働く場所としての日本は、外国人材にとって果たして魅力的か?

JINTO(日本政府観光局)の統計によると、直近(平成30年12月)の月間「訪日外客数」(日本に居住する外国人を除いた訪日外国人旅行者数)は約263万2千人となり、12月としては過去最高を記録した。

また、2018年の年間を通じても、3,119万2千人と統計を開始した1964年以来、最高の数字になったという。

訪日外客数の内訳を見ると、東アジアの国と地域が全体の約7割を占めており、東南アジアとインド、ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアが、それぞれ約1割という状況である。

数字の上からは、少なくともアジアの人々にとっては日本が旅行先として魅力的な国であることが伺える。

旅行を通じて日本のさまざまな文化に触れ、日本を好きになるということは大いにあり得ることだ。私たちも、そのように一人でも多くの「日本ファン」が海外に増えることは喜ぶべきであろう。

日本は働く場所として魅力的か?

しかし腰を据えて働く、そこで生活していく、となると話は別である。ここで根本的な問いであるが、外国人にとって日本は「働く場所として」魅力的なのだろうか?

平成27年度、福岡市が滞在期間5年未満の「外国籍住民」を対象にアンケートを行った(対象回答385件、主な国籍は中国、韓国、ベトナム、ネパール)。

その結果によると、約9割5分の方々が福岡市を「住みやすい」と回答している。一方で、生活環境で充実させてほしいものとして「就業機会」が2番目に多かった(1位「物価」、3位「住宅事情」)。
 
日本固有の「忖度」、未だ根強く残る「男女間格差」、長時間労働による「過労死」…。「悪いとこ取り」をするわけではないが、職種を問わず、実際の現場では多かれ少なかれ改善すべき点があるのではないか。

政府は、外国人材受け入れ体制の整備を急ピッチで進めている。しかし、実際に彼らが働く企業、そしてそこで働く日本人従業員が前述のような状態を甘受したままで、果たして良いのであろうか。

そもそも、政府が想定するだけの人材が日本に働きに来るという保証はどこにもない。国の内外を問わず、労働力は水の高きから低きに流れるが如く、好調な経済市場へと向かう。

拡大する地域間格差

では現在、日本経済はどのような状況であるか。

一時的な落ち込みを取り戻し、景気の回復基調を維持している。景況感は高い水準にあるものの、製造業に於いて2四半期連続の悪化が見られるなど、改善傾向は一段落してしまっている(2018年9月 みずほ銀行産業調査部「主要産業の需給動向と短期見通し」)。

また平成30年度の「年次経済財政報告(白書)」では、景気回復は「戦後最長が視野に入り」、AIやIoTなどの「第4次産業革命」がもたらす技術革新により、私たちの生活や経済社会が「画期的に変わる」時代に入っていると記されている。

また、地方分権という政府の思惑とは裏腹に、人口の中央一極集中が加速している。

総務省発表による「2018年人口移動報告」によると、転入超過は東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)と愛知、滋賀、大阪、福岡の4府県であり、他の39道府県は転出超過であったという。首都圏に関しては、23年連続の超過(日本人に限る)、しかも超過数は過去10年で最も多かった。

地域間格差は埋まるどころか、拡大の一途を辿っていると言えよう。

外国人材の受け入れ拡大をめざす日本政府

このような状況下、日本は在留資格「特定技能」により、外国人を向こう5年間で最大で約34万人受け入れようとしている。この数字は所沢市(埼玉県)、大津市(滋賀県)などの人口に匹敵する。

受け入れる業種は、人手不足が顕著な「14業種」(農業や介護など)に限定されてはいる。また、政府は「地方及び中小・小規模事業者における人手不足の状況を把握し、地域における深刻な人手不足に適切に対応する(※)」としており、一定の配慮を示してはいる。

※『特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針』(平成30年12月25日 閣議決定)より

しかし前述のような現状で、果たして「適材適所」は可能なのであろうか。そもそも、我々は彼らと同じ、またはそれ以上の「覚悟」を持って受け入れる準備が、物心両面に於いてできているだろうか。

母国から出て働くには並大抵でない覚悟が必要だ。場合によっては、本国に家族を残し出国することもあるだろう。

「おカネを稼ぐ」という明確な目的で日本にやってくる以上、それに代わる余程の動機付けや理由がない限り、いま置かれた環境よりも賃金が高い職場(国)で働きたいという思いを抱くことは至極当然である。

問われる日本人自身の「働き方」

例えば、いまあなたが働いている職場を、そのまま外国人材にとっての「日本」とみなすといかがだろうか。待遇など、自信をもって薦めることができるだろうか。

そもそも、すべての好条件が充たされた企業ばかりではない。むしろ、そうでない日本企業の方が多いのではないか。

私は、働くことは即ち生きることにも繋がると考える。以上のような視点で今般の「受け入れ」を考えた場合、それは写し鑑として、われわれの働き方を見直す契機ともなるはずだ。

安部有樹(あべ・ゆうき)/昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。学習塾、技能実習生受入団体を経て、現在は民間の人材育成会社に勤務。これまでの経験を活かし、「在日外国人との共生」や「若い世代の教育」について提言を続けている。

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