市南区で開催することを構想している。敢えて南区で開催する理由は、南区には市内7区中、最も多くネパールの方々が暮らしているからである。

イベントの内容は多彩だ。ネパール歌舞のステージ、ネパール料理、ネパール雑貨の出店、観光案内などである。また近隣中高吹奏楽部との共演も視野に入れている。

イベント開催の主たる目的はVNYに連動しているということもあり、我々の参加を契機として、ネパールに足を運んでもらう、というものだ。しかし、只それだけではなく、イベントを通して日本人がネパールに対する理解を深め、交流を更に深化させたいとの思いもある。

会長によると、在日本ネパール大使、またネパールの文化・観光・民間航空担当大臣の来日・来福も想定されていると言う。VNYに対する同国の力の入れ様が分かると同時に、会長が属する組織のネットワークの広さ、存在の重要度を垣間見ることができる。

デブラジ会長をはじめネパール側のメンバーは、何としてもVNYを成功させたいと思っている。

しかも重要なことは、彼らだけではなく、我々と協力して交流を通じて、成功に導きたいと考えておられることだ。上記の吹奏楽部との共演希望もその一環である。

外国人イベントの失敗を繰り返さないために

これまでにも福岡市に於いて、ネパールに関するイベントはいくつか行われてきた。しかし、そのほとんどはネパールの人たちだけで実施されたものだった。

デブラジ会長が、我々とタッグを組んでイベントを実施することにこだわるのには理由がある。それは、我々と提携することでイベントの信頼性が高まる、との思いがあるからだ。

この考えは、過去に行われた在日外国人によるイベントの「苦い思い出」を踏まえたものだという。

会長によると以前、ネパールに関するイベントで料理を出店した際、食中毒を出してしまったことがあるそうだ。今回のイベントでもネパールの料理を出す計画にしていることもあり、この点、会長が特に気を遣っていることも頷ける。

勿論、我々と共同で実施することが食中毒発生の有無に影響することはないだろう。しかし、過去にそのような事例が発生している以上、申請を受ける行政側としては当然、慎重にならざるを得ない。まして、ネパールの方が単独で申請するとなれば必然、その度合いが増すことは想像に難くない。

我々と共に実施することで、想定し得る不安を極力、未然に防いでおきたいという会長の万全を期す態度は、ここに起因する。同時にイベントを失敗させる訳にはいかないという強い思いの表れでもあるのだ。

「日本人にとって違和感があれば指摘して欲しい」

例えば屋外でイベントを行う場合、参加者は自転車で来場することが予想される。その際の自転車整理然り。また、飲食の出店をすれば当然ごみが発生するが、その分別。特にごみについては日頃から、外国籍の方の居住に関わる「困りごと」として、上位に挙げられることが多い。
 
勿論、日本在住10数年のデブラジ会長が、そういったルールについて知らない訳はない。しかし、それでも念には念を入れて、徹底的にルールを厳守することで、イベント、組織の信頼性を高めようとする姿勢には感服するしかない。
 
会長のこのような姿勢は見方を変えると、我々に対する信用の裏返しでもある。この信用を裏切ってはいけないと、良い意味での緊張が生まれてくる。

会長は事有る毎に「自分たちでは正しいと思っていても、日本人から見ると違和感のある行動が存在すると思っている。そのような点を日本人の立場から指摘してほしい」と私に話すのだ。この謙虚さには大いに学ぶべきところがある。

交流会でわかった「想いは伝播する」

今回、デブラジ会長はじめネパールの方々と協働する中で、多くの方々から知恵やアイデアを頂いている。私が社会課題解決に取り組む大切なメンバー、行政、自治会、公民館など地域の関係者の方々等々…。

その過程で感じたことは「想いは伝播する」ということだ。

食事交流会での出会いと言う偶然から生まれたデブラジ会長たちとの繋がり。そこから、 会長たちに対して、地域の餅つきへお誘い頂く等、周囲からお声掛け頂ける状況を作ることができるようにもなった。

このようにイベントを通じて、地域の方々が在日外国人(今回はネパール人たち)と更に関わりを持つようになったことは、私の本望である。

未だ道半ばである。しかし、一歩一歩、地に足を付けた活動を積み重ねていくことで、私の身の周り、地域に更なる交流の根を張っていく。

特にネパールの人々は伝統的に「親日」の方が多い。今のうちから、民間・地域レベルで彼らとの関係性を強くしておくことが、ゆくゆくは日本の未来にとっても重要であると信じて活動を続けていく。

安部有樹(あべ・ゆうき)昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。学習塾、技能実習生受入団体を経て、現在は民間の人材育成会社に勤務。これまでの経験を活かし、「在日外国人との共生」や「若い世代の教育」について提言を続けている。

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