「令和3年12月家族の法制に関する世論調査」が令和4年(西暦2022年、皇暦2682年)3月25日に内閣府のホームページで発表された。
その結果、①全ての年代の女性と30代以上の全ての年代の男性の過半数が「名字」を「個人の名前」とは捉えていない、②10代・20代の男性についても「名字は家の名前」と解釈している者が過半数を超えている可能性が高い、③いわゆる「選択的夫婦別姓」には性別を問わず全年代で賛成派は半数未満、と言うことが判明した。
特筆すべきは、女性も全年代でいわゆる「選択的夫婦別姓」賛成派が半数未満であること、また、若い世代ではむしろ女性の方が「名字は家の名前」と言う意識が強いこと、と言った点で「家制度=女性差別」という従来左翼勢力によって宣伝されてきた主張が現実の女性、特に若い女性の意識と乖離していることが明白に示された形だ。
「名字は個人名の一部」学生・若い男性に限定
同調査の「家族と名字・姓に対する意識」では名字についての認識について「先祖から受け継がれてきた名称」「夫婦を中心にした家族の名称」「他の人と区別して自分を表す名称の一部」「単なる名称にとどまらない、自分が自分であることや人格の基礎」の4つの選択肢から複数回答可で調査。
このうち、「先祖から受け継がれてきた名称」と「夫婦を中心にした家族の名称」とが「名字は家の名前」という考え、「他の人と区別して自分を表す名称の一部」が「名字は個人名の一部」という考えであると言える。
性別・年代別の調査結果を見ると、30代以上の全ての年代で「他の人と区別して自分を表す名称の一部」と回答した者は半数未満に留まり、特に30代女性の間では37.4%のみの支持となった。
一方、40代では同じ回答をした男性が40.3%なのに対して女性は47%で、60代と70代以上でも女性の賛同者の方がやや多いことから、女性の中ではむしろ年配の方が「名字は個人名の一部」との意識が強い傾向が伺える。
20代以下の中では「他の人と区別して自分を表す名称の一部」と回答した女性は48.2%に留まるのに対して男性では52.2%。「名字は個人名の一部」との認識が過半数となったのは20代以下の男性に限定されている。
またこの回答は複数回答可であることから、「他の人と区別して自分を表す名称の一部」と回答している者の中にも「名字は家の名前」と言う認識を同時に持っている者が少なくないことが推察される。
重複回答の内訳が公表されていた中では最新の調査である平成29年(西暦2017年、皇暦2677年)の調査では全ての年代で「名字は家の名前」と回答していたものが8割を超えていた。
過去の調査とは対面で行われていないなどの大幅な調査方法の変更があった他、過去の調査には無かった「単なる名称にとどまらない、自分が自分であることや人格の基礎」の選択肢の追加や従来公表されていた重複回答の割合が今回は非公表となっているなど、過去の調査とは比較が著しく困難なとなっている他、重複回答から見えてくる具体的な分析も困難なものとされている。
家庭解体のための世論捜査の為でなければ幸いである。
「従業上の地位」別でもほぼ全ての階層で「名字は個人名の一部」との認識は半数未満であったが、唯一、学生のみが56.9%の支持をしていた。一般に学生や若い男性は結婚を意識することが少ないことが影響している可能性もあると考えられる。
もっとも「先祖から受け継がれてきた名称」と答えた学生は37・9%、20代未満の男性でも37.7%であることから、重複回答の割合が不明なものの「夫婦を中心にした家族の名称」と回答した者(学生19.8%、20代以下の男性22.6%)と合わせると「名字は家の名前」との認識している者が学生や20代以下の男性の間でも過半数を超えている可能性は高い。
性別・年代問わず「選択的夫婦別姓」広がらず
いわゆる「選択的夫婦別姓」の賛同者は年代・性別を問わず半数未満であり、全体では28.9%と3割を下回った。
これは「従業上の地位」別でも同様で、「名字は個人名の一部」との回答が多かった学生においても「選択的夫婦別姓」への支持は40.5%に留まり「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」と答えた45.7%を下回った。
また、現役労働者である雇用者で「選択的夫婦別姓」賛同者は35%に留まり、正規雇用者は36%、非正規雇用者は32.6%と職種を問わず支持は広がっていない。
主婦・主夫となると24.3%と大幅に賛同者が減る。雇用者や主婦・主夫の間で支持を集めたのは「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」(雇用者45.5%、主婦・主夫41.4%)であった。
これらのことから現役労働者や主婦・主夫の間で求められているのは婚前氏の通称使用であって、同一戸籍同氏の原則を否定する「戸籍婚における選択的夫婦別氏」や戸籍以外のあらゆる身分証明書の名字を婚前氏に画一時に統一する「婚前氏続称制度」では無いことが判る。
これらについては「名字は家の名前」とする考えが根強いことからも裏付けられる。
都市規模別や家族構成別、結婚歴別でも「選択的夫婦別姓」支持者が過半数を超えている層は存在しなかったが、唯一「現在の結婚状況」別では「未婚で同居パートナーあり」と答えた層のみが「選択的夫婦別姓」に57.7%賛成と過半数を超えていた。
こうした層については「戸籍婚における選択的夫婦別氏」や「婚前氏続称制度」でなくても、同一戸籍同氏と夫婦別氏の両立を図る筆者提案の「婚姻制度選択制」(夫婦別籍解禁)の選択肢が存在すれば賛同していた可能性がある。
なお「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」と回答した者の内、夫婦別氏を「希望する」と答えた者は30.4%であり、全体的に見ると約8.8%のみが希望している計算になる。女性に限定しても夫婦別氏の利用を希望している者は全体の約10.2%に留まる。
但し「未婚で同居のパートナーあり」の層では全体の約26.7%が夫婦別氏の使用を希望している。これも3割未満ではあるものの、いわゆる「事実婚」カップルの一部には夫婦別氏希望者がいることが判る。
「家名存続」望む世論と少数派の権利の両立を
今回の内閣府調査ではいわゆる「選択的夫婦別姓」賛成派が少ないことが明らかになった上に、夫婦別氏希望者は圧倒的少数派であることが示された。
その背景には「名字は家の名前」と言う考えが国民の間で根強くあることが判る。特に若い世代ではむしろ女性の方が「名字は家の名前」と言う認識を強く持っており、「家制度=女性差別」と言う主張は若い世代の間では通用し得ないことを示している。
一方で「未婚で同居のパートナーあり」の層では「選択的夫婦別姓」賛成派が過半数を占めており、実際に希望する者も少なからずいることが明らかになった。
日本は「家族国家」の理念によってできた国であり、「家名存続」を求める世論は歓迎すべきことである。しかしながら、少数派からのニーズについても検討する必要がある。
今回の調査を受けて政府や企業には現役労働者から強い要望のある「婚前氏の通称使用」拡大が求められるであろう。
また「家名存続」を求める世論と「選択的夫婦別姓」を希望する少数派の権利とを両立させるためには、同一戸籍同氏の原則と選択的夫婦別氏とを両立させる「婚姻制度選択制」(夫婦別籍解禁)が有用であると考える。
夫婦別籍については国際結婚が(外国人は戸籍に入れないため)事実上の夫婦別籍であり、制度変更に伴うコストも最小で済むほか、国際結婚における夫婦別氏に反対する者も殆どいないことから世論の反発も少なくなる。
今後は「家制度=女性差別」と言う左翼思想による歪んだ認識に捉われることなく、「家名存続」を望む世論を前提に冷静な議論が求められる。
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