森会長発言問題に「五輪精神、習近平はどうなのか」

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令和3年2月8日のYoutube生放送番組「未来解説」の中で国際戦略家の石井英俊氏が、森喜朗氏の発言を巡る騒動について「(男女平等の)五輪精神に反するというなら、習近平はどうなのか」と指摘した。

選報日本では既報の通り、石井氏は中国政府に弾圧を受ける諸民族(チベット、ウイグル、南モンゴル、香港、民主派中国人)らと共に「北京五輪ボイコット」を求める共同声明を発表している。

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北京五輪開幕予定日のちょうど1年前となる2月4日に行われた共同記者会見は、国内外の多くのマスメディアに注目され、全世界に報道されている。

現時点で確認できているのはロイター通信、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(香港)、ジャパン・フォアード(産経新聞英語メディア)、アラブ・ニュース(サウジアラビア)、ブライドバード(米国)、共同通信、時事通信、産経新聞、東京新聞、AFP通信、大紀元、世界日報などである。

世界で「北京五輪ボイコット」の呼びかけが始まったのは昨年9月。世界で160以上の団体が国際オリンピック委員会(IOC)に対し、人権侵害を理由とした北京五輪開催見直しを求める書簡を送った。

また、昨年10月には英国のドミニク・ラーブ外相が中国政府によるウイグル人弾圧に言及した上で「一般的に言えば、スポーツは外交や政治から切り離すべきだと感じるが、それが不可能な場合もある」と述べ、ボイコットの可能性を示唆している。

石井氏らが共同記者会見を開いた前日の3日には全世界で180の組織・活動家が北京五輪ボイコットを呼びかける公開書簡を発表。この公開書簡には4日の共同記者会見に登壇したメンバーも署名済みだ。

このような声に対し中国外務省は3日、「政治的な理由で開催を妨害することは無責任。(ボイコット呼びかけは)国際社会の支持を得られない」などと反発。さらに中国共産党系メディア「環球時報」編集長はツイッターで「北京五輪をボイコットすれば、北京は強力な報復に出るだろう」と述べた。

IOCが定めるオリンピック憲章には「オリンピズムの根本原則」という7ヶ条があり、以下のような文言が見られる。

すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。オリンピック精神においては友情、連帯、 フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる。

このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、 国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。

日本では森喜朗五輪組織委会長が3日のオンライン会議において「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」などと発言し、翌日謝罪・撤回に追い込まれた。

東京五輪組織委員会は7日に改めて声明を発表し、「森会長の発言はオリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なもの」とした上で、「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを尊重し、讃え、受入れる大会を運営」するとしている。

森会長は発言を撤回したものの、会長職に留まるとしたことから批判の声が燻り続けている。組織委員会によると、4日以降に約390人がボランティアを辞退。東京都が募集したボランティアも53名が辞退を申し出たとされる。

過去にも多くの失言歴があり、80歳を越える森会長の発言が「政治的に正しくない」という指摘は当然成り立つ。一方で「国家ぐるみのジェノサイド」を現在進行形で行なっている国の首都で、一年後に開催されようとしている冬季五輪。

奇しくも北京五輪開催1年前というタイミングで、人権侵害を理由とした「ボイコットを求める記者会見」が行われ、同日「東京五輪組織委会長の謝罪会見」が開かれた。もし後者がなければ、前者に関する報道や反響はより大きなものとなっただろう。

情報の発信側としても受信側としても、「五輪精神を問う」問題について、その軽重を考えることが求められている。

「選報日本」編集主幹 本山貴春

追記(訂正)

(2月10日)外国特派員協会での記者会見について「前例がなかった」というのは事実ではありませんでしたので、該当する一文を削除しました。

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