中国人加害者「子供は貰う!」被害者が語る精子提供詐欺事件

昨年『選報日本』でも報じた中国人男性による精子提供詐欺事件は、被害者のA子さんが訴訟の意向を示していることが報道されている(『日本経済新聞』2021年1月14日朝刊「広がる精子のネット取引 感染症や性被害リスク潜む」)。精子提供詐欺を理由とした訴訟は過去に例がない。

筆者はA子さんとその家族に対して取材を行った。A子さんの家族がこの事件で取材に応じるのは初めて。

これは精子提供詐欺事件としてだけでも悪質な事案である。さらに、B氏の発言から明らかになったのは、平成21年(西暦2009年)の『入管法』改正時から指摘されていた「恐れられた事態」が遂に実現していることを示すものでもあった。

「こんなに酷いことが」一家を襲った“3つの詐称”

「知性的な一家」と言うのが、取材をした第一印象であった。精子提供詐欺の被害のショックにもかかわらず、取材内容に対してきちんと答えてくれていた。

A子さんは県内有数の進学校の出身。毎年東大に何十人も合格している高校であったが、音楽の道に進みたくて音楽大学に進学したと言う。実家は裕福では無かったが、モデルの仕事をするなどしながら大学に通った。現在、A子さんは都内で企業を経営している。

A子さんの夫も経営者である。彼は東京大学卒でその後はアメリカの著名な大手金融機関に勤務していた。

まさに、知性と努力とを兼ね備えている夫婦に見える。「思い出すのが辛い」と言いながらも加害者とのLineの内容も見せてくれたA子さんは、一見すると精子提供詐欺事件のショックから立ち直っていると勘違いしてしまいかねない。

だが、私が「A子さんは立ち直っているように感じますか?」とA子さんの子供(第一子)のあかりさん(仮名)に聞くと、あかりさんは「立ち直っているとは思わない」と否定してこう言った。

「お母さんは数年前と比べたら、元気がなくなっている。」

自分の産んだ子供の生物学上の父親が「三重の詐称」をしていたのである。A子さんがショックを受けたのは当然だが、あかりさんもかなりショックを受けている様子であった。

「こんなに酷いことをする人が身近にいるとは思わなかった。」

そう語るあかりさんは、加害者のB氏の行為で母親が苦しんでいることをとても哀しんでいた。

「三重の詐称」とは「国籍詐称」「学歴詐称」そして「婚歴詐称」の3つである。この内「婚歴詐称」についてはB氏も各種メディアの取材に対して認めている。

加害者側の言い分を垂れ流しにする『朝日新聞』

昨年の『選報日本』の記事でも事実関係に触れたが、B氏は第二子を望むA子さんに対して、自分が中国人であることを隠し、「未婚」で「京大卒」であると偽って精子提供を行った。A子さんがその事実に気づいたのは妊娠後期であり、結局、B氏の詐称を出産直前に知った状態で第二子を産むということになってしまった。

実際にはB氏は既婚者であり、日本の東海地方にある国立大学を卒業後、国内の大手生命保険会社に勤務。在留資格は「日本人の配偶者等」であり、B氏の妻は日本人だ。

公平を期すために言うと、B氏は国籍詐称については「国籍は聞かれていない」としている。もっとも、A子さんによると「B氏は静岡県出身だと複数回説明し、静岡県の運動会の歌の話題もした」と言う。

だが、婚歴詐称についてはB氏自身が他のメディアのインタビューでも明確に認めている(『週刊女性』2020年6月2日号、等)。

最後までB氏が認めなかったのが「学歴詐称」だ。『朝日新聞』の取材に対しては、B氏は次のように答えている(『朝日新聞』2020年8月24日夕刊)。

「女性にどこの大学なのかと聞かれ、『国立大』『京都方面の大学』と答えた。」

事件について報道する『朝日新聞』記事

まるで「市役所の方から来ました」と言う詐欺師のような言い訳であるが、この『朝日新聞』記事よりも以前に『選報日本』は「B氏が学歴詐称を認めていた」とする警察官の証言について報道している。

