橋下徹氏も言っていた「再び戦争しない限りは妥協するしかない」

令和元年5月17日、日本維新の会の片山虎之助共同代表と馬場伸幸幹事長はロシア大使館を訪問し、ガルージン駐日ロシア大使に対して丸山穂高衆院議員(日本維新の会を除名処分)の北方領土における発言について釈明し、謝罪した。共同通信などが報じた。

橋下徹氏「再び戦争しない限りは妥協するしかない」

一方で、日本維新の会創設者で元大阪市長の橋下徹氏が今年1月、自身のツイッターで北方領土について「再び戦争しない限りは妥協するしかない」と投稿していたことがわかった。

橋下徹氏の投稿は、従来の日本政府の主張である「4島返還論」から「2島返還論」への方針転換について安倍政権が検討していると報じられた記事について、「2島決着に賛成だ」と賛意を示したもの。その根拠として、ロシア側に「一切の返還を認めないという強烈な世論」がある以上、「再び戦争しない限りは」4島返還が不可能であることを指摘している。

橋下徹氏「ヤルタ密約は無効」「敗戦国の悲しい性」

さらに橋下氏は、ロシアが北方領土を占領した根拠とされている「ヤルタ密約」(※)についての違法性を指摘し、「日本は、ヤルタ密約は無効であることを国際司法機関に訴えて堂々と無効判決を勝ち獲るべき」と弁護士らしい主張を展開している。

ヤルタ密約
第二次世界大戦中の昭和19年、ソ連の独裁者スターリンは突如として米国に南樺太や千島列島の領有を要求。翌昭和20年の米・英・ソ首脳によるヤルタ会談において南樺太と千島列島をソ連のものとする密約が結ばれたとされている。

丸山穂高議員の発言の印象が変わる

ここでもう一度、丸山穂高議員の発言を振り返って見よう。

丸山穂高議員:「団長は、戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか?反対ですか?」
元島民・訪問団長:「戦争で?反対…」
丸山穂高議員:「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはOKですか」
元島民・訪問団長:「いや、戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
丸山穂高議員:「でも取り返せないですよね」
元島民・訪問団長:「いや、戦争したって…戦争するべきではない」
丸山穂高議員:「戦争しないとどうしようもなくないですか? 僕らはその、いいならいいし…」
元島民・訪問団長:「…戦争なんてやめてください」
丸山穂高議員:「何をどうしたいんですか」
丸山穂高議員:「何をですか」
丸山穂高議員:「どうすれば」
元島民・訪問団長:「どうすれば、って何をですか」
丸山穂高議員:「この島を」
元島民・訪問団長:「それを私に聞かれても困ります。率直に言うと、返してもらったら一番いい」
丸山穂高議員:「戦争なく?」
元島民・訪問団長:「戦争なく。戦争はすべきではないと思います。これは個人的な意見です」
丸山穂高議員:「なるほどね…。」
元島民・訪問団長:「早く平和条約を結んで解決してほしいです」

ここで前述の、橋下徹氏による「再び戦争しない限りは妥協するしかない」という発言を重ねてみると、丸山穂高議員の発言の印象が変わって来ないだろうか?

国後・択捉は返ってこない

丸山穂高議員が訪問団長に対して質問を投げかけた場所は「日本人とロシア人の友好の家」(通称ムネオハウス)という施設だが、北方領土の国後島にある。橋下徹氏が賛意を示した「2島返還論」は色丹島と歯舞群島のことであり、まさに問題の舞台となった国後島は含まれない。

しかも上記の会話の直前には、下記のやりとりも録音されていた。

丸山穂高議員:「今日行ったお墓は、本当に骨が埋まっていないんですよね」
元島民・訪問団長:「と私は思っているんです。もしあれでしたら千島連盟の担当者に確認します。ここではわかりません」
丸山穂高議員:「それはおかしいでしょう」
元島民・訪問団長:「骨があるかないかは、それは掘り返したわけじゃないから分かりません。(国後島の)古釜布に住んでいた人たちは、おれたちの墓はここじゃないと言っているわけですよ。違うところだと言っているわけですよ。それをいま、千島連盟で調査をしようということを言っております」

