【参院選2019】有権者の関心低く増税確定、れ新・N国が躍進

政治
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令和新時代、最初の国政選挙が終わった。投票率は48.8%で、戦後2番目の低投票率だった。消費税増税を公約として掲げる与党が過半数を制し、今年10月に予定されている10%への増税は避けられない情勢となった。

また自民・公明・維新など、いわゆる改憲勢力が改選前の「3分の2」を割り込み、安倍首相の掲げる憲法改正は困難になった。首相は国民民主党に協力を呼びかけることを表明し、改憲への姿勢は崩さなかった。

争点化するかに見えた「老後2千万円不足問題」に関する議論は低調で、立憲民主党などの野党勢力は政権に批判的な世論喚起に失敗した。1人区での野党統一も含め、勢力拡大には繋がらなかった。

自民党保守系候補に明暗

前回の衆院選を最後に消滅した「日本のこころ」に類する保守政党が存在しない中、自民党全国比例に複数の保守系候補が立ち、保守票の帰趨が注目されていた。

6年前の参院選に「みんなの党」から宮城県選挙区で初当選し、「次世代の党」幹事長などを務めた和田政宗氏(現在は自民党広報副本部長)は約29万票を獲得して上位当選。

元陸上自衛隊一等陸佐で「ヒゲの隊長」の愛称を持つ佐藤正久氏も約24万票で3回目の当選を果たした。

日本最大の保守団体「日本会議」の国会議員懇談会幹事長で首相補佐官の衛藤晟一氏は71歳と自民党定年70歳を越えていたが特例公認され、約15万票でかろうじて議席を守った。

衆議院議員(日本新党)、横浜市長などの経歴を持つ中田宏氏は、盟友である山田宏参院議員(自民党)などの支援を受けたが約11万票と僅かに当選ラインに及ばず、次々点で落選した。

ミニ政党「れ新」「N国」が政党要件を獲得

確認団体として出馬した「れいわ新選組」と「NHKから国民を守る党」が政党要件を獲得。既成政党の流れを組まない政治団体が政党要件を獲得したのは、平成6年の政党助成法成立後初めて。

れいわ新選組(山本太郎代表)は比例で約228万票(得票率4.6%)、2議席を獲得。山本太郎前参院議員も個人名で約99万票を獲得したが、特定枠に2名を指名したため落選した。次期衆院選で「100名以上」の候補者を擁立するとしている。

同党はインターネットで募金を呼びかけて4億円以上の選挙資金を集めるなど、話題を集めていた。「消費税廃止」「最低賃金1500円」などの政策を掲げるものの、憲法や安保問題に関する左翼色は抑制的だった。

いまのところ地方組織などは無いものの、一部の野党統一無所属陣営と共同で街頭演説を行なっていることなどから、なんらかの組織的支援もあったものと思われる。

NHK から国民を守る党(立花孝志代表)は比例で約99万票(得票率2.0%)、1議席を獲得。現職国会議員の存在しない政治団体が政党要件を獲得したのは初めて。当選者は約13万票の個人票を獲得した立花孝志元葛飾区議。

同党は今年4月の統一地方選で関東及び関西に26名の当選者を出し、話題を呼んでいた(内5名が後に除名処分となっている)。

主な政策は「NHK放送のスクランブル化」で、受信料支払い義務の撤廃を訴えている。政見放送でNHKのスキャンダルを暴露するなどし、SNSで大きく拡散された。選挙区候補者も「突然歌い出す」「無言を貫く」など奇抜な政見放送を行なっていた。

「れいわ新選組」「NHK から国民を守る党」の政党要件獲得は政界に激震をもたらした。次回以降の国政選挙において両党はマスメディアにおいて「公平な扱い」を受ける。インターネットに限らず、急速に知名度を高めることが予想される。

野党統一無所属候補の帰趨は?

県選挙区1人区の野党統一無所属候補18名のうち、8名が激戦を制した。当選者は以下の通り。(→党名は予想所属会派)

  • 岩手県選挙区・横沢たかのり(元パラリンピック選手)→国民民主党
  • 秋田県選挙区・てらたしずか(元国会議員秘書)→立憲民主党
  • 山形県選挙区・はが道也(元山形放送アナウンサー)→国民民主党
  • 新潟県選挙区・うち越さくら(弁護士)→立憲民主党
  • 滋賀県選挙区・かだ由紀子(元滋賀県知事)→立憲または国民
  • 愛媛県選挙区・ながえ孝子(元衆議院議員、元アナウンサー)→国民民主党
  • 大分県選挙区・あだちきよし(観光会社代表取締役)→立憲または国民
  • 沖縄県選挙区・タカラ鉄美(琉球大学名誉教授、オール沖縄会議共同代表)→沖縄の風
  • 他、広島県選挙区(2人区)では国民民主党元県連代表の森本真治が無所属ながら立憲・国民・社民の推薦を受けて当選した。

    上記9名の当選者が実際にどの会派に所属するのかが注目される。それによって各党の国会における勢力が変わるためだ。非改選の無所属議員も8名おり、会派入りしない可能性もある。

    現在の参院会派所属議員数は以下の通り(今回の当選者含む)。

  • 自由民主党:113名
  • 公明党:28名
  • 立憲民主党:32名
  • 国民民主党:21名
  • 日本維新の会:16名
  • 日本共産党:13名
  • 社会民主党:2名
  • れいわ新選組:2名
  • NHKから国民を守る党:1名
  • 無所属:17名
  • 極左政党は勢力維持

    野党共闘を積極的に牽引した日本共産党は改選8議席から7議席へと微減。全国比例は前回参院選の約600万票(得票率10.74%)から約450万票(得票率9.0%)へ150万票ほど減らした。

    政党要件喪失が危ぶまれた社会民主党は前回参院選の約150万票(得票率2.7%)から約100万票(得票率2.1%)へ50万票ほど減らしたものの、議席数は維持した。得票率もかろうじて政党要件を保持している。

    運動員の高齢化などが指摘される極左勢力であるが、未だ組織力は健在であると見るべきだろう。

    今後の展望

    今後のスケジュールとしては10月の消費税増税、11月の大嘗祭、令和2年には7月から9月にかけて東京オリンピック・パラリンピックが予定されている。衆議院議員の任期は令和3年10月まであるが、来年中に実施される可能性が高い。

    今回、自公与党が参院の過半数を維持したことで安倍首相の自民党総裁任期延長も取り沙汰されている。しかし経済政策によって高支持率を維持してきた安倍政権は、消費税増税によって失速するだろう。

    今年年末にかけて安倍政権のレイムダック化、そしてポスト安倍をめぐる自民党内の政争が激化するものと思われる。また、立憲・国民・共産などの野党側が新党・れいわ新選組を取り込みにかかるか否かも要注目だ。

    『日本独立論: われらはいかにして戦うべきか? 』(独立社デジタル選書)
    主な内容:なぜ私はネット選挙を解禁したのか/日本核武装論とパブリックリレーション/北朝鮮による拉致は侵略戦争である/国と地方の権力構造/互助共同体仮説 流血なき内戦を戦え/日本政治のポジショニングマップ/三島由紀夫は何と戦ったのか

    本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

    本山貴春

    (もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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