「連合離脱」で衝撃を与えた化学総連 なぜ離脱し、その後どうなったか

化学総連(正式名称:全国化学労働組合総連合)は平成28年5月末、春闘などで連合との窓口になっていた「日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)」との協力関係を解消した。

事実上の連合離脱であり、産別(産業別労組)が抜けるのは、平成元年の連合発足以来、初めての事態だった。この件についてはマスコミやネットを通じてそれなりの話題になったことを覚えておられる方もいるだろう。

そして平成29年の衆院選において、化学総連は自民党の支援に回るなど、保守系界隈を何かと賑わせた。この離脱劇により当時のネットの書き込みでは、「共産党なんかと組むから離れたのだろう」などの憶測をよく目にしたものである。

あたかもイデオロギーの違いのせいで離脱劇が起きたかのように見られていたが、実際どうなのだろうか?少し化学総連について調べてみることにした。

化学総連とは組合員約45,000人規模の化学製品を取り扱う関連企業に働く従業員が結集して出来た産業別労働組合であり、私が調べる限り集団的自衛権や原発問題、沖縄の基地移設問題など、保守系・革新系の意見が割れるような話題には組合としての声明は全くなく、政治色の無い団体であった。

平成29年の衆院選において化学総連は、特定政党を支持する決定を行った事実はないとする旨の声明を発表しているが、なぜ連合と民進党から離れ、事実上自民党の支援に回ったのか?

調べて分かったことは、彼らは彼らの掲げる「政策」を実現してくれそうな政党を支援したということだ。では彼らの掲げる政策とは何か?それは主に石油化学製品製造向け原料に係る税制改革(免税・還付措置)である。

平成24年度の税制改正大網に、福島原発事故による再生可能エネルギー導入促進と地球温暖化対策(エネルギー起源CO2排出抑制対策)を強化することを名目に、石油・天然ガス・石炭といったすべての化石燃料の利用に対し、環境負荷(CO2排出量)に応じて税負担が増えていく「地球温暖化対策のための税」が盛り込まれた。(この税自体は平成24年10月から段階的に平成28年4月に導入当初に予定されていた最終税率への引上げが完了している。)

このことにより石油化学製品を取り扱う企業としては、石油などの化石燃料からなる原料を調達するのに税負担が増える故に、当然ながら企業としては売り上げに響いてしまう。

化学総連にしてみても、企業の売り上げが下がってしまえばベア(ベースアップ=企業の給与全体を底上げすること)を譲歩、または最悪ベアを取りやめざるおえない状況になってしまう。

それ以降、化学総連は原料に係る免税・還付措置を各関連省庁に毎年訴えていくことになる。

しかもこの「地球温暖化対策のための税」が発表されたのは当時の民主党・野田政権なのである。化学総連にしてみたら、今まで応援してきた政党からこの様な仕打ちをされるとは思わなかったであろう。

要するに自分たちの不利益になることを旧民主党政権が断行してしまったが故に、政治的な互助関係は成り立たなくなり、政局重視の為に民進党やそれに連なる政党を応援する連合にも愛想を尽かしたのではないか。

だからこそ、自民党に期待して支援したのだろう。しかし政権が民主党から自民党に代わっても、平成29年度の税制改正において免税・還付措置の本則化については、未だ目処がついていない。

話は変わるが、連合を離脱した後の化学総連の組織内に不穏な動きが出ているのはご存じだろうか?

平成29年6月26日付の労働新聞の記事によると、住友化学労働組合(尾崎執行委員長)が化学総連を一時休会している。「単組の体力強化を図ることが理由」と述べ、そのための財政とするため、産別会費の納入も一時ストップしてもらっているという。化学総連からの脱退も、あるいは復帰も現時点で見通せていないとのことだ。

▽化学総連を休会 復帰時期みえず 住友化学労組(労働新聞)https://www.rodo.co.jp/news/14411/

さらに平成28年8月4日付の労働新聞の記事によると、(もともと連合との窓口になっていた)JEC連合がどうやら化学総連に加盟している個別の労働組合を引き抜こうと動いているらしい。

▽化学総連構成組織の勧誘へ 〝単組〟引抜き狙う JEC連合・新年度運動方針 産別機能強化もめざす(労働新聞)
https://www.rodo.co.jp/news/6085/

化学総連 加盟単組一覧

このことを考えると、化学総連は一枚岩ではないように思う。

私が知る限り、今のネット保守界隈では最近の化学総連については何も語られていない。覚悟を決めて連合から抜けた化学総連のその後の現状が危ういことを、もっとネット保守層は知るべきだ。

化学総連には、早く自らの政策に真剣に取り組んでくれる、「互助の関係」が築ける政党を見つけてもらいたいと願う。

▽化学総連の産業政策
http://www.kagaku-s.com/sangyo/

▽環境省の総合環境政策
https://www.env.go.jp/policy/tax/about.html

クロアン(ペンネーム)/平成2年生まれ。福岡県築上町在住。現在、半導体を製造する工場に作業員として勤務する。福岡県古賀市にて、外国人地方参政権に準ずると言われる「自治基本条例」の実質的な骨抜きを目的をしたロビー活動を行った。

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