『幻想の√5』著者に聞く(後編)オウム事件を終わったことにしてはならない理由

『幻想の√5(ルートご)なぜ私はオウム受刑者の身元引受人になったのか』の著者・中谷友香氏は「オウム事件は終わっていない」という。

再びオウムがやったようなテロ事件を引き起こさないためにも、もう一度日本社会がオウムと向き合う必要がある。死刑囚や受刑者と15年にわたって交流してきた中谷氏だからこそ見える事件の深層とは何か? インタビュー後半で確信に迫る。

KKベストセラーズ刊『幻想の√5』著者・中谷友香さん独占インタビュー(後編)
聞き手:『選報日本』編集主幹・本山貴春

Q.つまり「オウム的なもの」が無くなっておらず、むしろ拡散していると?

そうです。

オウム事件は終わったことにされていますが、テレビ番組でもあるまいし、終わった筈がない。現実に、オウムの後継団体である「アレフ(Aleph)」もあるじゃないですか。聞くところによるとアレフは(地下鉄サリン事件などの)被害者に対する弁済もしていないっていうことですから、悪いと思ってないのかも知れません。

悪いというよりも「何か意味があるはずだ」みたいなね。信者一人ひとりに「どう思っているか」とか聞いてないからわからないですけど。もう(社会に)戻れなくなっている人もいるっていうのは聞いています。全財産を教団に渡していたり、親と一緒に出家して子供時代を教団内で過ごしたために、世の中に出るのが怖いっていう事例も聞いたことがあります。

「終わった」「終わった」と言いながら、死刑執行が終わっただけで、「アレフ」や「光の輪」のような後継団体といわれているところもある。そこだけを公安調査庁が見張っていますけど、SNSなどインターネットを使った偽装勧誘とか、彼らの十八番ですよね。自己啓発とかスピリチュアルとかにも偽装する。

Aleph公式サイト。同団体には現在も全国9箇所に公然拠点がある。

オウムが残した課題は、終わったように思えません。

宗教さえやらなければ大丈夫、というのはあまりにも安直すぎると思います。

初めから不良グループに入ったつもりはないのに、「何でこんなことになったのか」ということがある。一見良いことのように見えることにこそ着目すべきです。

Q.なぜ麻原彰晃のような男が現れたのでしょう?

何でもそうですけど、人間ひとりでできることは限られています。しかし人が集まれば拡張していくし、共鳴していけば相乗効果が生まれる。まさに「火と油」の関係です。

麻原彰晃も、オウムを始めた時点でああいう最後(テロ事件)を予測していたかといえば疑問です。「もっともっと(教団を)大きくしたい」という願望はあったと思うんですけど、自分が最後死刑になるとは考えてなかったと思うんですね。

だから、スピリチュアル・グループなり自己啓発セミナーなりを主宰するような人には、「自分も麻原になる可能性はゼロではない」と思って欲しいんですよ。0.01%でも「気がつけば麻原彰晃になる可能性」を踏まえておいて欲しい。絶対ならない、という保証はないので。

「宗教じゃないから大丈夫」っていうのを謳い文句にしている気がするんです。だから、「うち宗教ですよ」って言ってくれる方がわかりやすい。物事を限定的に考えるのは楽ですけども、限定しないと「じゃあどこが怪しくて怪しくないかわからない」ってなるじゃないですか。

だから常に、そういう可能性はあるっていうことを知っていた方がいいし、主宰者側も麻原彰晃になっちゃう可能性があると思った方が良いんです。

『幻想の√5』KKベストセラーズ刊

Q. 著書『幻想の√5』をどんな人に読んで欲しいですか?

やっぱり20代ですね。

ちょうどいま20代の人たちの親世代が、オウムに入った世代に近いでしょうから、親世代が「そういえばあんな事件あったな」と思って手に取ったら、お子さんにも是非勧めていただきたいんです。

10代、20代の人が自らこの本を買ってくださるケースは少ないと思いますけど、事件をリアルに知っている世代から、子供なり会社の部下なり、次世代に渡してもらったらな、と。

オウム事件というのは、一つのモチーフだと思うんです。「人間、こういうふうになることもある」ということが本質です。林泰男さんの名前が「Cさん」でも構わない。具体的な固有名詞だけで限定的に話すと、「林さんっていう人がいました」「事件になりました」「死刑執行しました」「はい、終わり」ってなっちゃうでしょう。

でも、その林さんが「隣の人かもわかんないですよ」っていうことを力説したいんです。マスコミ報道は誰がどうしたっていう話に陥りがちです。

この本を読んで、自分の生活にフィードバックさせて欲しいんです。各々が、自分の組織内や家庭内で「似たようなことあるよな」とか。

そういうところからも本書がヒントになれば良いなって思います。

オウム事件について、「誰々がこうした」といったところだけではなくて、身近なことに置き換えて考えてもらえたら、という願いを込めています。

この本の切り口はオウムですが、最終的に言いたいことは、「次はあなたの番かも知れませんよ」っていうことです。それは被害者だけではなく、オウムのような加害者になる可能性も含めて、です。

1月10日、宮台真司さん(右)、サエキけんぞうさん(左)とトークショーを開催

『幻想の√5: なぜ私はオウム受刑者の身元引受人になったのか』
マスコミが報道しなかった!できなかった!
オウム死刑囚たちの肉声と素顔が明らかになる。
中谷 友香 (著)
ベストセラーズ

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