三島由紀夫最後の短編『蘭陵王』は、もう一つの『仮面の告白』か

今年の3月に福岡在住の有志で始めた「三島由紀夫読詠会」(三島文学朗読会)。初めての試みゆえ、様々な可能性に挑戦できる面白さがあるが、裏を返せば、まだこれといった定型が出来ていない。

それは、これから参加していただける皆さんと一緒に、創り上げて行きたいと思っている。

これまで、『花ざかりの森』『豊饒の海』『仮面の告白』などを取り上げた。三島由紀夫の文章の硬質で華麗な美しさは、つとに知られたところだが、詠んでいると本当に美しいリズム感に陶然となる。

皆さんも是非試みに、三島文学を読詠(音読)して頂ければとお勧めする次第だ。

しかしながら、このように詠みあげていると、中・長編の小説においては、どうしても1回の読詠会の中で全部を俯瞰することは困難となる。特に、まだ三島由紀夫の小説を充分に読んでいない方にとっては、小説の印象が曖昧に終わってしまうことに気が付いた。

そこで、今回は一回読み切りの方法を取ろうと考え、三島最後の短編小説『蘭陵王』を取り上げることにした。

三島由紀夫最後の短編『蘭陵王』とは

これは本当に謎めいた小説で、この後の作品としては、『豊饒の海』の最終巻『天人五衰』を残すのみという時代位置にある。

この執筆時、三島の心中では自決の意志こそ確定していないものの、既に一つの可能性として固まりつつあり、この作品がたまさかで生まれたものでないことは明らかなのだが、ではこの作品、それも三島由紀夫作品としては、例外的に私小説性が強く、構築性が表に出ていない心境小説的な掌編を世に問うた作者の意図は何かと言うことになると、未だ定説はない。

しかしながら、この一見エッセイかと見紛うほどの、日常的な短い文章の中に通奏低音の如く、現出・揺曳する蛇の心象風景。

自在なる笛の音に、変わりゆく自らの生の有限性を思い、発展を拒絶する固定化された音楽内容の中に、普遍なるものの純粋性を見出す心情の吐露。

縦横に引用される能の台詞。そして筋らしい筋の無いままに投げっ放しのようにして唐突に終わる結尾。

ことほど左様、不可解な仄めかしと暗喩に満ちた作品であるが、文章から立ち昇ってくる抒情の純芸術的な美しさと言う点では、三島文学の中でも屈指の位置を占めるのではないかと思う。

そして、獰猛な仮面を纏い、優しく美しき顔を隠し戦う「蘭陵王長恭」への言及に託した独白の象徴性の高まり。

この小説こそ、もう一つの『仮面の告白』ではないのか。

そのような思いに誘われるほどの作品であり、三島由紀夫最後の短編小説として、最後の長編小説『天人五衰』、そして“最終作品”である「檄文」とともに、三島由紀夫「告別三部作」として更に注目されて然るべきものであると私は考える。

共に詠み、共に語り合いましょう。奮ってのご参加、心よりお待ち申し上げております。

三島由紀夫読詠会@天神『蘭陵王』6/27 19:00-
日時:6月27日(木)19:00-21:00
会場:福岡市中央区天神4丁目4-24 新光ビル5F
( 西鉄福岡天神駅 徒歩 7 分)
詳細 https://reimeisha.jp/2019/06/18/r010627/

石原志乃武(いしはら・しのぶ)/昭和34年生、福岡在住。心育研究家。現在の知識偏重の教育に警鐘を鳴らし、心を育てる教育(心育)の確立を目指す。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会幹事。福岡黎明社会員。

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