香港民族党・陳浩天氏による外国人特派員協会スピーチ(日本語訳全文)

国際
この記事は約11分で読めます。

2018年8月14日、香港民族党の党首である陳浩天(Andy Chan)氏が香港外国人特派員協会で行った講演の緊急邦訳した。以下にその全文を掲載する。

(尚、自動翻訳サービスをベースにしているため不正確な訳が残っている可能性もある。随時修正していく)

香港民族党 陳浩天党首 講演
2018年8月14日 香港外国人特派員協会にて

皆さんこんにちは。はじめに、外国特派員協会に対して感謝を申し上げます。本日の講演会開催にあたり、ここ数日多くの政治的圧力がかかりましたが、外国特派員協会はこれに屈しませんでした。実はこの数週間、われわれの身辺は、今まで経験したことのないほど厳しい監視下に置かれていました。

香港民族党とは

香港民族党は、2016年に私が友人たちとともに結党しました。わが党は、初めて「香港独立」を最終目標として明確に打ち出した政党です。

香港民族党は「独立」の一語によって、即座に中国政府の政治宣伝機関によって凶悪な過激派と認定されました。実際には、香港民族党が求めるものは、多くの香港人が望んでいることと同じです。それは民主主義の夢であり、この香港は私たちの家であるということです。

異なるのは、真実を直視するか否かです。最終的な主権が国民にない限り、民主主義について議論すらできないのだという真実です。われわれ香港民族党は、香港の主権は香港市民のみが持つべきであると訴えています。そして、そのための唯一の道が「香港独立」なのです。

香港民族党への中国による迫害

われわれが先ずなすべきことは、「香港人」という民族意識を、香港市民にもたらすことでした。そのため、われわれは2016年の香港立法議員選挙に候補者を擁立しようとしました。

しかしご存じの通り、当局は過剰反応を示し、われわれの立候補資格を奪ったのです。無論これは憲法違反であり、違法な行政手続きです。

以降、われわれは選挙ではない方法で香港人の民族意識を喚起すべく努力してきました。学生への啓発活動や、チラシの配布や、集会などです。すべては香港の民族意識を育てるためであり、中国共産党政府による圧政から香港を守るための活動です。

香港民族党は、立法議員選挙以降も多くの迫害を受けました。団体登録を拒絶され、旧正月には夜市のステージに登壇することを試みましたが、やはり拒絶されました。そして1997年の「香港返還」以来、初めての「活動禁止命令」を警察から受けるということは、むしろ誇るべきことなのです。

ご承知の通り、当局はわれわれ香港民族党を「違法な結社」として解散に追い込もうとしています。中国共産党の支配下においては「自由」も「民主主義」も幻想にすぎないことは何度も証明されており、それらの目映い単語は外国メディアを騙すためにのみ用いられ、決して香港市民のためのものではありません。

あえて言いますが、1997年の「香港返還」まで、香港がこれほど恐ろしい植民地支配を受けたことはありませんでした。そう、中国こそが植民地・香港の宗主国であり、だからこそ香港民族党がいま必要なのです。

中国の本質は独裁と圧政

独裁と圧政こそが中国の本質に他なりません。これだけ技術が進歩しながら、中国はいまなお18世紀の帝国主義を奉じる野蛮国であり、近代的市民社会の価値観を持ち合わせていません。中華帝国は何世紀もの間、中央の強大な国家権力が統治してきました。

その支配体制を維持するためには必然的に人民は奴隷化し、諸民族は同化されることになりました。仮に同一の価値観を有する社会であればそれもうまくいったかも知れませんが、異なる文化を持つ民族に対してそれを行えば、すべてが否定されることになります。

東トルキスタンを、そしてチベットを見てください。そこでは国家権力によって人々の命が奪われています。さらには強制収容所に入れられ、死ぬよりも辛い拷問を受けているのです。

このような強制収容所はまだここにはありません。しかし中国政府は、香港や台湾にも強制収容所を作りたいと考えていることは明らかでしょう。

捏造された「中華民族」

北京政府は、自らの帝国主義支配を政治的に正当化するため「中華民族」という概念を捏造しました。しかしそのような民族も人種も存在しません。実際に存在するのは、中国語を話す人々であり、彼らはチベット人やモンゴル人、上海人や香港人です。

そして中国語を話す人々は、米国や、英国や、オーストラリアにも散らばっています。北京政府にとっては中国語を話す人すべてが「中華民族」であり、すべての中華民族は北京政府の統制下にあるべきだ、ということです。

