希望の党も公約に掲げる「道州制」の導入で地方はどう変わる?

安部有樹
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道州制が政府の政策方針である「骨太の方針」に盛り込まれたのは、2004年小泉政権の時であった。あれから既に10年以上が経過した。この間、巷間議論がなされてきており今回の衆院選に於いても、日本維新の会、希望の党が公約として掲げている。

道州制のように、まさに「国のかたち」に関わるテーマこそ、国政選挙に於いて議論するに相応しいと言えよう。

道州制の議論は税を語ることと密接に繋がっている。やはり小泉政権下の2002年、経済財政諮問会議で示された「三位一体の改革」。この改革では、「国庫補助負担金の廃止・縮減」「税財源の移譲」「地方交付税の一体的な見直し」が進められた。

これらは、「中央集権からの脱却」という方向性については正しかった。しかし、そこには自ずと限界もあった。

例えば、その後の予算に於いて国庫補助負担金、地方交付税の削減額が、移譲された税減額よりも多かったことで、自治体の財政を逼迫させてしてしまうことになった。

また税財源の移譲のみで、「権限」の移譲がなされなかったことも指摘された(構造改革特区に於いて、権限移譲の試行はなされたが)。

道州制導入の大きな目的の一つが、地域の「自主」ではないだろうか。

例えば、希望の党は憲法に関する公約で、8章「地方自治」を改正し「分権」を明記、「課税自主権」「財政自主権」を規定するとしている。

そのうち、「課税自主権」は大きく、地方税の税目、税率設定の2つについて、地方団体が自主的に決定し課税することである。

課税自主権に似た言葉に、「関税自主権」がある。

関税自主権は日本史の文脈に於いて、明治前夜、それぞれ諸外国と締結した、いわゆる「不平等条約」に纏わる話題として扱われることが多い。また、相手国が一方的に税率を決めるということではなく、(税率の)改定には他国との交渉を経る必要があるということである。

この議論を日本国内に置き換えると、地方団体が国(政府)との協議を経て、(地方税の)税目、税率設定する権利を得る、ということになる。道州制を見据え、自主的に組織体を「経営」していくことを考慮すれば、少なくとも地方税に関して自ら決定権を持つことが求められると言えよう。

昨今、さまざまな場面において、既存の「中央集権体制」では対応できなくなったり、住民の多様化するニーズに応えきれなくなったりしてきている。道州制のメリットの1つとして、国と道州(あるいは市)の役割分担を明確にすることで、行政サービスの質を高めるという点も挙げられる。

「自主」という点では、もう一つ、住民がどのようにして地域づくりに関わっていくのか、ということも重要になってくる。道州制に限らず、どのような制度も(その制度を)実行性あるものにするのは運用に携わる住民の積極的な関与である。

江口克彦・前参議院議員は単なる「地方分権」ではなく、「地域主権型道州制」という概念を提唱している。中央から何かを分けてもらう「受動的」な姿勢ではなく、本来兼ね備えるべき権利を「能動的」に行使していくということだ。

そのような意味において、まだまだ道州制の意義が国民に十分浸透しているとは言えない。ただ、一つだけ確かなことは、社会保障制度を含めて、これまで我が国を支えてきた既存の制度では立ち行かなくなろうとしていることである。 

来年2018年は明治維新から150年を迎える。中央集権体制を敷いた明治政府が生まれた節目の年に、改めて道州制の議論を活発化させたいと思う。

安部有樹(あべ・ゆうき)昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。学習塾、技能実習生受入団体を経て、現在は民間の人材育成会社に勤務。これまでの経験を活かし、「在日外国人との共生」や「若い世代の教育」について提言を続けている。

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