平成29年9月3日、北朝鮮が水爆実験を成功させた。この事実は、わが国内にも大きな衝撃を持って受け止められている。しかしこれ自体は驚くべきことではない。北朝鮮はずっと核実験を続けてきたし、ミサイル開発を進めてきた。
北朝鮮の核実験を受けて各国は(わが国も含め)、口を極めて北朝鮮を非難している。しかしこれも、これまでと違いはない。言葉でしか表さない以上、そうエスカレーションできるわけではない。
制裁強化として目新しいのは、日米による「北朝鮮と取引のある」中国企業への経済制裁だろう。これには中国が強く反発している。この中国の反応からして、中国は北朝鮮を制裁する気がなさそうである。
北朝鮮の核ミサイルは中国にとっても脅威だ。その脅威を、中国国内の権力闘争に利用している勢力があるため、中国政府は北朝鮮を懲らしめることができない。北朝鮮は中国国内の権力闘争に乗じて生き残りを図っている。
わが国内の左派メディアには「北朝鮮の核武装を容認して、お互い敵視するのを止めよう」という主張がある。これは、わが国が北朝鮮の属国になるべきだ、と言っているに等しい。北朝鮮人民のように虐殺されたいのだろうか。
NPO法人夢・大アジア理事長で東アジア問題専門家の石井英俊氏は、北朝鮮の核実験を受けて次のようにfacebookに投稿した。以下、一部引用する。
「ふと恐ろしいシナリオが頭をよぎりました。戦争よりももっと恐ろしい事態が起きるのではと。すなわち、アメリカが北朝鮮と“平和的に”話し合いで解決してしまうというシナリオです。アメリカと北朝鮮と中国で話し合いをしてしまう。日本と韓国が見捨てられるというシナリオ。つまり、アメリカは北朝鮮の核兵器保有を認める。北朝鮮にはICBMは手放させる。在韓米軍は撤退する。という“平和的な”話し合い決着です。」
(中略)
「政府が言えないとしたら、自民党の党側の立場のしかるべき立場の人がアメリカに対してはっきり言っておく必要があると思うのは、我が国にとって北朝鮮の核保有を容認することは絶対にあり得ない(という)ことです。アメリカがもしそれを認めれば、我が国も核保有を検討する、というぐらいの発言を誰かすべきではないでしょうか。」
石井氏が予想する「最悪のシナリオ」は決して非現実的な未来ではない。実際、中国の核武装に際して米国は空爆をも検討した過去があり、最終的には容認して現在に至っている。そしてわが国は中国の核ミサイルの射程圏内である。
中国が核武装国になったのは半世紀前の1967年(昭和42年)のことで、それから50回以上も核実験を行っている。中国から米国本土に届く核弾頭付き大陸間弾道弾(ICBM)が配備されたのは1980年頃で、その時点で日本の核の傘は失われたと言って良い。
しかし40年近く経っても、日本において核武装が政策論議の俎上に上がることはなかった。一体なぜなのか?この根本問題を見つめ直さない限り、わが国は北朝鮮に戦わずして屈服することになるだろう。
なお、筆者がtwitterのアンケート機能で今後の対応策を問うたところ、下記のような結果だった。
Q. 北朝鮮が核武装を達成しましたが、日本はどうすべきだと思いますか?
・日本も核武装する 84%
・米国の核の傘に期待する 11%
・北朝鮮に降伏する 5%
投票総数は57票しかないので何の参考にもならないが、実際の世論は逆転しているであろうことは想像に難くない。
理性的に考えれば、愛する家族や大切な友人、かけがえのない郷土を守るために核武装を真剣に論議し、実行に移すことが「大人の態度」というものだが、わが国にはそのような大人が余りにも少ない。
その点、イギリスやフランス、インド、パキスタン、イスラエル(いずれも核武装国)には責任ある大人が大勢いるのだろう。われわれは早く大人にならねばならない。
本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。