私は大学卒業以来10年以上をサラリーマンとして過ごした。そして昨年、念願の起業独立を果たしたわけだが、個人事業主(フリーランサー)としての自由を享受しつつも、一人であるがゆえの課題も感じることがあった。
企業組織には、やはり組織としての強みがある。
組織は、個々人が力を発揮するとき、その力を数倍にすることができる。個人事業主の一人の力は一人分でしかないが、組織にすると一人当たりの力が数倍になり、組織全体で膨大な力を発揮することができるのだ。
私自身がそのことに気づいたのは、企業組織を離れて個人事業主になったからだった。
しかし時代の流れは、確実に個人起業の方向にある。
今後、大企業は変わらず残るだろうが、中小企業の多くは消滅すると言われており、非正規雇用と個人事業主が大半を占める社会が到来する。
しかし現在の日本は、必ずしも個人事業主にとって仕事がしやすい社会環境にあるとは言えない。
一部起業家の例外的な「大成功」が大きく注目を浴びる一方で、挫折して就職活動を再開する起業家も多く、多くの会社員が起業独立に踏み込みづらい空気を醸成している。
起業家の置かれる厳しい環境
社会保障制度においても、個人事業主に対するセーフティーネットは存在せず、大企業における労働組合のような互助組織もほとんど生まれていない。各自治体が行なっている起業支援も掛け声ばかりで、事業継続はひとえに個人の運と努力にかかっている。
およそ起業家には3つの未来があると考えられる。
1つ目は、株式上場を目指して新しいビジネスモデルを立ち上げ、莫大な投資を集めたり、会社を売却したりして大成功するパターン。ITバブル時代の成功者がわかりやすい事例だ。
2つ目は、従業員をほとんど雇用せずに、個人または少人数の仲間とともに地道に経営し、マイペースで事業を継続していくパターン。これまでも店舗経営などには普通に見られた方式だ。
3つ目は、事業を廃業し、他の企業に再就職するパターン。正社員には戻れず、非正規雇用による労働を余儀なくされることも。8割の起業家が5年以内に廃業しているとも言われており、事業継続の難しさがわかる。
私は、今後の日本経済においては2つ目のパターンが増えていくであろうし、増えるべきだと考えている。
なぜなら、日本の労働人口のうち大企業に勤める人は3割ほどで、残りの7割は中小零細企業に勤めており、その中小零細企業の多くは、団塊世代経営者の引退に伴って事業継承できず、消滅することが確実視されているからだ。
個人起業家は確実に増える
また、近年「働き方改革」が叫ばれている。
この背景には、終身雇用制が崩壊する一方で、長いデフレが続き、低賃金、違法な長時間労働(サービス残業)、賃金上昇率の抑制など、日本における労働環境の悪化がある。
これらの問題が、アベノミクスによる人材市場の改善に伴い、企業に対して労働環境の改善を促すことになった。
大企業に関しては、「働き方改革」の効果が出始めているように観測される。しかし残りの(労働人口)7割である中小零細企業、特に地方の中小企業においては、実態として「働き方改革」の実行は難しく、結果として深刻な人材不足に悩まされている。
これら地方における中小企業経営者のマインドが劇的に変わる可能性は低く、大企業に正社員として就職できなかった人々の多くは、今後「個人起業」に活路を見出す他なくなるだろう。
フリーランス(英: freelance)は、特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人である。 日本では『自由業』『自由職業』『フリーランス』と呼ばれる。 請け負った業務を実際に遂行する本人はフリーランサー、フリーエージェントと呼ばれる。
フリーランサーの互助組織を!
しかし前述の通り、現在のわが国は個人起業家(個人事業主)にとって環境が整っているとは言えない。そこで、大企業における労働組合に相当するような、あるいは中世欧州の職人組合のような、フリーランサーの互助組織が求められている。
誰もやらないなら、自分が始めよう、と私は考えた。もちろん、私一人ではできない。そこで、志を同じくする人々に呼びかけ、提案し、ともに組織作りをしたいと考えている。