明治維新150年目に振り返る 福沢諭吉の説いた自由と独立とは?

人生観
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昭和59(1984)年以降、わが国の1万円札の肖像に採用されているのが福沢諭吉翁だ。

福沢諭吉は江戸末期の天保5(1835)年、中津藩(現在の大分県中津市)に下級武士の子として生まれた。現在では私学の名門・慶應義塾の創設者としても知られる。

年少期には当時の武士としての素養である漢学や儒学をマスターし、長じては大阪や江戸に出て蘭学を学ぶ。緒方洪庵の適塾では塾頭も務めた。万延元(1860)年には咸臨丸に同乗し、幕府使節団の一員として渡米している。

第二次長州征伐に際しては幕府に強硬論を献策しているが、これは攘夷派が台頭して日本が鎖国に逆戻りすることを懸念してのものだった。のちに明治新政府が積極的に開国策を進めた際には驚き、喜んだという。

福沢諭吉は新政府のヘッドハンティングを断り、教育に専念した。とはいえ、慶應義塾が経営難に陥ったときには金策に走るなど、経営者としての側面も持つ。

のちに5大新聞の一つと呼ばれる『時事新報』(→東京日日新聞→毎日新聞が合併)を創刊し、多くの著作とともに国民の啓蒙に努めた。日清戦争にあたっては主戦論を唱え、戦費調達の募金活動も呼びかけている。

福沢諭吉の主著として知られるのが『学問のすすめ』だが、その原型となったのが明治3(1870)年、35歳のときに帰郷して書いた『中津留別之書』である。(発表は明治5年)

以下、その一部を現代文に意訳し紹介する。

「自由」とは、他人を邪魔することなく、自分の心のままに事を成し遂げるという意味である。

もし親子、上司と部下、夫婦、友人など、お互いに邪魔する事なく、各々が本来持っている心のままに自由自在に行動し、自分の勝手で他人を束縛せず、各々が自立できたならば、人間は本来正しい性質を持っているのであるから、悪い方向には行かないものなのだ。

もし勘違いして自由の限度を越え、他人に害を及ぼす事で自分の利益を確保しようとする者がいたならば、それは人間社会に害をもたらす存在であるから、天も人も許さないだろう。

その人物が社会的に高い地位にあろうと、社会的弱者であろうと、年長者であろうと、幼かろうと、それらに関わらず軽蔑し、処罰して良い。これほどに、人の自由と独立は大切なものだ。

このことが理解できない限り、人徳も知性も身につかず、家庭は立ち行かず、国家も成り立たず、人類文明も独り立ちできない。個人が独立して家庭が独立し、家庭が独立して国家が独立し、国家が独立して人類社会も独立するであろう。

政治家も役人も、ビジネスマンも農家も、お互いにその自由と独立を邪魔することがあってはならない。

『中津留別之書』ではこの他に近代的な夫婦関係、親子関係、政治のあり方などについて簡潔に説き、最後は「とにかく西洋の学問を学べ」と結論して終わる。(意訳全文はこちら

幕末明治にあって、西洋の学問を学ぶことは死活的に重要なことだった。福沢諭吉じしん、香港に立ち寄った際に漢人が英国人に奴隷のごとく使役されるのを目撃して衝撃を受けている。

西洋の先進文化と技術を摂取し、文明化を果たさねば、日本国が西欧列強の植民地になってしまうということは、当時の日本人にとって肌身で感じられる脅威だった。

『中津留別之書』のエッセンスは、

一身独立して一家独立し、一家独立して一国独立し、一国独立して天下も独立すべし。(原文)

にある。福沢諭吉が説く独立は、「自由」とセットだ。

従って、たとえ夫であっても妻の自由を奪ってはならないし、親であっても子の自由を束縛してはならない、とする。

また、福沢諭吉は武士の硬直的な身分制度を「親の敵(かたき)」とまで憎んでいた。そのためか、儒教によって国を統治した徳川家康を嫌い、百姓から成り上がった豊臣秀吉を好んだという。

さて、明治維新から150年経ったこんにち、果たして現代日本人は「自由」で「自立」(独立)できていると言えるだろうか?福沢諭吉翁がタイムスリップして現れたとき、現状を是とするだろうか?

福沢翁が懸念した通りに、現代日本人は自由の意味を履き違え、自己の欲望を達成するためには他人へ害を及ぼすことにも躊躇がない。それでいて安易に他者へ依存し、自己の責任を果たそうとはしない。

いま再び、時代は大きく変わろうとしている。高度情報技術や人工知能の発達に伴い、産業構造も、国際環境も劇的に変わりつつある。人生の価値観が変わり、生き方、働き方も激変している。

このようなときこそ、先人に学ぶべきだろう。現代同様に大転換を迎えた明治時代にあって、その精神的指導者となった福沢諭吉翁が日本人に何を説いたのかを振り返り、新たな指標にしたいものだ。

【社会人からの弁論部 講演会】

記念講演「福沢諭吉に学ぶ 個人が自立して現代社会で戦う道とは」
講師:金子宗徳(かねこ・むねのり)
国体文化学者/亜細亜大学非常勤講師/里見日本文化学研究所所長

プレゼン「フリーランサー互助組織の設立へ向けて」
発表:本山貴春(もとやま・たかはる)
戦略PRプランナー/合同会社独立社パブリック・リレーションズ代表

日時:平成30年9月16日(日)15時〜16時半(14時半開場)
場所:福岡ビル9階 第1ホール(福岡市中央区天神1―11―17)
会費:1000円(学生無料)
主催:NPO法人 社会人からの弁論部
協賛:合同会社独立社パブリック・リレーションズ
参加方法:facebookイベントページより(先着50名様)

本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

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本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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