【夫婦時事解説】香港に最大の危機迫る!5月28日に「一国二制度」廃止へ

国際
 香港の治安部門トップである李家超(ジョン・リー)保安局長は5月25日、中国による国家安全法導入計画を巡り香港で抗議デモが起きたことを受け、香港内で「テロリズム」が拡大しているとの認識を示した。写真は「香港独立」と書かれた旗を掲げる抗議デモ参加者。24日撮影(2020年 ロイター/Tyrone Siu)
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人気Youtuberランダム・ヨーコさんと、そのご主人・石井英俊さん(国際戦略家)がお送りする人気番組「夫婦時事解説」の一部をテキスト化してお送りします!ぜひ動画もご覧ください。

YOKO
今日は香港についてお話ししていきたいと思います。
石井英俊
この収録は5月24日で、いま現在も行われている香港デモのライブを見ていたところですが、相当な人数の参加者がいましたし、警察側からは催涙弾も出ているようです。
YOKO
(デモ参加者は)雨傘で身を守りながら戦っています。

催涙弾を雨傘で防ぐ香港市民(CNN)

石井英俊
香港には新型コロナウイルスを理由とした集会の規制があって、現在10人以上集まること自体が禁止されています。もっとコロナが厳しい時は5人以上集まることが禁止でしたが、香港は殆どコロナウイルスを抑え込んでいますので、本来なら解除して良いんですけれど、政治的な意図が明らかにあるんでしょう。勇敢にも違反になると分かっていて、若者たちがいま街頭に出ているという状況です。これは、全国人民代表大会(全人代)で制定されようとしている「国家安全法」への反対デモです。私たちは中国全人代が成立させようとしている「国家安全法」について強く抗議し、反対を表明したいと思います。いま何が起きているかということを日本の皆さんに説明しないといけないと考えています。

石井英俊
今日の産経新聞の見出しには「香港の自由 大幅制限 国家安全法 中国 デモなど監視」と出ています。

中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で香港に国家安全法を導入する議案が審議・可決される見通しとなり、香港の「一国二制度」が重大な岐路に立たされている。これまで認められてきた表現や集会の自由などが大幅に制限されるのは避けられず、国際経済都市・香港を支えてきた法治システムも危機に瀕(ひん)している。香港紙は「一国二制度の終焉に向けたカウントダウン」が始まったと報じている。
産経新聞

石井英俊
「一国二制度の終焉に向かってカウントダウンが始まったと報じられている」ということなんですけど、結論から先に言うと、一国二制度が形の上でも実質的にも終わるというのが、全人代で国家安全法ができるということだろうと。カウントダウンではありません。実は一国二制度の終焉へ向けたカウントダウンは1997年から始まっているんです。そこから50年。つまり、あと27年で一国二制度は終わるんです。
YOKO
カウントダウンが早まっただけ。
石井英俊
「国家安全法」についてはずっと前から私は言っているんです。
YOKO
2017年くらいからかな。
石井英俊
いずれこの問題が出てくると。そもそも香港基本法という法律(香港における憲法にあたるもの)があって、この23条に「国家安全法を香港政府は作らなければならない」と最初から書いてあるんですよ。これは治安を守り、デモを取り締まるという法律です。これを2003年に香港政府が一度作ろうとしているんです。その時50万人のデモが起きて、とても反対が凄いからっていうことで、一回廃案になったんです。

香港基本法第23条では、中国政府に対する反逆、分離、扇動、転覆を禁止する内容の国家安全法を制定することが定められている。香港の立法会は、長年、同法の導入を試みてきたが、表現の自由や報道の自由などの権利を脅かすものだとして市民の反対は強く、2003年に国家保安法の施行が試みられた際には50万人が参加する大規模なデモも発生した。
(Wikipedia)

