また「たばこ税」増税 虐げられ続ける喫煙者

政治
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令和3年10月1日、また煙草税引き上げにより多くの煙草銘柄が値上げされた。度重なる増税に、国内の愛煙家は怒り心頭だ。

今回の増税は平成30年の法改正によるもので、以降3段階に分けて実施された。加熱式煙草については平成30年から5年連続で増税することとなっており、令和4年10月に再び増税することが決まっている。

煙草増税の歴史

煙草税の歴史は古く、明治9年の煙草従価印紙税法に遡る。帝国政府は日清戦争後の財政基盤を強化するために、明治31年から政府による専売化に踏み切った。

第二次大戦敗戦後の昭和24年に日本専売公社が引き継ぐまでは、大蔵省が煙草を販売していたのだ。昭和60年に専売公社が日本たばこ産業(JT)へ移行、専売制度は廃止された。

それ以降、少なくとも6回の「たばこ税法」と消費税増税などにより、煙草は増税され続けている。この30年で物価は上がっていないのに、煙草だけが増税によって値上げを余儀なくされてきたのである。

排除される喫煙者

現在、愛煙家は高額納税者であるにも関わらず、非常に肩身の狭い思いをしている。政府は「健康増進法」という法律をたびたび改定し、分煙という名の「喫煙者封じ込め」を推進してきたからである。

令和2年4月に施行された「改正健康増進法」によって、あらゆる施設から喫煙場所が廃止された。居酒屋を含む飲食店においても、一定の条件を満たした上で保健所に「届出」を行わなければ、店内での喫煙が許されなくなった。

平成22年の煙草増税に際して鳩山由紀夫首相(当時)が「健康目的の為に喫煙者を減らす」と述べるなど、政府は「喫煙場所の廃止」と「増税」によって喫煙者排除を進めてきたのである。

嫌われる喫煙者

喫煙者は嫌われる。

その最大の理由は煙草の悪臭だ。分煙していても、喫煙者にこびりついた臭いは消えない。同じ職場であれば、喫煙者だけが「煙草休憩」を享受していることも許せない、という気持ちも至極もっともである。

特に最近は無臭に近い「加熱式煙草(電子煙草)」も普及しつつあり、喫煙者であっても紙巻煙草の臭いを嫌う人は増えている。

受動喫煙による健康被害も無視できない。特に喘息もちの人にとって、煙草の煙は凶器である。そういった非喫煙者の声が社会を変えてきたことは事実であり、これからも分煙は促進されるべきだろう。

現在でもマナーの悪い喫煙者は存在するが、多くの喫煙者は非喫煙者に迷惑をかけたくないと考えているのではないか。だからこそ、分煙推進や増税に表立って反対する声が大きくなることは無かったのである。

喫煙者への「懲罰」としての課税

煙草税の税収は年間1兆円ほどあり、国家予算の1%に相当する。これが中央政府と地方自治体に分配され、一般歳入となる。

煙草の値上げもあり、年々喫煙者数は減っているが、反比例的に増税しているため、税収としては大きく変動していない。少なくなる一方の喫煙者が、納税額を増やして国庫を支えている構図だ。

非喫煙者に煙草増税は関係ない。むしろ嫌煙家は、煙草増税によって愛煙家が痛めつけられることを痛快に感じているかもしれない。まさに「懲罰的課税」である。

煙草が課税されるのは、煙草が酒と同様に「嗜好品」とされているからだ。「嗜好品」というのは、要するに「生活必需品ではない」ということだろう。

しかし愛煙家にとってみれば、煙草はストレス緩和のための必需品である。医学的な警告があろうとも、長生きすることが幸福であるとは限らないように、煙草を必需品と考えるか否かは「個人の内面的自由」ではないか。

非喫煙者も他人事ではない

そもそも、政府が国民の「必需品」と「嗜好品」を区分することがおかしい。

コロナ禍にあって政府は連日「不要不急の外出を避けるよう」呼びかけ、「イベント開催や飲食店営業の自粛」を要求した。しかし何が「不要不急」で、何が「必要緊急」なのか、それを決めるのは個人の自由だ。

例えば、東京ディズニーランドやUSJに遊びに行くことを政府が「不要不急の贅沢」と認定し、入場料に課税したとしたら、読者はどう思われるだろうか? 音楽ライブの入場料や、ゴルフ場使用料への課税ならどうか?

煙草への「永続的増税」の先にあるのは、政府が国民の価値観を決定する、恐るべき政府主義・管理社会の到来である。

われわれは車を買えば自動車税、家を買えば固定資産税、外食すれば消費税、生きているだけで住民税と、ありとあらゆる場面で課税される「重税国家」に生きている。

日本国民は「茹でガエル」

税は権力の源泉だ。いかなる政府も、いかなる官僚も、増税の誘惑からは逃れられない。

だからこそ、われわれ国民は「あらゆる増税」に反対すべきであり、それは煙草増税も例外ではない。

煙草税は政府にとって貴重な財源であり、「喫煙者がいなくなっては困る」というのも財務官僚の本音だ。だからこそ煙草税は、喫煙者が急激に減らないように少しずつ値上げされてきた。

そして現在、煙草価格の実に6割が(消費税を含む)税金なのだ。いくらなんでも、これは異常ではないか。

ゼネラルリサーチ株式会社による調査結果

ゼネラルリサーチの調査(令和3年)によれば、喫煙者の4割が「これ以上の値上げは許せない」と答え、3割が1箱50円くらいまでの値上げを「限界値」としている。

もうそろそろ、愛煙家も団結して怒りの声を挙げるべき秋(とき)ではないだろうか。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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