石丸伸二氏の確信犯的言辞
正直な所、これまで、私はこの石丸伸二という方に、殆ど関心がありませんでした。それは例の話題を呼んだ市議会における動画から、最近の都知事選における動きまで変わることはなかったのです。
その理由を一言でいえば、行動に落ち着きが無く、地に足がついていない感じであり、とても政治家として何らかの足跡を残し得る人物とは思えなかったからです。すぐに視界から消えてしまうであろうという印象しかありませんでした。
そんな私が彼の動きに突如興味をそそられる様になったのは、石丸氏が「次回の総選挙、野党第一党の新しい党首の方と同じ選挙区から出馬し、もし自分が勝ったら、自分を党首にして欲しい」云々と述べていることをネットで目にしたからです。
最初、私は「これはもうお子様の発想以外の何物でもない、高校生でも言いそうもない戯言だ」と思ったのですが、すぐに考えを変えました。
このような児戯に類する発言を、いい年を大人、それも経歴を見れば、非常に有能な元ビジネスマンである彼のような人間がしている場合は、確信犯である可能性が非常に高いのです。
搦め手から狙う既存政治の変革
では、石丸氏が何を企図しているのかといえば、私にはそれは、いわゆる55年政治体制という従来の政治秩序の破壊であり、その体制に固執する方々への引退勧告であると感じられます。これもまた、脱昭和化現象の一つなのです。
今、与党も野党第一党も来月の党首選を控え、様々な活動が繰り広げられていますが、残念ながら、野党第一党の党首候補者として取りざたされている方々に全く新鮮味が無く、言っていることも目新しいものが無いのです。
組織の新陳代謝が滞っている印象で、若々しい清新なエネルギーの発露を感じません。これでは、政権交代には程遠く、結果として世の中の変革の速度は上がらないのです。
このように組織が硬直化し、内部からの蘇生が困難となれば、外部からの直截的アプローチは有効となります。
メガバンクで勤務し、倒産企業案件も数多く見てきたであろう石丸氏にとって、“外部からの役員入れ替え”などは珍しくも何ともないことなのでしょう。それを、政治の世界でやろうとしていることが人目を惹くだけなのです。私が彼をトリックスターと思ったのはその点で、単なる悪ふざけで片づけられるものではないと思います。
トリックスターの活用法とは
トリックスター【trickster】
デジタル大辞泉
- 詐欺師。ぺてん師。
- 神話や民間伝承に現れるいたずら者。秩序の破壊者でありながら一方で創造者であり、善と悪など矛盾した性格の持ち主で、対立した二項間の仲介・媒介者の役目を果たす。
トリックスターは、トラブルメーカーとなって収集できない混乱をひきおこすこともあれば、破壊がきっかけとなり、新たな建設や創造がなされることもあるとされています。トリックスターを活用出来るか否かは、我々の度量・力量の問題なのです。
件の政党が、石丸氏に「もし敗れたら我々の軍門に下り入党せよ」と言う位の懐の広さを示せればと思うのですが。
石丸氏は42歳。奇しくも前回言及した小泉氏と一つしか年が違いません、示し合わせた訳ではないにせよ、この世代の方々が、日本の変革に声を上げ始めたことは、これからも注視して行こうと思います。
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