政府が飲食店をイジメる理由とは【動画あり】

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報道によると、福岡県は緊急事態宣言中の営業時間短縮命令に従わなかった15の飲食店に対して過料を科すことを決めた。

以下、令和3年7月2日の西日本新聞から一部引用する。

県は宣言期間中だった6月20日まで、県内の酒やカラオケを提供する飲食店に対しては休業、それ以外の飲食店には午後8時までの時短営業を要請。同月中旬、応じなかった15店舗に対し(中略)休業・時短命令を出していた。(中略)その後も酒類の提供と午後8時以降の営業を継続していることが確認されたため、今回の手続きに踏み切ったという。

▽福岡県、休業・時短拒否15店に過料/西日本新聞
www.nishinippon.co.jp

また、西村康稔経済再生担当相は7月8日、酒販業者に対し「酒類提供を続ける飲食店」と取引を行わないよう要請した他、金融機関に対して「休業要請に応じない飲食店の情報」を提供すると発表、批判を浴びている。

以下、令和3年7月8日の日経新聞から一部引用する。

西村康稔経済再生担当相は(中略)酒類提供を続ける飲食店と取引を行わないよう酒類販売事業者に要請する意向を明らかにした。「酒類提供停止を徹底するため」と説明した。

▽政府、酒類提供店との取引停止を要請 販売事業者に/日経新聞
www.nikkei.com

西村康稔経済財政・再生相は8日夜の記者会見で、休業要請に応じない飲食店の情報を金融機関に提供する考えを明らかにした。「金融機関からも順守の働き掛けをしてほしい」と述べた。

▽休業要請拒否店の情報、金融機関に提供 経財相/日経新聞
www.nikkei.com

「金融機関からの働きかけ」については、加藤勝信官房長官が7月9日の記者会見で撤回の方針を示している。西村大臣の発言については国会議員や言論人からも批判の声が上がっており、進退も取り沙汰される事態となっている。

過剰な規制で政府が訴えられる可能性も

特措法に基づく時短・休業命令については今年3月、飲食チェーンを経営する株式会社グローバルダイニングが「営業の自由を侵害するもの」として、東京都に対し損害賠償を求める訴訟を提起している。

飲食店を「狙い撃ち」にしているともいえる「新型コロナウイルス感染症対策」だが、今年4月には東京都練馬区の飲食店店主が焼身自殺した事例もある。

東京都練馬区のとんかつ店で4月30日夜、火災があり、東京五輪の聖火ランナーに選ばれていた店主の男性(54)が全身やけどで死亡した。(中略)新型コロナウイルスの感染拡大を受け、店は4月中旬から営業を縮小していた。男性は「店を閉じる。もう駄目かもしれない」と、将来を悲観する言葉を周囲に漏らしていたという。

▽火災のとんかつ店「店閉じるもう駄目かも」/東京新聞(5月3日)
www.tokyo-np.co.jp

今年2月に施行された「改正特措法」では、緊急事態宣言及び蔓延防止等重点措置(マンボウ)の対象地域において自治体は事業者に対し施設の使用制限や営業時間の変更を要請することができる。

その際、要請に応じなかった事業者に対しては時短・休業の命令を出すことが可能で、その命令に従わなかった場合、緊急事態宣言で30万円以下、マンボウで20万円以下の過料(行政による罰金)を科すことができる。

この特措法に基づく「過料」について、今年2月1日に衆議院内閣委員会で足立康史議員(日本維新の会)が近藤正春内閣法制局長官に対し、「(コロナ対策のための強力な規制について)国賠(=国家賠償訴訟)の対象になって敗訴する可能性、政府はないですか?」と質問した。

質問に対して近藤長官は以下のように答弁している(抜粋)。

過料を科するということで、特に今回、私の方からお願いをいたしましたのは、これまでの措置の、都道府県知事が行われる前に、特に専門家の方の意見を再度聞くようにということを法律で義務づけていただきまして、より科学的知見で、不用意に広がらないように、本当に疫学的な見地からここはどうしてもやらなきゃいけないというところにある程度絞っていただくというところで、より過料との見合いで、厳重、慎重な発令というものをお願いするように今回の条文ではなっております。

内閣法制局長官は、行政における法律専門家のトップである。その人物が、「厳重、慎重な発令というものをお願いする」と答弁していた。もし過料という行政処分が濫発されれば、「国家賠償」の対象になりかねないということだろう。

西村発言は憲法違反の恐怖政治

憲政史家の倉山満氏は西村大臣の発言について、7月9日に自身のブログで以下のように指摘している。

「その店が酒類を提供しているかどうか」を令状なしで捜査したら、憲法違反。/だいたい、現行法では酒類の提供は犯罪でもなんでもなく、それを調べること自体が憲法違反であり、よしんば酒類を提供しているからとその店と取引のある金融機関に圧力をかけるなど、論外。/さらに政府が財産権を制約する目的で私人の情報を提供するなど、完全に個人情報保護を侵しているので、13条の幸福追求権違反。

▽守ろう憲法35条! でも相変わらず「いつもの護憲派」はダンマリ(倉山満の砦)
office-kurayama.co.jp

コロナショックが起こる前のデータによると、わが国の飲食店業界(テイクアウトやデリバリーを除く)は年間約12兆円、店舗数は約60万店、飲食店の被雇用者数は約420万人だ。

これだけ日本経済にとっても大きな柱である飲食店を、政府や自治体が目の敵のようにして「イジメる」のは何故なのか。

本当に新型コロナ感染対策のために飲食店を閉鎖させるのが疫学的に必要だとしても、規制には充分な補償が伴わなければならない。

政府は様々な補償策を提示してはいるが、要請や命令に従わない飲食店が存在することが、補償が不十分であることを証明している。命令に反して過料を科せられたとしても、営業した場合の利益の方が補償額を上回っていれば、営業を続ける飲食店が出ても不思議ではない。

過料はまだしも、酒販業者や金融機関に対して取引停止を求めるに至っては、恐怖政治そのものだ。

そもそも飲食店は他の業界に比べても参入障壁が低く、個人でも経営しやすいという特徴がある。政府の理不尽な政策に対して飲食業界も自衛すべきだが、個人商店が国家賠償訴訟に踏み切る難易度は極めて高い。

飲食店にも業界団体は存在するが、既存の団体は中央官庁と密接な関係にある場合が多く、これらの団体が個別の飲食店の利益を守るために政府や自治体と対決する可能性は低いだろう。

政府や自治体の役割は、憲法に基づき国民の生命・安全・財産を守ることにあるが、それは建前のことであって、実際には政府は憲法も国民も守らない。政府が守るのは既得権益層の利益であって、個人経営の多い飲食店は守るべき対象から外されているのだ。

だからこそ、飲食店経営者も政府と対峙する新しい枠組みを作って団結し、断固戦うべきではないだろうか。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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