石井英俊
去年も「逃亡犯条例」を作ろうとしたら100〜200万人のデモになって撤回した。あれと同じことが2003年にも「国家安全法」に関してあったんです。香港政府はまた必ずやる。だって基本法の23条に書いてあるから、やらないと行けないんです。しかも、いまのキャリー・ラム(林鄭月娥)行政長官の任期中に必ずやるだろう、ということは当初から想定されていました。しかし、まさか香港の立法会ではなくて、中国本体の全人代でこの法律を作るとは。最初僕は意味がわかりませんでした。「それ何の意味があるの?」と思ったんですよ。だって一国二制度だから。
YOKO
その前提だからね。中国とは自治が違う。
石井英俊
香港には香港の条例(法律)ができて、香港の警察が取り締まる。一国二制度とはそういうことなので。「あれ?国家安全法を全人代で作るっていうことは…」
YOKO
なんで(香港が)中国の一部になってるんだ。
石井英俊
ということは一国二制度じゃ無くなるということなんですよね。語弊があるといけないんですけど、もちろん香港は人権を弾圧されて大変な目に遭っていますよね。だけど、一応は一国二制度なんです。だから逃亡犯条例も、香港の立法会で審議している。デモの弾圧もあるし、不当な逮捕・拘束もいっぱいある。問題はあるけど一応、一国二制度なんです。
YOKO
形式上は。
石井英俊
中国の全人代が、香港の立法会を無視していきなり香港の治安を取り締まる「国家安全法」を作るということは、形式上も一国二制度では無くなるということなんです。ここが今回の一番のポイントだと思うんです。一国二制度の終焉なんです。
YOKO
カウントダウンじゃなくて。
石井英俊
この法律ができた瞬間に「一国二制度ではない」ということ。それは中国政府自らそう選択したということなんです。
YOKO
うん。
石井英俊
イギリスが中国に香港を「返した」1984年に中英共同宣言が出ているんですが、そこで「50年間の一国二制度」を中国とイギリスの間で約束した。国際的に約束したわけですよ。香港市民に対してもね。

1984年12月19日に中国の国務院総理趙紫陽とイギリスの首相マーガレット・サッチャーが北京で署名。両国が1985年5月27日に批准公文を交換し、国際連合事務局で登録したことで声明は発効。声明によると、中国は一国二制度をもとに、中国の社会主義を香港で実施せず、香港の資本主義の制度は50年間維持されるとした。これらの方針は後の香港特別行政区基本法に引き継がれた。
(Wikipedia)

石井英俊
それを中国政府の側が、自ら公式に破るということなので、これは国際的にも重大な意味を持つことになると思います。現時点で、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドがはっきりと、この中国の動きに対して抗議を表明しているという状況です。しかし残念ながら、5月28日には可決成立する予定になっています。今日この瞬間も香港の若者たちが激しいデモを必死に戦っているんですが、残念ながら香港の立法会での審議ではなくて、北京の全人代でやるので、これは止める方法が無いんですね。
YOKO
意思表示はしているけれど…
石井英俊
現実には北京でやっているので、どうしようもないというのが実態なんですね。おそらく28日に可決された後、全人代の常務委員会で細かい法律の内容が決められて、早ければ8月中に公布・施行されることになるだろう、と。これ恐ろしいのは、今までのチベットやウイグルと同じ状況になるということなんです。
YOKO
中国が直接やってきて…
石井英俊
中国への国家反逆罪とか、国家分裂扇動罪とか、そういう法律がバンバン適用されるようになる。わかりやすく言えば、われわれの仲間としてこれまで活動してきた陳浩天は、「香港の独立を訴える」初めての政党を作って活動してきたわけですが、これはあくまで言論活動なので、いままでは言論の自由があるから言うことはできた。今後はどうなるかって言うと、国家分裂扇動罪にあたるわけだから、死刑です。現実的にそうなんです。今後それを口にすれば死刑になると。
YOKO
海外勢力との協力も…
石井英俊
去年のG20大阪サミットに際して、陳浩天本人も来ましたし、香港の約100人の若い人が、私の企画した習近平への抗議デモに来てくれたんですよね。これは外国勢力との協力による中国への反逆、死刑です。これはとてつもなく恐ろしい話なんです。

石井英俊氏と陳浩天氏ら「J20」による街頭アピール/2019年・大阪)

