平成30年12月8日、第197会国会(臨時会)で出入国管理及び難民認定法(入管法)及び法務省設置法の一部を改正する法律が成立した。
これにより、在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」という新たな在留資格が創設され、受け入れのプロセス、外国人に対する支援など7つの規定に関して整備がなされることになった。
また、入国管理局が法務省の外局として「出入国在留管理庁」に格上げされ、文字どおり「出入国及び在留の公正な管理を図ること」とになった。同庁新設により、470人の職員増、新制度関連で181億円が2019年度予算案として計上されている。
日本は外国人労働者を受け入れると表明
同法案に反対する野党や一部の識者からは「拙速な議論だ」など、少なからず批判の声も上がっている。
もちろん、今後の日本社会の在り方にも大きく影響すると言っても過言ではない今回の法改正である。国会の場だけではなく、国民の間にも賛否両論があるのは当然だ。
しかし私は、今回の法案成立は大きな意味があると考える。その理由は、人手不足であるという現実に対処するためであるにせよ、国として外国人労働者を受け入れるという明確な意思表示がなされたからだ。
外国人労働者は奴隷ではない
新たな在留資格により人材の確保が図られる産業分野は、これまで技能実習制度で対応されてきた分野である。
私は以前、技能実習生の管理団体に所属していた。当時から、技能実習生について語られる時、必ずと言っていいほど「安価な労働力」「長時間労働による酷使」など、まるで実習生は奴隷でもあるかのような枕詞が付いて回っていた。
技能実習制度でもそうであったが、メディア等では、本年4月から受け入れる外国人労働者が従事する業務は「単純労働(作業)」と表現されることがある。果たして彼・彼女たちが従事しようとする業務は、本当に「単純」なのだろうか。
技能実習制度を弁護するわけではないが「技能実習制度イコール単純作業」という表現は必ずしも適切ではない。
日本人に遜色ない仕事内容
実際、私がこれまで目にしてきた技能実習生が従事する職種の中には、客観的に見て「単純作業」とは言えないものもあった。家具の製作や、機械設備の操作などがそれであり、実習生の多くは、日本人社員と何ら遜色のない働き振りであった。
現在、主に人手不足に喘いでいるのは中小企業である。そして、そのような企業の多くは人手不足と同時に、後継者不在という問題も抱えている場合が多い。
経済産業省の推計によると、後継者不在などのため中小企業の廃業が急増することで、2025年頃までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとされている。
中小企業は日本経済に於いて欠くことのできない存在である。そのような企業で、ご自身の仕事にプライドを持って働く多くの従業員の方々に対して、「単純作業」と称するのは失礼な話ではないだろうか。
「外国人労働者受け入れ」健全化へ
技能実習制度は、実習生が日本の優れた技術を習得し、以って母国の発展に寄与するという「建前」と、主に中小企業の人手不足解消という「本音」の産物であった。そのような状況で外国人が労働に従事する現行の制度より、今回創設された「特定技能」の方がよほど健全である。
今般の法改正により少なくとも、外国人労働者受け入れについて実習制度が抱えていた「建前」と「本音」が解消に向かうことは、健全な外国人労働者の受け入れの第一歩だ。