明治維新150周年を記念して、佐賀県では「肥前さが幕末維新博覧会」が開催されている(平成30年3月17日から平成31年1月14日まで)。歴史ファンとしては行かねばなるまい、という訳で行って来た。
博覧会と聞くと「ハコモノ」をイメージしてしまうのだが、「さが維新博」では全ての会場が既存の建物を活用している。
メイン会場である「幕末維新記念館」は公共の体育館を使っているし、藩校「弘道館」を再現した「リアル弘道館」は古民家、武士道の書『葉隠』(山本常朝)について学べる「葉隠みらい館」はかつて銀行だった建物を利用しているのだ。

建物じたいはどれも古いのだが、展示内容は充実している。特に「幕末維新記念館」は最新式のデジタルサイネージやプロジェクションマッピング、360度サラウンドを駆使し、明治維新における肥前佐賀藩の活躍を体感できるようになっている。
幕末維新といえば、薩摩藩や長州藩がクローズアップされることが多い。後に続くのは土佐藩くらいで、佐賀藩はどちらかというと地味な存在だ。しかし、佐賀藩(鍋島家)は諸藩に先駆けて反射炉を設置し、西洋式の大砲を数多く鋳造するなど、まさに代表的な「雄藩」だった。
そして薩摩や長州が倒幕に傾く中、佐賀藩主・鍋島直正公は「西欧列強の侵略が迫る中、国内で争うときではない」と中立を保つ。しかし最後の最後に参戦し、佐賀藩の圧倒的な軍事力によって迅速に国内が統一された、というわけだ。
佐賀藩は明治新政府にも多くの優秀な人材を供給した。もっとも有名なのは大隈重信だが、その他にも藩校・弘道館で学んだ人材が近代日本の建設に貢献している。「リアル弘道館」では、そのような優秀な人材を育成できた秘密も垣間見ることができる。
他県人としては、展示内容が極端すぎるほど「佐賀愛」に偏っているようにも思えるのだが、これだけ郷土に誇りを持てることは良いことだ。この維新博に訪れた佐賀県の子供達はきっと素晴らしい人材に育つことだろう。