石井英俊
例えば去年アメリカで香港人権法ができました。これは多くの香港人がロビー活動を行って働きかけてきたからできた。アメリカの国会議員がいきなり香港人を無視して頭の中で考えたわけではないんです。しかし働きかけること自体が、これも犯罪だ、死刑だということになる。この法律が数日後にできる。私ももちろん多くの友人が香港にいるわけですけど、今後「石井と友人である」という時点で下手したらそのまま死刑になるという問題になってくるので、これは本当に重大な問題。言葉にならない、厳しい状況に、急になってしまいました。繰り返し言いますけど、「国家安全法」というものがいずれ来るといことは分かっていたことです。ただ、香港立法会でやる話だから、去年のように議論になってデモが起こって、デモに激しい弾圧が起きて犠牲者が出て、その数ヶ月の攻防戦の中でどうなるかと思っていたのですが。
YOKO
こういう手に出てくるとは。
石井英俊
いきなり数日後に可決とは。発表されて一週間という、もう手の打ちようもない。
YOKO
急過ぎてね…
石井英俊
しかも北京でやるんでどうしようもないんですよね。急に厳しい状態に追い込まれてしまったということを報告せざるを得ないですね。今までも説明してきたのですが、中国には5つの独立問題(五独)があり、3つのカテゴリーに分かれています。先ず、中国の完全な植民地支配下にあるチベット・ウイグル・南モンゴル。一方、その反対側に台湾があって、いちおう独立国家です。但し、台湾は国際的な承認を受けていないし、中国からも圧力を受け続けています。その真ん中あたりに香港があって、一国二制度でいちおう言論の自由はある。しかしすでに中国の領土内で、死刑執行(一国二制度廃止)が27年後に決まっている、片足を棺桶に突っ込んでいる状態。この3つのカテゴリーだったわけですが、香港がチベット・ウイグル・南モンゴルの側と一緒になるということです。いまウイグル人は強制収容所に次々と入れられているわけですが、香港でも同じことが…
YOKO
起きる。
石井英俊
非常に大変な状況になってしまいました。『フリーダム・インテリジェンス・ネットワーク(FIN)』という私たちの番組でも英語で発信しており、陳浩天のインタビューで中国の新しい戦略について話をしているんですけど、中国が香港の直接支配に切り替えてきたというのは4月の時点で出てきていて、香港基本法の第22条に「中国政府の香港出先機関は香港の内政に干渉できない」と書いてあった解釈を変更して、干渉できるようになったんです。その直前には中央政府駐香港連絡弁公室(香港中連弁)が香港政府に「国家安全条例制定を急げ」と命令を出して、直接的な介入がこれからきつくなるだろうな、とは思っていましたが…
YOKO
いろいろ人事が変わって、香港政府も出先機関も親中派が占めるようになってきていて、何か嫌な方向に向かっている感はあったんですけど。
石井英俊
まさか全人代がこういう方向に出るとは思わなかった。
YOKO
世界が(コロナで)弱っている間にね。
石井英俊
去年の逃亡犯条例の時は日本のネット世論も香港を一生懸命応援していたと思うんですよね。だけど今は全然話題になっていないと思うんです。たぶんわからないからだと思うんです。
YOKO
本質がね。
石井英俊
これは一国二制度が文字通り終わって、チベットやウイグルと全く同じ、完全植民地状態になることを意味する…
YOKO
いま切り替えポイントにあるという。
石井英俊
それが28日の可決という、いきなり目の前に来てしまったという重大事態であるということは皆さんにお伝えしないといけません。ただ唯一(阻む可能性が)あるのがアメリカ。アメリカに頼るしかないという状態。トランプ大統領はこの法律に関して、「中身の詳細は把握していないが、この法律を強行すれば重大な結果を招く」ということをすでに発言しています。とは言え、いきなりアメリカが武力攻撃できるわけじゃないので、おそらく経済制裁などになってくるとは思うのですが…
YOKO
単発的な何かができるかというと…
石井英俊
28日に向けて何かできるかというと、ちょっと厳しいと思いますね。だから何も良い報告ができないんですけど。われわれも(香港に)多くの仲間たちがいますが、関係を考え直さないといけない。命に関わる問題になりますから。唯一できることは、国際的な声を挙げていくということになりますので、日本からも…
YOKO
そもそも香港は選択肢が二つしかなくて、完全に中国になるか、もしくは独立するか。というところで香港の若者が戦っているということ。あともう一つ大事なのは、これは香港だけの問題じゃなくて、中国による世界への影響の話だから、日本も当事者であると。
石井英俊
その当事者である日本は、数日前に菅官房長官が「習近平の国賓招待は、日程調整をいま行っている」と。要するに予定通りやりますと、わざわざ表明しています。本当に目も当てられないような状態。
YOKO
もう、あり得ないよ。
石井英俊
残念でしょうがないというか、もう、酷すぎる状態で、われわれとしては強く抗議しておきます。

石井英俊(いしい・ひでとし)国際戦略家。自由インド太平洋連盟副会長。九州大学卒業後、塾講師、経済団体職員、選挙出馬を経て、現在、アジア問題専門家として情報発信している。平成29年10月、月刊「正論」に『香港にも慰安婦像が建っている理由』発表。

randomyoko(ランダム・ヨーコ)/日米戦略アドバイザー。YouTube NextUp賞受賞。トランプ大統領の当選を予測したことで一躍有名になり、メディアにも取り上げられた。「正論」「JAPANISM」などの言論誌にも論文が掲載されている。公式ファンクラブ(camp-fire.jp)では毎月限定動画を視聴できる。

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