「猫のサブスク」を巡り激論 法令違反との指摘も

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令和4年12月15日に株式会社のら猫バンク(岡本武之代表)がリリースした「ねこホーダイ」という会員制サービスを巡り、SNSでは批判や擁護の応酬が巻き起こっている。「ねこホーダイ」は月額380円で保護猫を引き取ることができ、月額を払い続ける限りいつでも手放すことができる、と謳っている。

「ねこホーダイ」について、日本維新の会の音喜多駿参院議員は自身のTwitterで以下のようにコメントした。

極めて問題が大きいもので、動物愛護法に抵触する恐れがあります。週明けに担当省庁に確認して、対応に動きます。動物は物ではなく、「状態」によって引き取り可否を判断するものではありません。これは酷すぎる。

音喜多駿Twitter

動物愛護法には以下のような条文がある。

動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。

動物愛護法第7条4項

立憲民主党の石川大我参院議員は、「ねこホーダイ」に関して環境省にヒアリングを行った。環境省はヒアリングに対して「(動物愛護法上は)終生飼養義務はあるが罰則規定がない」と回答したという。

のら猫バンクの公式サイトには以下のように記載されている。

「猫を飼うなら一生責任を持って面倒を見る」これは当たり前のことですが、それだと高齢者や単身者は中々飼うことができません。それならその「責任」を誰かが代わりに負えばいいのではないか、そんな思いで作られた「人と猫をつなぐプラットフォーム」それが会員制サービス『ねこホーダイ』です。
(中略)
会員様は提携シェルターの猫を無料で譲り受けることができます。面倒な審査やトライアルもなく高齢者や単身の方でも大丈夫です。
また、会員様が飼っている猫を飼えなくなった場合に、提携シェルターに無料で引取ってもらうことができます。

ねこホーダイとは

「猫のサブスク」とも呼ばれているサービス内容だが、他にも法令違反の疑いが指摘されている。動物愛護法では、営利目的(販売など)で動物を取り扱う場合は「第一種動物取扱業の登録」、非営利の場合(保護や譲渡など)は「第二種動物取扱業の届出」が自治体に対して必要とされている。

特に営利目的の第一種動物取扱業に登録するためには、「1名以上の常勤かつ専属の動物取扱責任者を配置」する義務がある。動物取扱責任者は、獣医師または飼養施設で半年以上の実務経験を持つ有資格者でなければならない。

立憲民主党の塩村あやか参院議員はねこホーダイの運営会社と提携先シェルターについて以下のように指摘している。

東京都、千葉県、千葉市、船橋市、柏市にはプレスリリースに掲載されているとされるシェルター名で、第1種・2種ともに動物取扱業の登録がされていないことが確認できました。東京都については、のら猫バンクでの登録もありません。

つまり、無登録で営業を開始している事になる。話の整理が必要な案件でややこしいのだが、シンプルな構図とすれば、無登録営業の場合は第1種で100万円以下、2種で30万円以下の罰金です。

塩村あやかTwitter

一方で、一部には運営会社を擁護する声もある。実業家のひろゆき氏は自身のTwitterで、サービスへの批判の声を報じるニュース記事などを引用し、以下のようにコメントした。

引き取り手のない猫をシェルターから引き取る人を増やさないといけない事がわからないお気持ち優先派。 猫レンタルの形でも飼える人を増やす苦肉の策です。 猫レンタルを減らしたいなら、シェルターから猫を引き取りまくればいいだけです。 口だけでなく行動でどうぞ。

日本で誰にも引き取られなかったネコは、2020年に2万3764匹殺されました。 猫がストレスで体調を崩すぐらいなら、殺された方が良いと考えるのですね。 お気持ち派の人達の感情は猫の命よりも重いご様子。

例えば、愛猫が亡くなった65歳の人がシェルターから保護猫を引き取ろうとしても「高齢なので後見人が居ないと引き取れない」と言われたりします。 10年後に人間だけ亡くなるリスクもありますが、飼育経験もある人が保護猫を引き取れない状況を「レンタル猫」で解決出来るなら殺処分が一匹減ります。

ひろゆきTwitter

過去に「ホームレスや生活保護の人より猫が大事」などと発言し、炎上・謝罪に追い込まれたほどの愛猫家として知られるメンタリストDaiGo氏も自身のTwitterで以下のように述べている。

ねこホーダイはサービス利用者の審査と罰則を徹底すれば いわゆる【預かりボランティア】と同じ構造にできると思うので、システムがしっかりしてるなら賛成/デポジットで30万くらい取って猫が無事でないと返金しない等/頭ごなしに批判する前に/保健所の猫虐殺を止めるのが先

ねこホーダイっていうネーミングと、寄付とか支援ではなくサブスクって言ったのが批判された原因な気がしますね。 もっと猫の保護数を増やしたいという、やりたい事は悪くないと思います。

メンタリストDaiGo Twitter

一般的に、猫は環境などの変化にストレスを感じる傾向が強いとされており、「ねこホーダイ」の利用者がサブスク感覚で頻繁に飼い猫を交換してしまうと、猫が強いストレスを受け続ける可能性もある。

一方で、猫の殺処分数は令和2年度だけで19,705匹に上る(環境省/全国)。長期的には減少傾向にあるとはいえ、犬の殺処分数と比べて5倍近い。

そもそも「ねこホーダイ」がビジネスとして成立するのかも不透明だ。

12月27日時点で公式サイトには9匹の保護猫が掲載されているが、その全てが猫白血病・猫エイズの検査済み、マイクロチップ登録済み、寄生虫駆除薬投与済み、ワクチン接種済みで、不妊手術後に希望者へ引き渡すこととされている。

これら検査や投薬、不妊手術などは保護猫を飼い始める際に欠かせないものだが、人間と異なり公的医療保険制度がないため、数万円の費用がかかる。一部の自治体では助成制度もあるが、果たして月額380円で事業を継続できるのか。

SNSで炎上し、環境省や自治体を巻き込む騒動になっているが、現時点で運営会社は公式コメントを発表していない。

1月2日追記

株式会社のら猫バンクは12月29日付けで「ねこホーダイ」のサービス停止を発表した。既存の会員については会費の返金または決済キャンセルを行う、としている。

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