平成29年9月9日、NPO法人「夢・大アジア」理事長の石井英俊氏は福岡市内で講演し、近年香港で勃興しつつある「香港独立派」の運動について報告した。
アジア問題専門家の石井氏は今年7月、香港民主派との連携を探るべく香港入りし、中国共産党の弾圧に喘ぐ民主派活動家らとの交流を深めた。
わが国ではあまり知られていないが、石井氏が特に警鐘を鳴らす事実がある。それは、香港の民主派が「反日ナショナリズム」を扇動し、中国共産党に対する反体制運動に利用している、という事実だ。
香港民主派の反日ナショナリズム運動に関しては、産経新聞のオピニオン誌「正論」10月号に石井氏が『香港にも慰安婦像が建っている理由』と題して香港民主派の「反日ロジック」を解説している。
中国共産党政府は、国民の利益と人権を守るためにも、もっと尖閣諸島問題や慰安婦問題で、日本を批判すべきなのだ。にも関わらず、中国政府は日本に遠慮して、人権や領土を守ろうとしていない。(中略)「民主派」は愛国反日の名のもとで中国政府を批判しているわけだ。(正論10月号174頁)
わが国の保守論壇には、中国共産党による帝国主義的支配を批判し、周辺地域の分離独立を支持する声がある。香港の民主化も「反中国共産党」という意味では連携できる筈だが、その民主派が「反日ナショナリズム」を掲げてきた。
石井氏はそのような現状を前に、日本こそ、香港の民主化運動を支援すべきだと断言する。近い将来、中国において民主革命が成功し、民主的な中国に生まれ変わった際、その国が反日国家にならないように今から布石を打つべき、というわけだ。
実際に、米国は中国共産党と外交関係を結びつつ、密かに香港などの民主化運動、東トルキスタンやチベットの独立運動を支援している。外交において複数のルートを確保しておく戦略は一般的な手法だが、わが国の外務省は中国共産党一辺倒なのだ。
香港民主化運動といえば、2014年の「雨傘革命」が記憶に新しい。雨傘革命は香港の行政長官を選ぶ選挙が形骸化し、中国共産党による統制が行われていることに民主派学生が反発して座り込みなどを行った運動である。
その雨傘革命以降、香港では「新しい政治情勢」(石井氏)が生まれつつあるという。それが、「香港独立派」の台頭だ。
彼らは「自分たちは中国人ではなく香港人」と考えており、香港人アイデンティティを強く打ち出している。(中略)過激な反日・中国ナショナリズムを振り回す一部の「民主派」と一線を画すこの「独立派」は、日本の保守派を含む世界の反共保守派との連携を求めている。(正論10月号179頁)
日本の政治情勢にも詳しい香港独立派の学生は、石井氏に対して「日本は憲法改正してパワーを持つべきだ」とまで明言したという。
石井氏は講演の最後に、これから日本が進むべき道について展望を述べた。
「われわれ保守派にもアジア全体の視野が必要。思想戦における敵基地攻撃能力を持とう。中国のアクションに反応するだけではダメで、逆にチベットや香港の問題を日本から突っ込むべきだ」
「香港が対中国共産党の最前線だ。それを支援するのが日本であるべき。日本はアジアにおける自由の砦になるよう求められている」
かつて日本には「玄洋社」などの民間団体がアジア各地の独立運動を支援した実績がある。戦後、それらの活動は占領軍によって全否定されたが、21世紀版のアジア解放運動が求められているといえよう。
本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。