なお『朝日新聞』は昨年の『選報日本』の報道よりも後に報じているにもかかわらず、この件に限らずB氏自身が認めている婚歴詐称の事実を始め、加害者側に都合の悪い事実の一部に触れていない。

これはこの記事だけの例ではない。朝日新聞出版の『AERA』もこの問題についてA子さんに取材をしたが、掲載記事の文面が事前に送られてきたところ、A子さんが言ってもいない発言が載るなどしていたため、A子さんは朝日新聞出版に対して内容証明郵便で抗議を行った。結局当該記事は掲載されなかったが、『朝日新聞』の報道が「加害者寄り」であることを示すものとなった。

「子供を俺に渡すのは諦めて無いからな?」

今回の事件の悪質性は加害者の詐称だけに留まらない。そもそも、精子提供者であるB氏は不可解な発言をしている。A子さんに対して「子供を渡すこと」を要求しているのだ。

既婚者男性が妻以外の女性との間の子供の親権を要求するのは不自然である。しかも、そもそもA子さんの子供として産むことに同意しているからこそ、精子提供なのではないか。

きっかけは、B氏がA子さんに対して子供の養育費を支払うことを約束したことである。(結局、この養育費は支払われなかった。)

これについてA子さんが確約を求めると、令和2年(西暦2020年)3月31日にB氏はLineでA子さんに「俺が子供貰ってあなたが養育費払うのはどうですか?」と述べ、子供の親権と逆にA子さんが養育費を支払うことを要求した。妻と離婚をしてでもA子さんの子供の親権を求めるのだと言う。

令和2年4月1日のB氏とA子さんのLineの一部。プライバシー保護のために一部加工しています

B氏は同年4月1日の12時頃には「(子供を)渡す方向で検討できるならば本当にお願いしたい」と頼み込み、さらに午後になると「子供は俺が貰う」「だから子供は俺に渡して」「子供を俺が渡すのは諦めてないからな」と、高圧的に子供の引き渡しを求めるようになった。

同年4月2日には子供の引き渡しを拒否するA子さんに対して「(親権を)裁判で取ります」と主張。

令和2年4月2日のB氏とA子さんのLineの一部

こうした要求は、同年4月18日にB氏が「子供を取れないことは今日知った」と言うまで続いた。(B氏は日本の『民法』における認知の制度の詳細について知らなかったと思われる。)

目的は日本での在留資格か?

子供が欲しい女性に身分を偽って近づき(繰り返すが、少なくとも婚歴詐称は本人も認めている)、「精子提供」と言う名目で妊娠させた挙句、生まれてきた子供は自分が貰おうとする。これはどう考えても「精子提供」を装った詐欺行為では無いのか。

ここで重要なのは、B氏が日本の大手生命保険会社に勤務している、という事実だ。B氏がどうして日本で勤務が出来るのかと言うと、それは「日本人の配偶者等」の在留資格を得ているからである。

どういうことか。B氏は日本人である妻と離婚した場合、在留資格を失う。しかし、実は平成21年(西暦2009年)の『入管法』改正により、日本人女性の産んだ子供を外国人男性が認知して養育すると、その外国人男性は日本の在留資格を有することが出来る。

この規定については当初から悪用の恐れが指摘されていた。外国人男性が日本人女性を騙して妊娠させると、子供を養育するためと称して日本に居座ることが出来る。犯罪集団や諜報機関が組織的にこれを行うと日本社会は大混乱に陥る。

今回の件は彼個人による行為と思われるが、「精子提供」と言う名目で日本人女性を妊娠させてこの子供の親権を得ようとしていたのは事実だ。一度育費を支払うと誓ったのに結局支払わなかったのも、養育費を支払う姿勢を見せることで親権を主張しやすくする目的があったと推測することも可能である。

