「良い会社」の定義とは?「はたらく」ことの意義を問い直す

「良い会社」とは、どのような会社を指すのだろうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが自社の新入社員に対して行った意識調査アンケートの結果が公表されている。

平成29年度(2017年度)の結果(男女合計)によると、今の会社を選んだ基準として最も多かった回答が「雰囲気が良い」であった。その後に、「仕事のやりがいがある」「業績が安定している」という回答が続いた。

業績が安定しているという状態は、数字の面から客観的な判断が可能だ。一方、「雰囲気」「やりがい」という要素は多分に主観的なものであるが、やはり一つの組織を選ぶ基準として重要なものである。

毎年、新規学卒者に人気のある就職先のランキングが発表される。下図は、ある就職サイトの集計によるものだが、いずれも、いわゆる「業界大手企業」が名を連ねている。

<2018年卒就活生就職希望ランキング>

1位 みずほフィナンシャルグループ 6位 サントリーグループ
2位 三菱東京UFJ銀行 7位 伊藤忠商事
3位 ANA 8位 東京海上日動火災保険
4位 JAL 9位 三菱商事
5位 三井住友銀行 10位 JTBグループ

【出典:キャリタス就活2018】

一方、転職者の希望就職先ランキングは次のとおりである。
 
 <2017年転職人気企業ランキング>

1位 トヨタ自動車 6位 楽天
2位 グーグル 7位 JAL
3位 ソニー 8位 Apple Japan
4位 ANA 9位 サントリーホールディングス
5位 パナソニック 10位 JR東日本

【出典:DODA】

転職希望先についても、新卒の就職希望先同様に大手企業が上位に入っているが、内訳と比較して気付く点がある。

先ず、ANAとJALが新卒、転職共に名前が挙がっていること、そして新卒の希望ランキング10社中、3社有った金融・保険企業が、転職の方では1社も入っていないことである。転職ランキングの順位は100位まで示されているが、金融については、52位の野村證券の登場を待たなければならない。

「7・5・3」という表現がある。もちろん、子どもたちの通過儀礼であるそれではない。厚生労働省が公表している新規学卒者の離職状況の割合のことだ。

中学、高校、大学(4年生)を卒業した生徒、学生の3年目までの離職率推移は、直近3年間で次のような状況である。ほぼ「7・5・3」に近い状況で、いずれも数値の取れる平成8年以来、若干の前後はあるものの、ほとんど変化はない。

<離職率推移(%)>

平成24年3月 平成25年3月 平成26年3月
中学 65.3 63.7 67.7
高校 40.0 40.9 40.8
大学 32.3 31.9 32.2

【厚労省データ】

人材派遣の規制緩和に於いて潮目が変わった法改正が、平成11年(1999年)当時の小渕政権下での「対象業務の原則自由化」、第二次小泉内閣の平成16年(2004年)、「製造業務への派遣解禁」であると言われている。

企業のアウトソーシング化や派遣ニーズの高まりを受けてのことであるが、これと歩調を合わせるかのように拡大した業界が人材サービス産業だ。

人材サービス産業(ここでは求人広告、職業紹介、派遣、請負の4職種)の市場規模は、9兆539億円であり、介護サービス業よりも大きくなっている。

<産業市場規模比較>

【出典:「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」】

人材サービス市場の活性化により多様な働き方が生まれた一方、非正規雇用の増加により労働環境が不安定化した側面もある。パート、アルバイトなど非正規雇用者の割合が正規雇用者との合計に占める割合は今や、37.5%を占めるに至っている。

また派生的な問題も顕在化した。子育て世代の貧困である。

ある統計によると、子育て世代の親の貧困率は全国で、過去20年の間に約14%にまで上昇しているということだ。

本来、日本人にとって働くことは、文字通り「傍(はた)を楽(らく)にする」ことであったはずだ。つまり時に自分を犠牲にしてでも相手のために尽くすという、古代より日本人の遺伝子に内在している「美徳」である。

それが「ブラック企業」「ブラックバイト」という言葉で表現されるように昨今は、本来美徳であった働くことが「悪徳」に取って代わられてしまっている。

私は決して過剰な長時間労働を肯定するものではないし、まして「過労死」などは論外である。しかし、誤解を恐れずに言えば、中小・小規模事業者にとって、労働時間は生命線と言っても過言ではない。もちろん、IT機器の導入など含めて、生産性の向上には常に取り組むべきであろう。しかし、どうしても人の手に由らなければ成し得ない仕事というものが、必ずある。

子どもは親が懸命に、誰かの、何かのために働く姿を見て、親に対する尊敬の念を生ずる。ワークライフバランスなど、個人の生活と仕事との調和が図られる昨今、「はたらく」という行為そのものについて、教育の場を含めて認識を新たにする必要があると考える。

安部有樹(あべ・ゆうき)/昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。現在、外国人技能実習生を受け入れる管理団体に勤務するかたわら、社会的な問題解決のための提言を続けている。

関連記事

  1. 問われる大学の存在価値 単なる就職予備校で良いのか

  2. ゆとり教育が企業にもたらした混乱「それでも日本人を雇いたい」

  3. 「連合離脱」で衝撃を与えた化学総連 なぜ離脱し、その後どうなったか

  4. 豪華版のカプセルホテル?話題の「ファーストキャビン」に泊まってみた

  5. 海外からの投資を呼び込むことで、国を豊かにする逆転の発想とは

  6. 日本企業が外国人留学生を「労働力」としてアテにすべきではない理由

  7. 外国人と交渉する前に押さえておきたい、神話にみる「契約」の違いとは

  8. 誤解されている「政教分離」、国教を定めている国も意外に多い?

  9. 政府が進める「高度外国人材」受入制度の実態 日本経済への影響は?

タイアップ記事

PAGE TOP