丸山議員へ辞職勧告の動き 戦争について議論すら許さないのか

国際
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令和元年5月15日、日本維新の会は国会議員団役員会で、北方領土返還に関連して問題提起し、除名処分とした丸山穂高衆院議員について、辞職勧告決議案の衆院への提出を与野党に呼びかける方針を決めた。朝日新聞が報じた。

丸山穂高議員「言論府が自らの首を絞めるのか」

この報道に対して、丸山穂高議員は自身のツイッターへ以下のように投稿した。いずれも5月15日の投稿で、読みやすいように一部段落を改めた。

憲政史上例を見ない、言論府が自らの首を絞める辞職勧告決議案かと。提出され審議されるなら、こちらも相応の反論や弁明を行います。ただ問題は、議運委や本会議では本人からの弁明機会の機会すら無い。その場合には、この機会にyoutube等で自ら国内外へ以下の様々な配信を。

過去、可決は鈴木宗男氏など逮捕や起訴案件で3件あるが、発言等に関する提出など1例もなく、まさに言論府が自らの首を絞める行為に等しい。

野党側の感情論で議案が出され、普段は冷静な与党まで含めて審議へ進むなら、まさにこのままではこの国の言論の自由が危ぶまれる話でもある。

北方領土問題を含め日露外交の問題から、与野党の議場で不問になっている過去の他議員不祥事、提出に賛成するというなら維新も含めた各会派の問題点も同時にこの機に世に問いかける形に。

いずれにしろ自分自身、毎期毎期次の当選などより常にその任期を全力でやってきた。

今回の件で不適切性や配慮を欠いていたことについて認め、撤回と謝罪するのは当然。また今多くの方に、北方領土や防衛についてどうあるべきか考えて頂けている中、これ以上荒立てるつもりはないのだが。

議会案件で言われたまま黙り込むことはしない。その機に国内、国外へ向けて様々発信で申し述べるし、可決されようがされまいが任期を全うする。

団長との議論、追加情報

また、問題となった訪問団長とのやりとりについて追加の音声データが公開された。まだ全部とは言えないが、逐次採録する。

丸山穂高議員:「今日行ったお墓は、本当に骨が埋まっていないんですよね」
元島民・訪問団長:「と私は思っているんです。もしあれでしたら千島連盟の担当者に確認します。ここではわかりません」
丸山穂高議員:「それはおかしいでしょう」
元島民・訪問団長:「骨があるかないかは、それは掘り返したわけじゃないから分かりません。(国後島の)古釜布に住んでいた人たちは、おれたちの墓はここじゃないと言っているわけですよ。違うところだと言っているわけですよ。それをいま、千島連盟で調査をしようということを言っております」
丸山穂高議員:「団長は、戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか?反対ですか?」
元島民・訪問団長:「戦争で?反対…」
丸山穂高議員:「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはOKですか」
元島民・訪問団長:「いや、戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
丸山穂高議員:「でも取り返せないですよね」
元島民・訪問団長:「いや、戦争したって…戦争するべきではない」
丸山穂高議員:「戦争しないとどうしようもなくないですか? 僕らはその、いいならいいし…」
元島民・訪問団長:「…戦争なんてやめてください」
丸山穂高議員:「何をどうしたいんですか」
丸山穂高議員:「何をですか」
丸山穂高議員:「どうすれば」
元島民・訪問団長:「どうすれば、って何をですか」
丸山穂高議員:「この島を」
元島民・訪問団長:「それを私に聞かれても困ります。率直に言うと、返してもらったら一番いい」
丸山穂高議員:「戦争なく?」
元島民・訪問団長:「戦争なく。戦争はすべきではないと思います。これは個人的な意見です」
丸山穂高議員:「なるほどね…。(※)」
元島民・訪問団長:「早く平和条約を結んで解決してほしいです」

音声の最後の部分は周囲の騒音もあって、丸山議員がなんと言ったか判別が難しいが、団長の「戦争はすべきではない」という発言に対して声のトーンも含めて(※)「なるほどね…。やっぱそうだよね…」と言っているように聞こえた。

渡航の目的は墓参りなのに骨がない?

