【書評】伊藤哲夫著『五箇条の御誓文の真実』 国難を乗り越える道標とは

なぜいま、五箇条の御誓文なのでしょうか。

著者の伊藤哲夫氏は、知る人ぞ知る日本保守思想界の重鎮であり、多くの政治家に敬慕され指南役を乞われる方です。

その方が、今回の新型悪性ウィルスの蔓延による国難ともいうべき状況に際して、国民に語りかける警世の書を書き上げました。それが本書「五箇条の御誓文の真実」です。

窮地に陥った時、最も大切なことは何でしょうか。それは、襲いかかる不安と焦燥に耐え抜き、冷静な判断を下せる剛毅な心を持つことです。

そして言うまでも無いことですが、剛毅な心を持つためには、自らの心の中に絶対とも言える精神の大黒柱、拠るべき標(しるべ)が必要なのです。

今回のウィルスの世界的流行において、明らかになったことの一つは、国難に処するにあたっては各国の国柄が如実に表れるということでした。

効果があったか、無かったかの議論はひとまず置くとしても、アメリカはアメリカのやり方で、ドイツはドイツのやり方で、韓国は韓国のやり方でこの脅威に対応しました。各国ともに前例のない危機に対処するときは、各国の精神的基盤に基づいて行動するのであり、だからこその国ごとの対応の違いなのです。

しかし、我が国はどうだったでしょうか。

結果的には、被害を驚異的に少なく抑え込んではいるのですが、何かしら釈然としないものを感じる。こういった思いを皆持っているからこそ、世界から防疫対応を称賛されても、内閣の支持率に反映されず、かといって野党の支持率も上がらずといった奇観を呈しているのでしょう。

この書では、幕末、列強の支配危機という一大国難の迫り来る中、この日本国を守る為、いかに当時の人々の英知が、勤王佐幕立場の違い、身分の上下を越えて結集されたか、そして、その結果生み出されたこの五箇条の御誓文が、神武創業から受け継がれる日本人の英知の結晶・大和魂の発露というべきものであり、その理想の輝きと精神の昂揚を日本国民が共有できたからこそ、維新の大業を為し遂げ、国難を退けることが出来たこと、さらに、そこで示された志の高さは、国難に臨む我々にとって、今なお輝きを失わない物であり、今もって拠るべき確固とした標(しるべ)であることを、著者は、その該博な知識と卓越した見識を基に分かりやすくかつ感銘深く書き記しており、一気に読めてしまいます。

今回の我が国の防疫対応は、十全とは言い難いものの、結果としてはこの御誓文に示された精神(現実にも国民を均しく全体的に包摂し得た民主と寛容と平等の精神〔本書p.18〕)に沿うような形で行われています。

今回の防疫体制が「日本スタイル」と海外からいわれるゆえんはここにあります。

奇を衒わず、他国に付和雷同せず、日本の現状と日本人の国民性を鑑みて、現在の日本の法体系と社会基盤の制約の中で最善の策を取るべく努力を尽くした訳ですが、ただ、もし我々が初動から日本の確固たる国柄に基づくやり方で、決然と事に対処出来ていればという思いはどうしても残るのです。

それが、今回の我が国の対応に対する漠然とした不満の正体であろうと私は思います。

もし、私達が、いわゆる戦後民主主義の立場で、このウィルス対応に当たるのであれば、外出自粛など国家による個人の行動規制・人権抑圧などもっての外、スウェーデン型の病気に罹って集団免疫の獲得を目指すのが当然の帰結のはずでしょうが、そうとはならなかったのです。

むしろ、その対応の甘さをマスコミが詰問したことは、本当の意味で私達が心の支え・底力としていた物とは何だったのか、何が日本人の真実だったのかを明確に示していると思います。

そして、日本人の真実とは何か、その問いに答えるのが本書なのです。この国難に相対し、強く揺るがぬ心を持ちたいと願う方すべてに、この『五箇条の御誓文の真実』を推薦いたします。

伊藤哲夫・著
『五箇条の御誓文の真実』
致知出版社・刊
「今われわれに真に求められているのは、新たな方向性を与え、それに向けてわれわれを鼓舞し得る根本的な精神であり、希望ではないか」

石原志乃武(いしはら・しのぶ)昭和34年生、福岡在住。心育研究家。現在の知識偏重の教育に警鐘を鳴らし、心を育てる教育(心育)の確立を目指す。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会幹事。福岡黎明社会員。

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