このような理屈は、まともな教育を受けた皆さんには奇妙に思われるでしょうが、中国共産党の正式見解なのです。このような北京政府の帝国主義こそが、彼らの国家主義であり、本質です。

中国と関係を持つ全ての人々は、中国が帝国主義であり、自由を愛する諸国民にとっての脅威であるということを知らねばなりません。すでに私たちは北京政府の裏切りを目にしてきました。

北京政府はチベット人との17か条協定を破り、WTO加盟時の世界との約束を破り、さらに、香港返還時の英国政府との約束が破られたことで香港人の自由は徐々に抑圧されてきたのです。

強制的に同化させられる香港

この21年間、香港は悪くなる一方です。私たちは真の民主的選挙を実現できなかったのみならず、中国的な独裁政治に蝕まれつつあります。市場経済の中心地であった香港は、中国による経済的同化政策を味わいました。

中国資本が怒涛のように押し寄せ、私たちの日常生活を支える産業を侵食したのです。それはインフラであり、飲食業であり、マスメディアです。

次の段階はイデオロギーと文化における同化政策であり、これは注意深く、かつ徐々に進行中です。中国に香港が「返還」されて初めての行政長官となった董建華は、悪名高い「国家保安条例」を香港基本法23条として追加することを試みて失敗し、辞任しました。

2003年、香港市民は「国家保安条例」が制定されると当局が好き勝手に反逆者を認定し処罰できるようになり、著しい人権侵害が起こるであろうということを等しく理解しました。中国は、国家転覆について口に出すだけで国家転覆を目論んだとみなし、そのような人間は分離主義者に他ならず、中国にとって裏切り者であるから逮捕せねばならない、と考えています。

まもなく、中国における監視技術と人工知能の進歩が、『マイノリティ・レポート』の筋書き(※)を現実のものにするかも知れません。政治的な自由を制限する基本法23条はまだ制定されていませんが、同様の効果はすでに現れています。

(※)『マイノリティ・レポート』は、未来予知システムによって殺人者を事前に逮捕できるようになった未来を描くディストピア小説。トム・クルーズ主演で映画化もされた。

私たち香港民族党が、その最初の体験者となりました。彼らに言わせれば、単に独立性を論じることが、国家に対する叛逆と同じであるというわけです。さらに悲しむべきことは、2003年にはあれほど「国家保安条例」に反対した香港市民が、いまでは口に出すことさえ恐れているということなのです。

いわば、いまや香港に言論の自由はなく、代わりに北京政府がわれわれに対して望むであろうことについて考え、発言する自由のみがあるというわけです。もはや香港の状況は中国本土と大差ないということを、国際社会は認めるべきでしょう。

怒涛のようにやってくる中国人たち

お金とイデオロギーを使って香港に不幸をもたらすのみならず、中国は政府に忠誠を誓う中国人を毎日150人ずつ香港に移住させ、永住許可を与えています。

普通、移民の受け入れは、受け入れ側に多大なメリットをもたらすものですが、中国の影響下にある香港政府が行う移民政策は、私たちが愛すべきものを根こそぎ破壊するべく設計されています。

香港の地域社会は、相入れない文化の急速な流入によって崩壊の危機に瀕しています。医療サービスも許容量の限界を超えており、出産を控えた母親がベッドの空きを見つけるのに苦労するほどです。

労働市場には、平均をはるかに下回る賃金でも喜んで働く労働者が溢れ、香港人の居住スペースすら彼らに奪われました。さらに、私たちの思考を形成する言語も奪われようとしています。

北京政府の命令に従うならば、次世代の香港人は全員が広東語ではなく北京語を話すようになるでしょう。かろうじて教育現場では抵抗が続いていますが、北京政府の魔の手はすぐそこまで迫っているのです。

いつの日か、私たちは自問自答することになるでしょう。「なぜかくも、私たちの子や孫は政府に対し従順なのか?民主主義はどこへ行った?自由はどこへ行った?寛容さはどこへ行った?私たちの知っている香港はどこへ行った?」と。

こんにち、香港が中国による「民族浄化」に直面する中で、諦めることなく抵抗を続ける者や、歴史に埋もれることを拒絶する者たちが、ここにはいます。

香港は中国では無い

香港独立は、政治問題であると同時に、倫理的な問題です。

およそ170年の歴史は1841年の開港に始まり、1997年の「返還」の間までに、香港には独自の文化、歴史、生活様式、そして宗教的信念が発達したのです。英国人が(香港と中国本土を)遮断したことにより、香港は中国共産党による反知性的破壊を免れてきました。

