宮崎駿最新作『君たちはどう生きるか』公開、重苦しい純文学的作品

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文部科学省ホームページより
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令和5年7月14日、宮崎駿はやお監督作品『君たちはどう生きるか』(スタジオジブリ)が封切られた。初日の夕方に観たが、平日にも関わらず席は8割方埋まっており、客層は年代も性別もバラバラだった。本作に対する期待の高さをうかがわせる客入りだったといえる。

『君たちはどう生きるか』は同名の古い児童文学に由来するタイトルだが、それは原作ではなく、宮崎駿のオリジナル脚本とされている。興行にあたって映画の内容に関する情報は全く説明されず、予告動画もなく、一切の広告宣伝も行われない、まさに異例の状態で公開に至った。

個人的な感想としては、本作は娯楽作品としては評価を付け難い、純文学(私小説)的な作品だということだ。最初から最後まで謎が多く、しかもその謎は殆ど解明されないままにエンディングを迎える。「痛快活劇」とは程遠い、重苦しい作品として仕上がっている。

本作は宮崎駿の「事実上の遺作」になるともいわれ、実に7年もの歳月をかけて、スタジオジブリの単独出資で制作された。そういう意味では、究極まで作家性を追求した作品であり、観客におもねらない芸術作品であると考えることもできる。

あらすじ(導入部)

主人公である少年・真人まひとは大火で病身の母をうしなう。父は母の妹と再婚し、父と真人は母とその妹(新しい母)の実家に転居する。時は戦時中であり、転居には疎開の意味もあったものと思われる。新しい母(叔母であり義母)は既に妊娠しており、悪阻つわりに苦しんでいる。その屋敷は広大で、敷地内には池や森、そして謎の廃墟(塔)が建っている。

真人は実母を喪ってからも気丈に振る舞うが、心を閉ざしているようにも見える。転校先では同級生と折り合いがつかず、初日で喧嘩になる。その帰路、自ら石を頭に打ち付けて流血。慌てた父は「もう学校へ行かなくてよい」と言う。

真人は屋敷の庭に住む青鷺あおさぎを怪しんでいる。青鷺は真人に人語で語りかけ、「お前の母は死んでいない。会わせてやるからついてこい」と誘うが、真人はこれを拒み、青鷺を殺そうとする。

身重の義母が突然森に消える。真人は老女中と一緒に義母の足跡を追ううちに、謎の廃墟に誘い込まれる。そこにいたのは青鷺と、塔を建てたとされる行方不明の大伯父だった。

宮崎駿の監督作品

宮崎駿が監督を務めた主な長編映画は以下の通り。

  • 昭和54年『ルパン三世 カリオストロの城』(東宝)
  • 昭和59年『未来少年コナン 巨大機ギガントの復活』(松竹)
  • 昭和59年『風の谷のナウシカ』(東映)
  • 昭和61年『天空の城ラピュタ』(東映)
  • 昭和63年『となりのトトロ』(東宝)
  • 昭和64年『魔女の宅急便』(東映)
  • 平成4年『紅の豚』(東宝)
  • 平成9年『もののけ姫』(東宝)
  • 平成13年『千と千尋の神隠し』(東宝)
  • 平成16年『ハウルの動く城』(東宝)
  • 平成20年『崖の上のポニョ』(東宝)
  • 平成25年『風立ちぬ』(東宝)

無言で帰る観客

映画『君たちはどう生きるか』のエンドロールが終わって場内が明るくなると、200名以上の観客は全員無言で会場を後にした。本作は往年のジブリファンにとっては待望の宮崎作品であっただけに、期待は高かった。

今後本作はどのように評価されるのか興味深い。宮崎駿監督は「アニメは子供のために作るもの」というのが持論とされている。全く前提知識なく、現代の子供たちが鑑賞したらどいう感想を持つのだろうか。

これまでの主な宮崎作品と比べても、本作の異質さは際立っている。おそらく、作中に込められた各種設定の意味は、一度観ただけでは理解できない。あるいは、観客を何度も劇場へ通わせることが、制作側の意図かも知れない。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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