まず会話の全体(少なくとも現時点の公開部分のみだが)をみるに、戦争云々の話が出る前に「日本人の本当の墓がどこにあるかわからない」という衝撃的事実があった。

そもそも北方領土へ元島民(正確には現在も島民とすべきだが)が渡航する最大の目的は、自家の墓参りではないのか。

昨年NHKが元島民にインタビューした際、島民は「墓地も4島で52か所もあります。今では道路もなく、墓地の場所が分からなくなったところもあります。元島民で作る千島歯舞居住者連盟では、墓地の調査と墓地へのアクセスの道を整備することなどを政府に要望しています」と述べている。

上記インタビューの中で島民は、ロシア側が「人道的措置」として認めているビザなし渡航では時間的制限や許認可問題があり、老朽化が進む墓の修復が難しいことを嘆いていたのだ。

「ビザなし渡航」は国家主権の問題

旧ソ連時代、島民が墓参りのためにビザ(査証)を取得して北方領土へ渡航したことがあった。

日本が主権を主張する地域に、日本国民が他国のビザを取得して渡航するという行為は、自国の主権を自ら否定するに等しい。そこで日本政府は国民にソ連のビザを申請しないように呼びかけた。

そして平成3年、ソ連のゴルバチョフ大統領が来日し、日ソ共同声明に「日本国民によるこれらの諸島訪問の簡素化された無査証の枠組みの設定(中略)を近い将来とる」という両国の方針が盛り込まれ、翌年から日露住民の相互訪問が開始されている。

なお、日本側はこのビザなし交流事業を「四島返還への地ならし」と位置付けているが、ロシア側にそのような認識は全くなく、「日本人観光客」を誘致して地域経済振興を図ることしか考えていないとされている。

丸山議員への悪辣な人格攻撃

丸山穂高議員の「団長は、戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか?反対ですか?」という問いかけは、このような現状に対して強い義憤に駆られたものであったことがわかった。

マスメディアを中心に「丸山議員はもともと酒癖が悪く、たびたびトラブルを起こしている」などと人格攻撃を行なっている。酒を飲んで団長と会話したことについては議員本人も謝罪し、日本維新の会へ離党届を提出するに至った。(党は受理せず除名処分)

しかし発言そのものについては、戦争による解決の是非について交流団の団長に問いかけただけであり、音声を聞いても朝日新聞が「詰問」と表現するほどきつい物言いではない。「丸山議員が戦争すべきと言った」などと批判する論者も多いが、明らかにフェイクだろう。

「元島民の団長に対して失礼だ」という意見もあるが、私は若い野党政治家らしい勇気ある問いかけだったと考える。こんなことで若い政治家の将来を断つことは、日本の国益を損なうだろう。丸山議員が政治家として適格か否かを決められるのは選挙民だけである。

このような酒席での「議論」を理由に「議員辞職」を求めるとは、狂気の沙汰としか言えない。

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主な内容:なぜ私はネット選挙を解禁したのか/日本核武装論とパブリックリレーション/北朝鮮による拉致は侵略戦争である/国と地方の権力構造/互助共同体仮説 流血なき内戦を戦え/日本政治のポジショニングマップ/三島由紀夫は何と戦ったのか

本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。

本山貴春

(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡大法学部卒(法学士)。CATV会社員を経て、平成23年に福岡市議選へ無所属で立候補するも落選(1,901票)。その際、日本初のネット選挙運動を展開して書類送検され、不起訴=無罪となった。平成29年、PR会社を起業設立。著作『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』『恋闕のシンギュラリティ』『水戸黄門時空漫遊記』(いずれもAmazon kindle)。

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