「2島返還論」について、「最終的に(ロシアが)4島全部を返還する事はもう無い、不可能である」と鈴木宗男元衆院議員も語っていた。「2島返還論」の根拠はロシア側の主張である。ロシアは「日露平和条約が締結され、日米安保が破棄されれば、色丹島と歯舞群島の2島については(返還ではなく)譲渡しても良い」と言ってきた。

このロシア側の主張を覆して4島全てを取り戻すには、ロシア側が大きく方針転換しない限り、論理的に「再び戦争」するしかない、というわけだ。

「心待ちにされている方々もいらっしゃいます」

むしろ訪問団長の「戦争なく返してもらったらいい」「早く平和条約を結んで解決してほしい」という言葉は、当地の国後島を取り戻すという意味において矛盾している。丸山穂高議員の問いかけは、この矛盾に対する指摘だったのだ。

昨年(平成30年)4月、丸山穂高議員は衆院外務委員会において北方領土に関する質問の中で以下のように発言していた。

非常に難しくて、これは、いつもロシア側にこういった部分だけとられて、結局、日本が本当に望んでいる、日本の固有の領土である北方領土の返還に関する部分が全然進まないんじゃないか、プーチンさんに、ロシア側にしてやられているやんかという御意見もなかなか多い中で、しっかりこれは、結論を急ぐわけじゃないです、ただし、やはり心待ちにされている方々もいらっしゃいます。

国後島において丸山穂高議員が訪問団長に対し、酒の勢いで「団長は、戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか?反対ですか?」と問いかけた背景には、橋下徹氏や鈴木宗男氏とも共有する「交渉による4島返還は不可能」という認識が前提にあり、それでも「本当の墓を探すこともできない」元島民に対する深い同情が義憤となって噴出したものであったと言えるのではないか。

橋下氏「議員辞職勧告決議はいかがなものか」

また、橋下徹氏は丸山穂高議員について「維新が辞職を促すのは当然」としつつも、維新を含む野党6会派が5月17日に議員辞職勧告決議案を提出したことについては「いかがなものか」と異を唱え、むしろ「選挙で落選させて現実を認識させた方がいい」と、維新幹部とは温度差を見せている。

日本維新の会の創設者である橋下徹氏が北方領土4島返還について「再び戦争しない限りは妥協するしかない」と発言していた事実は、同党所属議員だった丸山穂高議員の今回の発言について考える意味で大きい。

むろん、橋下徹氏は政府に妥協を勧めたのであって、戦争による領土奪還を唱えた訳ではない。しかしそのことは丸山穂高議員についても同じである。丸山議員は「でも取り返せないですよね」「戦争しないとどうしようもなくないですか?」「何をどうしたいんですか」と畳み掛けているが、「戦争して取り返しましょうよ」とは一言も言っていないのである。

丸山穂高氏のやむにやまれぬ思い

さらに、「戦争なく返ってきたらいい」という団長の返答に丸山議員は小声で独り言のように「なるほどね…」と納得する姿勢すら見せているのだ。ここで小声になった背景には、「しかし国後島と択捉島は絶対に返って来ないという現実」に対する苦悶があったのだろう。

今回の「問題発言」とされる事件が起こった背景には、過去の国会質問からもわかるように、誰よりも熱心に北方領土問題に取り組もうとする若い保守系議員としての丸山穂高氏の、やむにやまれぬ思いがあったとは考えられないだろうか?

そして、もし「戦争」という言葉を使うこと自体を禁忌とするならば、現在は民間人であるとはいえ維新の会に強い影響力をもつ橋下徹氏が批判されないことは、片手落ちというべきではないだろうか。

私は、丸山穂高氏も橋下徹氏も前提条件として事実を指摘しただけであると考える。こんなことでロシア大使に謝罪し、議員辞職勧告決議を行うといった行為は百害あって一利なし、だ。




『日本独立論: われらはいかにして戦うべきか? 』(独立社デジタル選書)
主な内容:なぜ私はネット選挙を解禁したのか/日本核武装論とパブリックリレーション/北朝鮮による拉致は侵略戦争である/国と地方の権力構造/互助共同体仮説 流血なき内戦を戦え/日本政治のポジショニングマップ/三島由紀夫は何と戦ったのか

本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

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