矢田稚子氏の首相補佐官起用「現役世代の声を届けるには最適任」

政治
国民民主党設立大会
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令和5年9月15日、国民民主党は設立大会から3周年を迎えた。設立大会時の所属国会議員は15名。中心には、玉木雄一郎代表と矢田稚子わかこ参院議員(当時=写真)がいた。その矢田稚子氏が同日、岸田内閣の首相補佐官に就任することになった。

労組出身の参院議員として活躍

矢田稚子氏は大阪市出身。府立寝屋川高校を卒業後、昭和59年に松下電器産業(現在のパナソニック)に入社。社内でキャリアを積み、平成12年に松下電器産業労働組合の中央執行委員に就任。平成20年にはパナソニックグループ労働組合連合会の副中央執行委員長電機連合の男女平等政策委員長に就任している。

ちなみにパナソニックグループ労働組合連合会(旧・松下電器産業労働組合)は単組(単位組合)と呼ばれる企業別労組で、電機連合(全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会)は産別(産業別組合)と呼ばれる労組連合組織である。

平成28年、矢田氏は参院選全国比例に民進党公認で立候補し、電機連合の組織内候補として215,823票の個人票を獲得し、初当選。当時50歳だった。民進党の全国比例では3位の得票数で、電力総連(小林正夫氏=270,285票)、自動車総連(濱口誠氏=266,623票)の組織内候補に次ぐ結果だった。

平成30年には旧国民民主党に参加。令和2年の旧立憲民主党と旧国民民主党の合併に際しては、他の産別組織内議員とともに、これに加わらないことを決めた。旧国民の代表として旧立民と交渉していた玉木雄一郎氏も合流新党(新立民)には加わらず、玉木氏と矢田氏ら産別議員を中心として新国民民主党を結党するに至った。

矢田氏は新国民民主党で副代表と男女共同参画推進本部長に就任。党両院議員総会長も務めている。令和4年の参院選では国民民主党公認で全国比例に立候補。159,929票の個人票を獲得するも、党としての得票が不足したため落選。その後は党顧問に就任していたが、令和5年に政界引退を表明した。

子育て支援の所得制限撤廃を訴える

矢田氏が参院議員として最も注目されたのが、「子育て支援の所得制限撤廃」だろう。

令和2年12月1日、矢田氏は参院内閣委員会で「児童手当の所得制限見直し問題」などについて質問。児童手当、幼児教育無償化、高校無償化、コロナ特例給付などに所得制限が課せられることによって「中間所得層」が子育て支援政策から置き去りにされると訴えた。

令和3年、国民民主党は初めての衆院選で「子育て支援の所得制限撤廃」を公約に掲げる。令和4年には二度にわたって所得制限撤廃法案を国会へ提出した。

同年の参院選前には矢田氏らが野田聖子特命担当大臣(地方創生、少子化対策、男女共同参画=当時)に対し、所得制限撤廃の要望書と署名を直接手渡している。

同年12月には再び小倉將信特命担当大臣(こども政策、少子化対策、若者活躍、男女共同参画=当時)に同様の要望書を提出。

その際、矢田氏はすでに国会議員ではなかったが、党役員として同席。「児童手当や教育費、障害児の所得制限の撤廃、多子世帯への対策、年少扶養控除の復活など、次なる骨太方針に子育て予算倍増に向けた具体策として、この問題を取り上げてほしい」(党公式サイト)などと述べている。

令和5年1月には、自民党の茂木幹事長が国会質問で「子育て支援策の所得制限撤廃」を求めるなど、与党内でも同調する動きが始まった。この頃、国民民主党は従来の主張に加え、障害児福祉に関する所得制限撤廃を加えた法案を国会へ提出している。

令和5年6月、政府は「こども未来戦略方針」を発表。この中で「児童手当については(中略)所得制限を撤廃し、全員を本則給付とするとともに、支給期間について高校生年代まで延長する」と明記するに至った。

首相補佐官とは?

一民間人とはいえ、野党の元幹部を政府の要職に起用するのは極めて異例のことだ。任命権者である岸田首相の狙いについて、「国民民主党を与党へ引き込もうとしているのではないか」との憶測も飛び交っている。

9月14日、玉木雄一郎代表は矢田氏の首相補佐官就任報道について「党の役職も離れているので、党としてどうこうということではない。これまでの経験と知識を活かして、ぜひ活躍してもらいたい」とエールを送った。

さらに「去年の(参院)選挙で当選させることができなかったのは痛恨の極み。このことを胸に刻み、党勢拡大しないといけない。(矢田さんは)能力がある人。労働組合の経歴も長く、子育ての経験もある。そういった現役世代の声を首相に届けるには最適任だと思う」とコメントしている。

首相補佐官は法律により内閣官房に設置される特別職国家公務員で、定員は5名。重要な政策について首相に直接助言する役割があり、首相秘書官の多くが官僚であるのに対し、補佐官は国会議員が任じられることが多い。首相のブレーンとしては内閣官房参与という役職があるが、こちらには定員がない。

14日、自民党の長島昭久衆院議員は報道を受けて、自身のSNSに「これは、素晴らしいアイデア」「矢田わか子補佐官が総理に直接アドバイスすることにより、こども子育て若者政策を本気で推進することができます」などと投稿した。

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