超高齢化による介護負担増をどうすべきか?海外でも同じ課題が

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現下の人口激減社会において、介護の担い手不足に対処することが焦眉の急であることは論を俟たない。

現役世代が高齢者を支える際、以前は複数で支える「神輿型」と例えられていた。しかし近年は一人の現役世代が一人の高齢者を支える「肩車型」「重量挙げ型」と形容されるようになった。

日本介護福祉士養成施設協会の数字(平成29年3月末時点)によると、介護福祉士の登録数は1,503,574人となっている。

2025年には介護職が約40万人不足するという「限りなく現実的な」推計もある。国も「介護離職ゼロ」を掲げ、給与面含め待遇改善など策を講じているが、それでも当面の人材不足は避けて通れない模様だ。

現在、日本はEPA(経済連携協定)に基づきインドネシア、フィリピン、ベトナムから看護師「候補者」、介護福祉士「候補者」の受け入れを行っている。

彼・彼女たちは来日後、日本語等研修、受け入れ施設における就労・研修、その後の国家試験受験合格を経て、はじめて正式に看護師、介護福祉士になれるという仕組みである。 

「国内労働市場への影響を考慮して」受け入れ最大人数が設定されているものの(看護師200人/年、介護福祉士300人/年)、3ヶ国からの入国者数は近年増加傾向にある。

候補者それぞれの、試験における直近の合格率は、介護福祉士候補者が49.8%(第29回介護福祉士国家試験)、看護師候補者が14.5%(第106回看護師国家試験)であり、合格率も上昇傾向にある。

上記受け入れについては、公式の見解として「労働力不足への対応」ではなく、「二国間の経済活動連携強化の観点」から、「特例的に」行われている。そのような中、技能実習制度にも対象職種として「介護」が追加されることになった。

これまで技能実習制度で受け入れられていた職は、主に製造、縫製、建設等、対人相手ではなかった。だが介護はまさに眼前の「人間」に対処する職業であり、既存の職種とは、その性質を異にする。このことから、実習生を受け入れる団体、そして実際に働く企業においても、受け入れにおいて慎重にならざるを得ないのではないだろうか。

高齢化への対処を求められているのは、何も日本だけではない。

例えばシンガポールは1994年に「両親扶養法」を制定し、60歳以の自活できない親の扶養をその子供に義務付けた。シンガポール人口・人材局作成の資料(2011年11月作成)によると、2030年には外国人家事労働者の数が30万人に達する見込みであるという。

同国も急速に進む高齢化やそれに伴い増え続ける医療費の対処に苦慮している。しかし、それでも社会福祉に対する根本的な考え方は国民の「自助努力」であるようだ。

また中国では子どもが両親を扶養することが憲法に規定されている。儒教では「礼」に基づき長幼の序が規定され、『論語』でも「親に対する孝」が重視されており、伝統的な儒教思想の名残りであると言えよう。

一方、韓国のように、親の扶養を家族の責任と考える国民の割合が激減しているという分析結果もあり(2016年5月/韓国保険社会研究院)、アジア地域とは言え、その価値観は一様ではないこともまた事実であろう。

物事を行う際、「義務」という言葉を持ち出すと、「押し付け」と捉えられる向きもあるかもしれない。実際、シンガポールでは同法制定後、親子間で訴訟問題に発展する事例も少なくないということだ。

ある教授が、「現代は『婚活(結婚)』『終活(葬儀)』など、従来はその時期がくるのを待っておけばよかった人生の通過儀礼が、努力しなければ為し得なくなった」と指摘していた。これは家族間の繋がりが希薄になったことが、一因として挙げられるのではないだろうか。

わが国においても、家族が、地域社会と国家を構成する重要な基礎的単位であるという価値観を、幼少時に於ける教育の中で教えていくことが重要だ。

『平成29年版高齢社会白書(内閣府)』によると、「介護が必要になった場合に(介護を)受けたい場所」として、「自宅」を希望する割合が最も多く、「最後を迎えたい場所」としても「自宅」を挙げる割合が半数を超えている。

介護疲れによる家族間の悲惨な事件が後を絶たない。今後は、上記のEPAや技能実習制度による海外からの介護人材を有効活用することでバランスを取り、介護の担い手不足に対処することが、好むと好まざるとに関わらず必要になってくるだろう。

安部有樹(あべ・ゆうき)昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。学習塾、技能実習生受入団体を経て、現在は民間の人材育成会社に勤務。これまでの経験を活かし、「在日外国人との共生」や「若い世代の教育」について提言を続けている。

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