「戦争で北方領土を取り返すのは?」丸山穂高衆院議員の問題提起を封じるな

令和元年5月11日、北方領土へのビザなし交流訪問団に参加していた丸山穂高衆院議員が、元島民の団長に対して「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と発言したことを受け、日本維新の会は14日に党紀委員会を開き、丸山議員を除名処分とした。

丸山穂高衆院議員とは

丸山議員は昭和59年生まれの35歳。東京大学を卒業後、経済産業省に入省。平成21年に退官し、松下政経塾に入塾。卒塾後、平成24年に日本維新の会公認で衆院選に立候補し、最年少28歳で初当選した。現在、衆院議員3期目。

丸山穂高議員公式サイトより

丸山議員の公式サイトによると、政策としては「消費税増税凍結。身を切る改革で教育無償化」「現実に即した憲法や安全保障」の他、選挙区である「泉州を豊かにする経済政策」などを掲げている。

維新の会が大きく議席を減らした平成29年には松井一郎代表の責任を追及。そのことで党創設者である橋下徹氏とSNS上で激論を交わしており、誰に対しても歯に衣着せぬ物言いのできる人物であることがわかる。

実際の発言内容は?

マスメディアの報道では「戦争でとりかえす」「戦争発言」などの見出しが躍っているが、実際にはどのようなやりとりがあったのか。

丸山穂高議員:「戦争でこの島を取り戻すのは賛成ですか?反対ですか?」
元島民・訪問団長:「戦争で?」
丸山穂高議員:「ロシアが混乱している時に取り返すのはOKですか?」
元島民・訪問団長:「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
丸山穂高議員:「でも取り返せないですよね?」
元島民・訪問団長:「いや、戦争はすべきではない」
丸山穂高議員:「戦争しないとどうしようもなくないですか?」
元島民・訪問団長:「いや、戦争は必要ないです」

この前後のやりとりについては不明だが、テレビ放映された録音によって上記の発言を確認できた。

日本維新の会が除名

報道によると、丸山議員は13日夜にこの発言を謝罪・撤回し、14日午前に離党届を提出した。

丸山議員の発言に関して、日本維新の会・松井一郎代表はツイッターで「我が党所属の丸山議員の不適切な発言により、元島民の皆さんを傷つけ、北方領土返還を願い、尽力されてきた全ての皆さんに多大なるご迷惑をおかけした事、党代表として心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。

丸山議員の発言が報じられたことを受けて、ロシア側は「こんな挑発的な発言をする人物は領土問題の解決を求めてはいない」「戦争は日ロ関係において想像し得る最悪のものだ」(コサチョフ上院国際問題委員長)などと反発を示している。

北方領土問題とは

北方領土は、現在ロシア連邦が不法占拠している北海道の択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を指す。

昭和20年8月14日に日本がポツダム宣言の受諾を決定し、翌15日に玉音放送によって自発的戦闘行動を停止した後の8月28日から9月5日にかけて、ソ連軍が武力によって侵略、ソ連崩壊後もロシアが占領を継続している。

北方領土についての日本の領有は古く、寛永21年(西暦1644年)には徳川幕府の作成による『正保御国絵図』に松前藩の支配地域として記載されていた。明治8年にはロシア帝国との間に樺太・千島交換条約を締結し、そこでも日本領として確定している。

第二次世界大戦中の昭和19年、ソ連の独裁者スターリンは突如として米国に南樺太や千島列島の領有を要求。翌昭和20年の米・英・ソ首脳によるヤルタ会談において南樺太と千島列島をソ連のものとする密約が結ばれたとされている。

同年4月、ソ連が日ソ中立条約の失効を通告。そして8月8日に対日宣戦布告している。8月14日、日本は御前会議によってポツダム宣言の受諾を決定し、連合国に通告。翌15日には玉音放送によって国民に公表した。

しかし16日にソ連軍が南樺太に武力侵攻。18日には千島列島へ侵攻し占領している。さらに8月28日から9月5日にかけてソ連軍は軍事行動を継続し、択捉・国後・色丹島・歯舞群島を占領した。この時、スターリンは北海道本土への侵攻を目指していたが、日本軍の抵抗により阻まれた。

その後、日本政府は外交交渉によって旧ソ連およびロシアに対し北方領土の返還を要求しているが、交渉は進展していない。日本側は過去に国際司法裁判所への付託も提案したが、ロシア側が応じないため実現していない。

昭和31年の日ソ共同宣言には「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」と明記され、その後もロシアのエリツィン大統領とプーチン大統領が日ソ共同宣言の有効性を言明している。

本当に交渉で取り返せるのか

問題となった丸山議員は5月13日、次のようにツイッターに投稿していた。

国後島より帰港。北方領土という戦争で取られたものをどのように取り返すのかというのは本当に一筋縄ではいかないと改めて痛感。実際に元島民の方や現地の方など様々な話を聞き、島の開発が進んで生活が根付いているのを見た。先日の外相会談含めて日本にとって厳しい立場が続く中だが粘り強く交渉を。

録音された発言を含め、丸山議員は公的に「戦争して取り返せ」と主張したわけではない。しかし、70年以上にわたる二国間交渉において、北方領土返還が実現していないのは事実で、過去を知る元島民も高齢化している。

日本が抱える領土問題は北方領土だけではない。同じくロシアが実効支配している南樺太についても、日本はロシアへの帰属を承認していない。

昭和27年のサンフランシスコ平和条約締結直前には韓国が「李承晩ライン」を宣言し、同宣言に基づいて翌年から同海域において韓国軍が日本漁船の拿捕を開始、日本人漁民が多数殺害され、あるいは拉致された。同年4月20日には竹島へ武力侵攻し、現在も占領を続けている。

その他、近年では中国が沖縄県尖閣諸島の領有権を主張して同海域へ軍艦をたびたび派遣し、摩擦をおそれた日本政府は日本漁船の操業を禁止している。

ロシア関連では西暦2014年、ロシアに隣接するウクライナにおいてクリミア半島の親露派がロシアの後ろ盾を受けて独立宣言し、同年住民投票によってロシアへの編入を決定した。この際、ロシア軍は国境付近で大規模な軍事演習を実施。ウクライナの政府機関を武装占拠したのもロシア軍特殊部隊であるとされている。

「戦争を考えない」は思考停止

世界中にいまなお残る多くの領土問題。過去には交渉によって解決された事例ももちろんあるが、外交交渉の背景には必ず国家の武力が存在する。

ロシアが北方領土の返還を認めないのも、同地域が米軍の勢力圏下に入ることを恐れているため、という見方もある。事実、西暦2018年末にプーチン大統領は「アメリカ軍配備の決定に関して日本にどの程度の主権があるかわからない。平和条約締結後に何が行われるかわからない」と発言している。

丸山議員の「戦争でこの島を取り戻すのは賛成ですか?反対ですか?」という島民に対する投げかけは確かに極論じみているが、領土問題の本質をついた問題提起だったと言えるだろう。

この質問に対する元島民の「戦争なんて言葉は使いたくないです」という反応は、その後の日本政府や日本維新の会を含む各党の反応そのままであり、戦後日本の姿勢を象徴している。つまり、思考停止である。


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本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

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