日本企業が外国人留学生を「労働力」としてアテにすべきではない理由

日本へ学びにくる留学生は「労働力」なのか。もちろん、答えは否、である。しかし、現在日本では留学生を労働力と位置付けている風潮があるように思えてならない。

平成29年6月、九経連(九州経済連合会)が特区提案を含め、外国人人材活躍推進のための要望を政府に対して行った。その中で外国人留学生に関しては、就労、企業、そして資格外活動(アルバイト)・有給インターンシップについて言及がなされた。

外国人留学生の資格外活動については、自民党が平成29年5月に公表した「一億総活躍の構築に向けた提言」の中でも、マイナンバー制度を活用した外国人留学生の資格外活動の管理強化について触れられている。
 
現在、留学生の「労働時間」は、資格外活動として週28時間以内とされている。上記、九経連の要望においては、アルバイトについて、週36時間以内に延長できるよう申し入れがなされた。

ただ、果たして就労時間が8時間増えただけで、経済面での負担が軽減できるのだろうか。

これも答えは、否であろう。日本学生支援機構(JASSO)が運営する日本留学に関するポータルサイトがある。そこに大学、短大など日本の高等教育機関と併せて、日本語学習機関の学費も掲載されている(下図参照)。

<日本語教育機関の授業料等(年間:入学金、選考料含)>

米ドル
1年コース 455,277~1,094,179 4,029~9,683
1年半コース 833,827~1,678,502 7,379~14,854
2年コース 1,173,844~2,194,121 10,388~19,417

【出典:㈶日本語教育振興会(JASSOホームページ)】
 ※ホームページでは1米ドル=103円での換算であるが、本稿では直近(12月14日)の為替レート(113円)に準じて算出

では、留学生の収入源であるアルバイトの時給はどのくらいであるのか。

リクルートが運営する求人情報サイトによると、福岡県の平均時給は直近の数字で914円となっている(全国平均1,002円)。また、留学生が多く従事しているであろう「飲食/フード系」「販売系」の平均は、それぞれ下図のとおりである(12月14日現在)。

<時給ランク(福岡県)>

飲食/フード系 時給(円) 販売系 時給(円)
1位 バーテンダー 1,032 アパレル 902
2位 宅配・デリバリーピザ屋 910 店長・マネージャー 898
3位 ホールスタッフ・ラーメン屋等 883 書店・本屋・スーパー等 888
平均 841 866

【出典:タウンワーク】

ちなみに販売系に分類されている「コンビニ」は813円であり、下から数えて2番目の時給ではあるが、直近の福岡県最低賃金(789円)よりは高くなっている。
 
ある留学生がコンビニのアルバイトを週28時間行っていたとすると、時給813円として、単純計算で1週間22,764円となる。1ヶ月を4週として91,056円、1年間で1,092,672円の収入ということになる。

これが仮に週36時間へ延長になったとすると、1年間で1,404,864円となり、週28時間と比較して312,192円収入が多くなるという計算だ。

もちろん住居費、食費など諸々必要経費が発生することは言うまでもない。このことを考慮すると、彼/彼女たちの手元に残るお金は、決して多くはない。 

私の同僚にベトナム国籍の男性がいる。彼は技能実習生として3年間日本に滞在、一度帰国した後、日本語を学ぶため再度、留学生として来日した。現在は、在留資格「技術・人文・知識」を保有している。

当時、彼も日本語を学ぶ傍らアルバイトを掛け持ちしていた。現在と同じ就労時間の制限(1週間28時間)だけでは、とても学費を賄い切れなかったそうだ。

留学生は在留資格更新の際、入国管理局に銀行通帳の提示を求められる。当局が収入の多寡で、就労制限超過の有無を判断するためである。通常、給与は銀行振り込みである。しかし、上述のように在留資格更新が滞らないように、一方のアルバイト先からの給与は直接、手渡しで受取っていたということだ。
 
彼のアルバイト先に法律感覚がない、と言ってしまえばそれまでである。しかし、上記の例を見ても、留学生が掛け持ちせざるを得ない状況は想像に難くない。

やはり問題は、はるばる海を越え日本へ学びに来ながら、学費や生活費のために勉学の時間が疎かになってしまう制度自体にあるのではないか(私の同僚は決して学業を疎かにしてはいなかった。もしそうであれば、日本語能力検定試験1級(N1)は取得できていないはずである)。

このような中、新たな取り組みが生まれている。居酒屋チェーンを展開する株式会社タケノは、ベトナム人の若者たちに日本語学校の学費を貸与し、将来の就職に繋げるという事業をスタートさせた。

この「インターンシップ」を通じて、ベトナム人の若者たちは学費面での負担が軽減され、タケノにとっては将来の人材確保に繋がることにもなる。同社のような試みが増えていけば、学生としても、私の同僚や他の留学生のように、アルバイトを複数掛け持ちすることによる心身の負担を少しでも解消することができるようになるはずである。

私のように外国人技能実習生の受け入れに携わり、曲がりなりにも在留資格等、多少なりとも知識がある人間は別として、一般の人々にとってみれば、コンビニや居酒屋で働く外国籍の方々は皆「外国人」である。在留資格云々は関係なく、きっちりと対応さえしてくれれば、留学生だろうが、永住者の方だろうが何の問題もないはずだ。

仮に留学生自身が日本に来る目的を、お金を稼ぎ、母国に戻り一旗揚げるための手段と考えているのであれば、本末転倒である。そして、それを承知で受け入れている日本語学校など教育機関があるとすれば、淘汰されて然るべきである。そのような関係は留学生と機関はもちろん、彼/彼女たちの母国と日本双方にとって、あるべき姿ではない。

いずれにしても、いま我々に求められているのは、留学生は「労働力」ではないという至極当たり前の認識を持つことだ。

安部有樹(あべ・ゆうき)/昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。現在、外国人技能実習生を受け入れる管理団体に勤務するかたわら、社会的な問題解決のための提言を続けている。

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