今回は彼の行動は未遂に終わったものの、現に悪用されかけたことが判った『入管法』は即刻改正されるべきだ。また、同時に精子提供についての法整備も必要である。

「殺されたのにまだ生きている」

今回の件で、B氏やマスコミはA子さんの人格を否定するような言動も行っている。A子さんが夫に内緒で精子提供を受けたという虚偽の情報も拡散された。さらに「ありもしない経歴詐称をでっちあげてB氏にストーカー行為を行った」と言うような、A子さんを加害者扱いするようなデマまで広まった。

性犯罪は魂の殺人とも言われる。「望まない出産」を強いられたA子さんは「殺されたのにまだ生きている」ように感じると言う。

「殺されているのに意識はあって、『こいつが殺されたのはこんなに悪いことをしたからだ』と言われ続けているように感じています。」

マスコミやネットでの誹謗中傷は、A子さんにとって殺された上にさらに殺された責任を負わせられるかのような感覚であった。

こうした被害についてA子さんが民事訴訟をした場合、勝算はあるのだろうか?

元東京地検検事の高橋壮志弁護士は「2つの権利(利益)侵害があった」と語る。

「一つ目は精子提供目的で行われた性行為の同意に瑕疵があったということ。二つ目はその結果妊娠した子供を出産したこと。この2点について何らかの権利(利益)侵害があったとは言えるはず。」

今回の事件は裁判において「前例がない」(高橋弁護士)ということもあり、司法がどのような判断を下すかは不明であるが、権利侵害があったという事実は消えない。

A子さんの夫は生まれた子供を自分の子供として育てる意向である。子供が成長した場合、事件のことを伝えるのか、聞いた。

「有ったことを無かったことには出来ない。自分の子供として育てるけれども、子供が成長したら伝えないといけない場面があると思う。」

A子さんの夫は慎重に言葉を選びながら答えた。無論、B氏に親権を渡す気など毛頭ない。B氏の行為で被害を受けたのはA子さんだけでなく、その夫と第一子のあかりさん、そして、今回生まれた第二子と、家族全員だ。

性暴力への認識が甘い日本の法体系

この問題の背景には平成21年に麻生内閣が行った『入管法』改悪も存在するが、より根本的な問題として我が国の性暴力への甘さもあるだろう。

そもそも、我が国では性行為に同意があれば基本的に罪に問われない。同意が無くても無罪判決が下ることがあるほどである。「望まない妊娠」や「望まない出産」をさせたからと言って、罪に問われることは無いのだ。

例えば、避妊具に細工をして意図的に望まない妊娠をさせたとしても、そのことを罰する法律は存在しない。

さらに安倍内閣は平成29年(西暦2017年)に『刑法』を改正し、強姦罪を廃止して強制性交等罪とした。

強姦罪とは違い、強制性交等罪では「被害者が男性でも女性でも同じ量刑」「性行為であっても性交類似行為であっても同じ量刑」である。

一般的に男性から女性に対するレイプには相手を妊娠させる未必の故意があると言えるが、そのことに対する加重処罰は一切存在しなくなった。「望まない妊娠」と「望まない出産」そのものを刑事罰として裁くことはできないのである。

普段は安倍政権に否定的な左翼勢力もこの『刑法』改悪には賛成した。妊娠被害の過小評価は中絶自由化の追い風となるからであろう。「望まない妊娠」や「望まない出産」そのものを無くそう、という動きは殆どない。

今回の事件においてB氏の行為はあまりにも悪質であるが、それを放置しているかのような我が国の法体系も改めなければならない。

日野智貴(ひの・ともき)平成9年(西暦1997年)兵庫県生まれ。京都地蔵文化研究所研究員。日本SRGM連盟代表、日本アニマルライツ連盟理事。専門は歴史学。宝蔵神社(京都府宇治市)やインドラ寺(インド共和国マハラシュトラ州ナグプール市)で修行した経験から宗教に関心を持つ。著書に『「古事記」「日本書紀」千三百年の孤独――消えた古代王朝』(共著・明石書店、2020年)、『菜食実践は「天皇国・日本」への道』(アマゾンPOD、2019年)がある。


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