【衆院選2021】ベーシックインカムを掲げている政党

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遅くとも令和3年11月には総選挙(衆院議員選挙)が実施される。主要政党の内2つの政党が、衆院選の公約に「ベーシックインカム(BI)」を掲げている。

以下、各党のBIに関する公約の中身を検証してみたい。

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国民民主党

日本で初めてBIを公約に掲げたのは「希望の党」だが、国民民主党は希望の党の流れを汲んでいる。急遽結党された希望の党が殆ど党内議論を経ずに政策を出したのに対し、国民民主党は充分な準備の上に打ち出している。

総選挙に向けた国民民主党の「政策5本柱」、その2本目の柱が「給料が上がる経済を実現」となっており、その中に「日本型ベーシックインカム実現」が謳われている。

以下に同党公式サイトから引用する。

給付と所得税減税を組み合わせた新制度「給付付き税額控除」を導入し、尊厳ある生活を支える基礎的所得を保障します。
マイナンバーと銀行口座をひも付けて、必要な手当や給付金が申請不要で迅速かつ自動的に振り込まれる「プッシュ型支援」を実現します。
「給付付き税額控除」と「プッシュ型支援」で「日本型ベーシック・インカム(仮称)」を創設します。

国民民主党

この文面から想像するに、政府が銀行を通じて国民の収入を把握し、収入に応じて自動的に課税または給付を行う仕組みを「日本型ベーシックインカム」と仮称しているようだ。

確かに「給付付き税額控除」は結果的にBIと同じ効果をもたらすものだが、厳密にはBIとは異なる。BIは各人の所得に関わらず、全国民に同額を給付する制度だ。

国民民主党は他にも、「求職者ベーシック・インカム制度(仮称)」の構築を掲げている。再び同党公式サイトから引用する。

雇用のセーフティネット機能を高めつつ、成長分野への人材移動と集積を進めるため、職業訓練と生活支援給付を組み合わせた求職者支援制度を拡充した「求職者ベーシック・インカム制度(仮称)」を構築します。

国民民主党

詳細は不明だが、現在の雇用保険における失業給付や求職者支援をシンプルにして、給付を受けやすくする改革を想定しているようだ。もっとも、「求職者(失業者)」を対象にしている時点でBIとは呼べないし、呼ぶべきではない。

日本維新の会

日本維新の会は衆院選に向けて「政策提言 維新八策2021」を発表した。その内容は339項目もある。「維新八策」は、坂本龍馬の「船中八策」になぞらえたものだ。

以下、同党の公式サイトから該当箇所を引用する。

「チャレンジのためのセーフティネット」構築に向けて、給付付き税額控除またはベーシックインカムを基軸とした再分配の最適化・統合化を本格的に検討し、年金や生活保護等を含めた社会保障全体の改革を推進します。(136)

日本維新の会

最低所得保障制度(給付付き税額控除またはベーシックインカム)の導入に伴い在職老齢年金制度等を見直し、高齢者の労働意欲を削がないような社会づくりを目指します。(139)

日本維新の会

「負の所得税」同様の考え方を実現するため、給付付き税額控除あるいはベーシックインカムの導入を検討し、就労意欲の向上と雇用の流動化を図り、労働市場全体の生産性と賃金水準の向上を実現します。(142)

日本維新の会

維新の会は「給付付き税額控除」とBIの違いを明確に理解していることがわかる。「負の所得税」という表現もあるが、考え方としては「給付付き税額控除」と同じだ。

同党は年金や生活保護などの社会保障制度全体を見直す上で、BIの必要性を強調している。これらを「最適化・統合化」することで、日本経済に成長を促そうという考え方だ。

給付付き税額控除とは?

日経新聞の解説によると、

税金から一定額を控除する減税で、課税額より控除額が大きいときにはその分を現金で給付する措置。例えば、納税額が10万円の人に15万円の給付付き税額控除を実施する場合には、差額の5万円が現金支給される。

日本経済新聞

…というのが給付付き税額控除の考え方だ。すでに英国やカナダで実施されているという。

国民民主党や日本維新の会が、シンプルなBIではなく、「給付付き税額控除」を併記している背景には、「富裕層にも現金給付を行うことには国民の理解を得難い」という懸念があるのではないだろうか。

しかし「給付付き税額控除」を実現するには、国民の所得を政府が正確に把握する必要がある上に、対象者によって給付金額が毎月変動するため、行政コストが膨大になる懸念もある。

BIの設計思想には行政を含む「管理コスト」「マンパワー」の削減がある。この点について給付付き税額控除がBIと同等の効果をもたらせるのであれば良いが、実際のところは難しいのではないか。

というのも、個人が収入を得る方法は今後多様化していくことが考えられるし、個人事業主などであれば「経費」を収入から差し引く手続きが発生する。その際の「還付(これは現在も行われている)」が、「給付付き税額控除」導入後は一層複雑になりそうだ。

個人的には「給付付き税額控除」よりもBIが良いと考えているが、今回2つの主要政党がBIを公約に掲げたことについては大いに歓迎したい。

これを機に、与党や野党第一党内でもBIについて前向きな議論が開始されることを期待する。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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