依然として深刻な「子どもの貧困」は、親の働き方に原因がある

日本で、「子どもの貧困」が深刻な話題として取り上げられるようになって久しい。

厚労省がまとめた2016年の国民生活基礎調査によると、数字のうえでは12年ぶりに改善が見られた。しかし、それでも子どもの7人に1人が貧困状態にあり、相対的貧困率はOECD平均(13.2%)を上回る13.9%である。

日本でいわゆる貧困状態にある子ども達は、その親も決して裕福な経済環境ではないことが分かっている。同調査の結果、ひとり親世帯の貧困率は平成9年の63.1%からは改善されたものの、50.8%と依然として高い状況にある。先ず我々はこの現実を重く受け止めねばならない。

山形大准教授の戸室教授が、子育て世代の貧困についてまとめた研究がある。その中で、教授は全国の子育て世代の貧困率が過去20年間で倍増の13.8%に達していると指摘。その根本的な原因として、日本全体の労働環境の悪化、つまり子育て世代の非正規労働者の割合が増えたことに言及している。

現在、安倍首相の肝いりで「働き方改革」が断行されようとしている。その一環として同一労働同一賃金の推奨、非正規社員から正社員への転換促進などを通じて、雇用の安定化が図られている。

戸室教授の主張を踏まえると、理論上は子育て世代の非正規労働者の割合を減らしていくことが、子どもの貧困を解決することに繋がると言えよう。

もちろん、誰しも安定した身分で働けることに越したことはない。しかし中には、「時間の融通が利く」「組織に束縛されたくない」といった理由から、敢えて非正規という選択をしている労働者もいるのが現実である。

総務省統計局の労働力調査(平成29年9月公表)によると、正規の職員・従業員は3,421万人、非正規の職員・従業員は2,054万人という数字である。

主な正社員以外の就業形態(ここでは、契約社員<専門職>、パートタイム、派遣)を選んだ理由として最も多かった回答は、それぞれ「専門的な資格・技能を生かせる(契約社員)」「自分の都合のよい時間に働ける(パートタイム)」「正社員として働ける会社がなかった(派遣)」となっている(複数回答。厚労省「平成26 年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」)。

また、今後も会社で働きたいとする正社員以外の労働者の割合については、契約社員(専門職)の53.8%、派遣労働者の48.25%が「正社員に変わりたい」と回答している(パートタイムは23.9%)。

<現在の就業形態を選んだ理由>

項目(複数回答)
自分の都合のよい時間に働ける 32.8% 40.6%
専門的な資格・技能を生かせる 28.9% 15.4%
正社員として働ける会社がなかった 22.8% 15.6%
通勤時間が短い 21.4% 26.6%
家計の補助、学費などを得たい 16.1% 38.2%
家庭の事情と両立しやすい 5.6% 35.9%
自分で自由に使えるお金を得たい 19.2% 21.1%

【出典:平成26 年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況】

一方、雇用する企業側が正社員以外の労働力を活用する理由であるが、最も多いのは「賃金の節約のため」、次に「1日、週の中の、仕事の繁閑に対応するため」という結果である。この優先度は平成22年、26年ともに同様である。

そもそも、正規、非正規社員とも、法律で明確に定義されているわけではない。主たる違いとしては契約期間の定めの有無、就業時間の長短、社会保険加入義務の有無ぐらいである。ただ、契約期間、就業時間についてはいずれも、正規、非正規の違いは実際のところ、名称の違いだけであるように思う。実際、非正規であっても一定の要件を満たせば社会保険への加入義務があり、その範囲は拡大傾向にある。

職業選択の自由は憲法第22条に明記されている。「制度上」正規・非正規の垣根が徐々に無くなりつつある中、言葉の上のみで正規・非正規にこだわってしまうと、(子どもの)貧困の真相が、ぼやけてしまう恐れがある。

この点、今般のいわゆる「2018年問題(労働契約法※1、労働者派遣法※2の2つの法改正による契約期間や雇用形態に関する問題)」は、働く側にとって部分的にではあるが、有利に働く可能性がある。

もちろん雇用する企業側にとっては、既述の理由から、必ずしも諸手を挙げて賛成という訳にはいかないかもしれない。しかし、「正社員に変わりたい」という希望を叶える選択肢が増えることで、少しでも貧困問題の解決に寄与するのであれば、歓迎されるべきことである。

日本の子どもたちの貧困は現在進行形の課題である。一方、政策として、今後外国からの労働者受け入れを議論する際は、経済的観点はもちろん、社会保障の視点からも議論を深める必要がある。

「負担」という表現を使うことには、いささか抵抗があるが、仮に外国人労働者の子女が貧困に陥る事態になり、その状態を解消するために公的費用を拠出することになってしまえば、それは日本全体にとって、誤解を恐れずに言えば、社会的、財政的「負担」となってしまう。

カリフォルニア大学サンディエゴ校Gordon Hanson教授は、合法的に永住権を取得する労働者に対し、不法滞在の外国人労働者は低技能であると指摘している。さらに、そのような労働力が必要とされるのは、農業、建設、食品調理などであるということだ。

例えば農業に関して、確かに大規模農業のアメリカと高齢化や担い手不足が深刻な日本とは、同じ労働力不足でも議論の土台は異なるかもしれない。しかし、この構図は、どこか日本と類似していないだろうか。

資本主義者社会においては、機会は平等であっても結果が異なることは当然のことである。その点、外国人だからと言って、殊更に優遇策を設ける必要はないだろう。また、そうすることで却って日本人の労働者に不利になるようなことがあっては受け入れの効果も望めない。

今後、外国人労働者を受け入れていく場合、どのようにすれば、その子女が貧困に陥ることを未然に防ぐことができるのか。労働現場の人材不足に対応するだけの外国人労働者受け入れから、もう一歩先に進むためには、この点まで含めて対処することが、国として責任のある受け入れの在り方ではないかと考える。

※1 労働契約法…労働者の保護を図りながら、雇用主との自主的な交渉のもとでの労働契約について定める
※2 労働者派遣法…特に派遣社員として働いている労働者の権利を守るための法律

安部有樹(あべ・ゆうき)/昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。現在、外国人技能実習生を受け入れる管理団体に勤務するかたわら、社会的な問題解決のための提言を続けている。

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