ベーシックインカムを導入する7つのメリット(後)

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前回に引き続き、ベーシック・インカム(Basic income、以下BI)をわが国で導入するメリットについて考えてみたい。

(4)地方活性化

生活保護は居住地域によって支給額が変動する。しかしBIは、制度思想から考えると、居住地域による支給額の変動を行わないことが望ましい。

その結果、首都圏に集中している人口が、より物価や地価の安い地方に移動する可能性が高い。

もちろん、物流コストの関係で物価が高い過疎地はあるが、東京一極集中の現状から全国の政令指定都市や中核市へ適度に分散し、スマートシティ化やコンパクトシティ化を促すことが期待できる。

各自治体は移住促進のために競争するであろうし、優秀な人材や若い世代も流入してくるので、官民の人材活用が進むだろう。出遅れている国際的な「都市間競争」にも挑むことになる。

自治体における社会福祉関連業務も整理統合されるので、より優先度の高い政策にリソースを投入できるようになる。

(5)民心の安定

ここ30年ほど、日本社会は閉塞感に包まれてきた。その大きな要因としては経済成長の鈍化が挙げられるが、世界的な産業構造の激変と相まって国民の多くが生活不安に苛まれている。さらに、コロナ禍によって国民のストレスが増大しているが、これは感染症が収束しても解消されない。

婚姻率や出産率の低下も、そのような将来不安が一因であろう。BIを導入すれば、収入面での不安は払拭される。少なくとも、ストレスの大幅軽減が期待できる。

また、無理にブラック企業で働き続ける必要性もなくなり、人材市場全体で人材不足による賃金上昇が期待できる。労働者を搾取するブラック経営者は淘汰されるだろう。

社会福祉分野における官僚の裁量権が制限され、多くの既得権益が失われることで、国民の間における不公平感も解消される。例えば、サラリーマンが年金受給者や生活保護受給者を僻(ひが)む必要もなくなる。

貧富の格差が解消されるとまでは言えないが、低所得者が高所得者を僻むようなこともなくなり、国民的一体感が復活するに違いない。

(6)景気対策

仮にBIのみで生活する世帯が一定数生まれたとしても、それらの人々も消費行動は行う。また、中間層は単純に可処分所得が増えるため、個人支出の増大が期待できる。

フリーランスなどの個人起業も増えるし、労働人口は流動化する。新しい産業の創出と成長が起こることで、わが国は将来、再び高度経済成長時代に突入する可能性すらある。

これまでの景気対策は特定分野への政府支出が中心であり、公的扶助も必要最低限(むしろ過少だった)であったため、有効な景気対策にはなっていなかった。

BIは「公共事業予算の増額」といった財政政策とも異なる。財政的には減税と同じ効果があり、だからこそBI導入を理由とした増税も許してはならない。

(7)政治改革

中央政府は基本的に「外交」「安全保障(防衛)」など、本来政府が担うべき政策にマンパワーを集中できるようになる。地方自治体においても、自治体間競争を勝ち抜くための自治体経営に専心することになるだろう。

BIの導入は、これまでの利権誘導政治をかなり抑制する効果を持つ。社会福祉分野だけでなく、事業者向け補助金も相当減らせるからだ(現在の事業者向け補助金や助成金は、かなりの割合で雇用維持や拡大を条件にしている)。

人口の一極集中が崩れれば、政治と経済の一極集中解消も進むだろう。首都機能分散もやりやすくなるし、地方行政を強化するための道州制導入へも弾みがつく。そうなれば、インフラ整備などの公共事業を中央政府が行う必要もない。

国会議員の政治理念や、選挙における国民の支持理由にも劇的な変化が起こる。BIによって、近年の日本がなしえなかった政治改革が一気に進むことになるだろう。

BI実現戦略はあるか

わが国におけるBI導入の政治的障壁は極めて高い。政府支出に寄生する既得権層の政治力が極めて大きいからだ。これら既得権勢力は与野党にまたがって分布している。

現在、BI導入を主張もしくは検討している政治勢力は、中道派や改革保守派などの「第三極」に存在する。かつての希望の党、現在の国民民主党、日本維新の会などだ。

これら第三極が勢力を拡大し、政界再編を進めていけば「政権交代可能な保守二大政党」を実現することは不可能ではないし、その時点で自民党や公明党がBI導入に舵を切る可能性もゼロではない。

日本の政治情況はかなり流動化している。国民としては諦めず、「BIを導入せよ」という世論を高めていくことが必要だ。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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