ベーシックインカムを導入する7つのメリット(前)

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最近、「ベーシック・インカム」という言葉を聞いたことがあるという方が増えてきたのではないだろうか。

ベーシック・インカム(Basic income、以下BI)には様々な訳語があるが、私は仮に「全国民一律給付制度」と呼んでいる。他には「最低所得保障制度」などと呼ばれることもある。

つまり政府による社会保障制度であって、現在ある様々な福祉制度を整理することと併せて議論されることが多い。いま議論が活発化している背景として、コロナ不況が影響している。

コロナ不況を原因として、わが国は令和2年に特別定額給付金(全国民に一人あたり10万円)を配った。同様の一律給付は世界各国で行われており、わが国は頻度・金額ともに少ない部類に入る。

しかし現時点で、正式にBIを施行している国家は存在しない。そのため、金額や給付条件など憶測を含めて議論が錯綜している。

本来BIは給付条件を設けないことが前提だが、生活保護制度などと明確に区別するため、特に給付条件を設けないBIを「ユニバーサル・ベーシック・インカム」と呼ぶこともある。

以下、わが国でBIを導入した場合に考えられるメリットを7つ挙げてみたい。

(1)貧困対策

現状、生活保護制度などで捕捉できていない困窮者に対する支援が可能となる。そもそも自治体などは予算の制限から生活保護受給者を増やしたくないインセンティブがあり、年齢などを理由に申請を却下されることも多い。

国民の側にも生活保護に対する根強い偏見があり、実際に困窮していても申請に至らず、そのままホームレスになる人もいる。現状の制度的不備を是正していくことも重要だが、BIを導入すれば根本から解決することになる。

また、生活保護受給者は収入が増えると支給を打ち切られるので、働かない方が良いというインセンティブがある。これもBIであれば、むしろ働きたくなる人が増える可能性がある。

(2)少子化対策

BIは世帯ではなく個人単位で支給される。それもゼロ歳から死ぬまで支給されるので、結婚や同棲をすることで生活費を節約できるし、子供を増やしていくインセンティブになる。

そもそも、高額な教育費を不安視して子供を持つことをためらっていた夫婦でも、BIで生活が安定するため妊娠出産に前向きになると思われる。

(3)行政経費削減

社会保障費全体の中で、事務の人件費割合はかなり高い。国民が何らかの社会福祉サービスを利用したい場合、役所の審査があり、利用開始後も定期的な報告や管理が必要となる。

例えば生活保護であれば、申請時に審査があり、受給開始後は毎月ケースワーカーの訪問を受けなければならない。

私は介護予防施設の管理者を務めた経験があるが、毎月役所に出す報告書は膨大で、これを受理してチェックする役所側の負担も相当なものだと思った。

社会福祉制度は(保険を別として)税金で運営されるものなので、不正や無駄があってはならないという考えは理解できる。しかし社会福祉予算が肥大化していく原因の一つが、これら二重三重のチェックにかかる人件費だとすれば、おかしな話ではないか。

利用者側にとっても、平日しか空いていない役所に行って多くの書類を作成する手間は複雑で、「制度利用を諦めさせたいのではないか」と勘ぐるほど不親切だ。BIを導入すれば、利用者側が負担していた手間も無くなる。

BIで社会福祉制度が整理統合されれば、特に事務部門の仕事が無くなるという懸念もあるだろう。そのような公務員については、国民にとってより優先度の高い業務に移って貰えば良い。万が一失職したとしても、BIがあるので大丈夫だ。

(後半に続く)

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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