令和元(西暦2019)年6月29日、大阪で開催されるG20(20カ国首脳会議)に合わせ、中国共産党政権の独裁政治と人権蹂躙に抗議する集会とデモが大阪市内で開催された。チベット、ウイグル、南モンゴル、香港など各国(地域)から約1,000名が参加した。
「Justice20実行委員会」主催による集会はG20が開催されている大阪市内で開かれ、ウイグル人の著名な活動家であるラビア・カーディル自由インド太平洋連盟会長や、ショブチョード・テムチルト世界南モンゴル会議クリルタイ会長などが登壇。日本人支援者を含む250名が参加した。
参加者らは集会場となった大阪市中央会館を出発し、心斎橋から難波交差点へかけてデモ行進した。デモの参加者は1,000名に膨れ上がり、大阪市民や外国人観光客を驚かせた。
「Justice20実行委員会」によるアクションは、昨年結成された一般社団法人自由インド太平洋連盟が呼びかけた。これほど多くの民族が団結して抗議活動を行なったことは極めて異例だ。同連盟副会長である石井英俊氏が発案し、文字通り東奔西走して実現に漕ぎ着けた。
中国共産党に要求する「20の正義(Justice)」
「Justice20実行委員会」は集会やデモを通じて、中国共産党政権に対し以下の20項目の要求を突きつけた。
(01)中国政府は、ウイグル(東トルキスタン)における全ての強制収容所を閉鎖し、収容者を釈放せよ
(02)中国政府は、言論、表現、結社の自由を認め、民主化運動への弾圧をやめよ
(03)中国政府は、信教の自由を保証せよ
(04)中国政府は、台湾への武力威嚇を止め、武力による併合政策を放棄せよ
(05)中国政府は、香港での一国二制度の国際公約を守り、言論弾圧を止めよ
(06)中国政府は、南シナ海および東シナ海への武力による侵略をやめ、不当に占拠している全ての領土を放棄せよ
(07)中国政府は、チベット、東トルキスタン、南モンゴルへの侵略行為を謝罪し、民族自決権を承認せよ
(08)中国政府は、不当逮捕しているチベット人タシ・ワンソク氏、ウイグル人イリハム・トフティ氏を釈放せよ
(09)中国政府は、王宇氏を始めとする人権派弁護士、活動家への弾圧をやめ、不当に拘束している全ての良心の囚人を釈放せよ
(10)中国政府は、正当なパンチェン・ラマ11世であるゲンドゥン・チューキ・ニマ氏を釈放せよ
(11)中国政府は、ドナーの同意なき非人道的な臓器移植を停止せよ
(12)中国政府は、ダライ・ラマ法王をはじめとする高僧の転生の認定に干渉するな
(13)中国政府は、アジア民衆の水源であるチベットでの環境破壊を停止せよ。
(14)中国政府は、チベットでの核廃棄物処理をやめよ。
(15)中国政府は、草原の砂漠化につながる環境破壊をやめよ。
(16)中国政府は、地下資源の乱掘による環境破壊をやめよ
(17)中国政府は、難民条約を順守し、北朝鮮難民の逮捕や強制送還をやめよ
(18)中国政府は、不当に逮捕している日本人商社員を釈放せよ
(19)中国政府は、ダライ・ラマ法王のチベット無条件帰還を認めよ
(20)中国政府は、民主主義に基づく選挙を行い、各民族の自決権を実現せよ
G20前に中国が日本政府に圧力
国家主席就任後、初来日する習近平の面目を保つべく、中国政府は外交ルートを通じて日本政府にウイグル人らによる抗議活動を行わせないよう圧力をかけていた。
G20を前にして、ウイグル運動の象徴的人物であるラビア・カーディル女史(米国在住)の日本入国が許可されるか否かが取り沙汰されていたが、日本外務省は「特にビザ発給を止める理由(法的根拠)がない」として直前にビザを発給していた。ラビア・カーディル女史がJ20に参加したことで、在日ウイグル人が100名以上駆けることになった。
自民党所属国会議員の中には「安倍首相がホストを務める国際会議で、中国国家主席に恥をかかせるべきではない」などとJ20実行委員会の計画を批判する動きもあった。
「香港を孤立させるな」
今回のJ20実行委員会による対中抗議活動には、香港の独立運動家である陳浩天(アンディ・チャン)氏がサプライズゲストとして参加した。
陳浩天氏は2016年に香港独立を掲げて「香港民族党」を結党したが、同年の香港議会選挙への立候補資格を剥奪され、2018年には政党としての活動を禁止されている。これは中国「返還」後、初めての処分だった。
香港からは陳浩天氏だけでなく、2019年6月に行われた最大200万人規模の「逃亡犯条例反対デモ」を主催した学生ら約50名が来日し、J20実行委員会による抗議活動に参加した。これに対してチベット、ウイグル、南モンゴルなどの人権活動家らが連帯の意思を表明している。
「悪の帝国」がアジアに拡張している
J20に参加した外国人たちは異口同音に「中国共産党政権を打倒せねばアジアに平和は来ない」と主張した。中国が世界第2位の経済大国として繁栄を極める裏側で、異民族に対する政治的圧迫と人権蹂躙は悪化の一途を辿っている。
そのような中で、彼らがアジア最大の自由・民主主義国家である日本にアピールの場を求めたことは重大だ。彼らは、日本が第二次大戦の結果に縛られ、国際社会における自主性を喪失している実情を理解した上で、日本が脱皮して中国の独裁政権に対抗するよう求めている。
それは「日本も尖閣諸島問題などで中国の拡張主義に脅かされている」という登壇者の指摘からも明らかだ。ウイグル、チベット、南モンゴル、そして香港における殺戮と恐怖政治が、台湾や日本に対する侵略的軍事行動に繋がっているというわけだ。
G20に先立つ6月27日の日中首脳会談において安倍首相は「香港の最近の状況に関し、引き続き一国二制度の下、自由で開かれた香港が繁栄していくことの重要性」「いかなる国であっても、自由、人権の尊重や法の支配といった国際社会の普遍的価値が保障されることの重要性」を指摘したという。(日本外務省公式サイト)
平成24年、自民党野党時代に日本ウイグル議員連盟が結成され、一議員であった当時の安倍首相はその顧問に就任するなど、ウイグル問題に強い関心を持っていた。しかし同年末の政権交代以降、日本ウイグル議員連盟は目立った活動を行なっていない。
(撮影・森本毅篤氏/文・本山貴春)
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