夏の夜は三島由紀夫のホラー小説で 異色の怪奇掌編『仲間』とは

第12回を迎える三島由紀夫読詠会ですが、今回は久しぶりに短編・掌編小説を取り上げます。

三島由紀夫の小説の文章の美しい響きを味わってみようと始めた読詠会ですが、やはり三島作品の構成自体が持つ堅牢な美しさも味わってみたくなります。時に応じて行う短編・掌編の読詠会はそのような意図です。

今回取り上げるのは、『真夏の死』『独楽』『仲間』の三篇ですが、この中で『真夏の死』は最も有名で、発表当初から高く評価された作品であり、また構成もこの中では大きいものです。

そして、『独楽』は『蘭陵王』と同じ頃、最晩年の三島の心境を率直に投影したものとして、三島由紀夫ファンの間では有名な作品です。

今回、私が特に紹介したい作品は、『仲間』です。

これはごく短い掌編小説であり、10分もかからずに読めてしまいます。そして、その内容は、怪談系、ホラー系の幻想小説で、三島作品の中では際立った異色作です。

内容は、大きな肩衣つきの古めかしい外套を身にまとい、霧深いロンドンの街を〈気に入った家〉を探して彷徨(さまよ)う父子が、ある日出会った〈あの人〉の住む家で〈仲間〉になるという、ただそれだけの物語なのですが、様々な解釈を触発する不可思議な幻想的作風であり、小品ながらもこの作品を高く評価し、激賞する作家や文芸評論家も少なくないのです。

例えば、小説家の森内俊雄は、『仲間』を三島作品のベストワンだとし、以下のように高評価しています。

モーツァルトはグレゴリウス聖歌たった一曲と自分の全集を交換してもよい、と断言しました。三島由紀夫の全生涯の文業と、このわずか十枚たらずの短篇についても同じことが言えると思います。三島が嫌悪した太宰治に「駈込み訴へ」、氏が愛した坂口安吾に「桜の森の満開の下」があるように、「仲間」は白鳥の歌です。ワイルドの「幸福な王子」に匹敵する傑作です。
森内俊雄「アンケート――三島由紀夫と私」(Wikipedia)

また、文芸評論家の加藤典洋は、雑誌の初出掲載で読んだ時に、「つくづく三島というのは天才かもしれない」と思った作品が「仲間」だとして、その時に雑誌からこの作品の頁を引きちぎってポケットに入れ、雪降る東北の町の中、何日も持ち歩いて読み返したと述懐しながら、「仲間」を三島作品のベストワンに選んでいます。

あの『金閣寺』や『豊饒の海』を抑えて、最高傑作とまで言い切れるほどの魅力が、この小品のどこにあるのか、共に詠み語り合ってみませんか。

夏の夜は、三島のホラーで涼みましょう。ふるっての参加、お待ち申し上げております。

三島由紀夫読詠会@福岡『真夏の死』他2題

日時:令和2年7月23日(木・祝)19:00-20:30
会場:福岡市(詳細はお問い合わせください)
会費:無料
詳細:reimeisha.jp

石原志乃武(いしはら・しのぶ)/昭和34年生、福岡在住。心育研究家。現在の知識偏重の教育に警鐘を鳴らし、心を育てる教育(心育)の確立を目指す。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会幹事。福岡黎明社会員。

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