沈む船と乗客を見捨てるリーダーはいらない

仕事
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(執筆者 本山貴春)
韓国南西部、珍島沖で発生した旅客船セウォル号の沈没事故を巡り、韓国では首相が辞任するという事態に至りました。ひとつの海難事故が、体制を揺るがしています。朴槿恵大統領への批判は、東日本大震災・福島原子力災害時の菅直人首相への批判と重なるものがあります。

リーダーの仕事でもっとも重要なことは危機管理です。とくに政府のリーダーともなれば、その国の存続に関わる危機に直面するわけです。韓国のセウォル号沈没事故じたいは韓国の存続に直結する危機ではありませんが、この海難事故への対応を見て、韓国国民が大統領を信任しないことは肯けます。彼女はこの先も、リーダーとしての判断を誤ることでしょう。

さて、それよりも今回の海難事故から私たちが学ぶべきことは他にあります。それは、一隻の船は国家に見立てることができるということです。国家もまた、あの客船のように、あっという間に傾き沈むことがあります。船長や船員が判断を誤れば、乗客の多くは死んでしまうのです。

船長を政治指導者、船員を公務員、乗客を国民に例えたとき、この海難事故が韓国特有のものであると看做すことはできません。わが国もセウォル号と同じです。船長や船員が義務を放棄すれば、冷たい海に沈むのはわれわれ国民なのです。日本の将来が暗いという話をするとき、海外に移住することが合理的だという人がいます。まったくその通りです。税制の問題だけ考えても、国内に留まることは賢い選択ではありません。それを誰よりも知っているのは政治指導者であり、公務員でしょう。実際に世界には、富者の子弟ほど外国に移住する傾向のある国が存在します。

わが国の政治指導者や公務員が船を棄てて逃げ出しているという話は、幸いにもまだ耳にしていません。それは、わが国がまだ座礁していないからなのか、彼らが義務を果たそうとしているからなのかはわかりません。しかし言えることは、わが国は嵐の海を航行しているということです。もしこの船が座礁、あるいは転覆したとして、すぐ助けに来てくれる僚船はありません。

われわれ国民は船長や船員の挙動をよく監視しておく必要があります。彼らがその義務を果たすように、また義務を果たせないときは、われわれ乗客の中から、船長や船員を出さねばなりません。民主国家において、船長と船員と乗客の境目は曖昧なのです。

船は簡単に沈みます。国家もまた同じです。そんなことを考えさせられる事件でした。
最後になりましたが、未来を奪われた隣国の青年たちに、心から追悼の意を表します。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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