【座長より】市民劇団・美洲座『アフロディーテ 三島由紀夫物語』旗揚げ公演迫る

小説
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いよいよ市民劇団・美洲座の旗揚げ公演『アフロディーテ 三島由紀夫物語』まで、一か月を切りました。今は音声の録音を終え、BGMと背景映像等の最終調整に入っています。

そして、先日予告動画を公開しました。

是非ご覧いただき、若者たちの純粋な魂の輝きと躍動を、その目でお確かめになって頂きたいと願うばかりです。

すべてがゼロからのスタートでした。プロットを作り、台本にリライトし、出演者を募り、音楽を選曲しといった通常の作成作業に加え、今回はご存じの通り、新型インフルエンザが猛威を振るい、開催そのものが危ぶまれた時期もありました。実際、劇団内では止めるべきではないかの意見も何度も出ました。

そこまでの思いをして、それでも私達が市民劇団・美洲座を結成し、旗揚げ公演を行おうと決めたもの、それはひとえに本年が三島由紀夫没後50年の記念すべき年だからです。

三島由紀夫は日本が世界に誇る稀代の小説家にして、日本人としての真摯な生き様を強く希求した文武の求道者です。この天才による大伽藍のような作品群のうち、現在ごく一部の小説を例外として、多くが等閑視されているのです。

これは日本における大きな文化的損失であると共に、次世代を担う若者たちにとっても大きな不幸です。このメモリアルイヤーを起点とし、現在の憂うべき状況を何とか変えて行かねばならない。そうした一念だけが私達をつき動かして来ました。

今回の舞台作品『アフロディーテ 三島由紀夫物語』は、演劇的三島論とでも言うべきものです。

早熟で優秀ではあるが、世と対峙することを避けるような韜晦趣味の作品を書いていた内向的な「平岡公威青年」が、敗戦という自らの価値観を根幹から揺るがすような衝撃を受けた後、いかにして我々が知る絢爛華麗にして読む者に激しい訴求力を持つ作品を生み出す「三島由紀夫」になったのか?

その心の変容の過程を、演劇という形を借りて仮説的に表現したものです。

さらに(感染対策も兼ねて)演者は舞台上で一切台詞を発せず、舞のような緩やかな所作で音に合わた演技をします。その間、主人公である平岡公威以外の演者は全員仮面を被るのです。

まるで現代能のような舞台に、三島由紀夫と関わりの深い女性4人が仮面を被ったまま、それぞれが三島と相対するという、ある種前衛的な形式です。しかし三島由紀夫の人生を俯瞰すれば、このような形になるのも一つの解なのではないかと思います。

なお、本作は三島由紀夫の作品を全く読んでいない方も楽しめるように作っております。

むしろ先入観なく見て頂いた方が良いのではないかと思うくらいです。実は演じる若者たちも、最初は作品はおろか三島由紀夫の名前すら殆ど知らないという状態でしたが、それが稽古が始まってからは、見る見るうちに演技に深い共感を込めるようになりました。

彼らの努力の賜物であると同時に、三島文学の力であると改めて感じ入っています。

Aphrodite(アフロディーテ)三島由紀夫物語』
主催:市民劇団 美洲座(みしまざ)
日時:令和2年11月1日(日)/開場18:00-/上演19:00-20:30
場所:中央市民センター(福岡市中央区赤坂2丁目5−8)
詳細:mishimaza.net

石原龍司(いしはら・りゅうじ)令和2年、「市民劇団 美洲座」を設立し、座長に就任。

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