香港に文化大革命の波は及ばず、私たちは理性と道徳に基づく社会を残すことができました。一方で中国には言論の自由がなく、社会は恐怖と服従にのみ基づいています。これは文化的な価値観の問題であり、文明の問題なのです。

いまなお中国は閉鎖的で、権威主義的な社会であり、多くの人民は政治権力に服従を強いられています。そして歴史的にも、地理的にも、文化的にも、香港は「中国」とは全く異なる存在です。

悲しむべきことは、私たちは中国によって急速に併合され、破壊されているということなのです。香港独立の叫びは、植民地支配に対する抵抗に他なりません。それは、解放を求める倫理的な訴えであり、自己の存続を賭けた政治的な叫びです。

かつて英国の植民地支配を受け、それがいまでは中国にとって代わっただけです。私たちが、私たち自身の未来を決定する、国民としての権利は一体どこにあるというのでしょうか?

中国政府は何を恐れているのか

政府がわれわれ香港民族党の活動を封殺しようとすることは、驚くべきことではありません。私たちは立候補を禁止され、あらゆる活動が監視され、停止させられようとしています。

もとより政府は、私たち香港人の自由を認める気など全くありません。犠牲者となったのは私たちが初めてではありませんし、これ以降も犠牲者は出ることでしょう。

警察当局は、わが党の活動を禁止すべき証拠として、親切にも700ページに及ぶ文書をまとめてくれました。私たちはここに来るまでに、その文書のスキャンデータをアップしておいたので、皆さんにはご覧いただいたのではないでしょうか。

もし読まれたなら、笑わずにはいられなかったことでしょう。なぜならその数百ページの「証拠」は、大半が私たちのfacebookのスクリーンショットでしかなかったからです!私たちのインターネット上の文章や、私たちがラジオで発言したことをもって「国家秩序への脅威である」と政府高官が断ずるなど、馬鹿げています。

いったい何を恐れているのでしょうね!

中国による植民地支配

私たちのこれまでの活動と、わが党と私自身は、国際人権法によって保護されています。

香港政府が用いてきた法律や社会規範は、確かに英国植民地時代の遺制ですが、現状よりは遥かにマシでした!中国人の支配者たちは隠そうとしていません。そう、香港を植民地化したことを。そう、香港の自由は見せかけに過ぎなくなったのだということを。

もし「一国二制度」という仕組みがまともに機能していたならば、こんなことにはならなかったでしょう。結局彼らが示したのは、「一つの帝国、一つの体制」しか許さないということです。

香港の「高度の自治」を明記した1984年の「中英共同宣言」に対する中国の背信行為について、英国は行動を起こすべきです。中国の残虐行為に立ち向かうことは、英国の名誉と民主主義に関わる、避けられない義務なのです。香港人の自由と人権は間も無く消滅します。そのあと気付いても、手遅れです。

国際社会は中国を制裁せよ

これまで見てきたように、いまや香港の独自性は失われようとしています。私たちが持っていた西洋的価値観は、中国共産党のイデオロギーに置き換えられてしまいました。

香港政府は、香港市民の利益ではなく、北京政府の利益のみを追求しています。世界中の国と地域はこのことを理解し、行動すべきです。

特に米国は「米国−香港政策法」(※)の内容を見直すとともに、私たちの人権を侵害する香港当局に対する制裁を開始すべきです。これは極めて倫理的な問題なのです。

(※)「米国−香港政策法」とは、米国政府による香港の取り扱いを定めた法律で、香港返還時に制定された。

もし米国が対中経済制裁の範囲を香港にまで拡大すれば、中国は深刻なダメージを受けることになるでしょう。なぜなら中国人の多くが、ここ香港に資本を置いているからです。米国が経済的に中国に打撃を与えるためには、「米国−香港政策法」を見直さないという選択肢は無いでしょう。

われわれ香港民族党は、国際社会が米国同様に、中国の覇権主義による脅威を客観的に見つめ直すことを望みます。もしあなたの国がまだそれほど痛みを味わっていないとしても、中国に直面している私たちに残された時間は多くありません。

香港はいま倫理的な危機に直面しており、より深刻な人道的問題にまで達しようとしています。速やかな、国際社会からの支援が必要です。私、アンディ・チャンは、香港民族党の党首としてではなく、生き残っている一人の香港人としてここにやって来ました。(了)

【翻訳編集】選報日本

[clink url=”https://www.sejp.net/archives/2403″]
[clink url=”https://www.sejp.net/archives/2364″]
[clink url=”https://www.sejp.net/archives/767″]

タイトルとURLをコピーしました