岸田政権誕生の意味とは? 岸田氏を支持した小坪市議に聞く

政治
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令和3年9月29日に実施された自民党総裁選は岸田文雄氏が制した。保守派の多くが高市早苗氏を支持する中、保守系地方議員として知られる小坪慎也行橋市議は岸田氏支持を表明し、支援に乗り出していた。

そんな小坪市議に、岸田政権への期待と新政権誕生の意義を聞いた。

▽インタビューの模様は動画でもご覧いただけます。
https://youtu.be/XTjSycKuMAE

文責:選報日本/編集主幹 本山貴春

Q.総裁選は岸田氏が圧勝だったが、何か感想は?

岸田氏を支援する広島の地方議員たちから、「岸田票の最後の一押しになったのは保守票だった」と言われた。

保守派の大多数が高市氏を支持する中で、多くの批判を寄せられたが、最後まで岸田支持の旗を下さなかったからこそ、そう言ってもらえたことは誇りであり、重く受け止めたい。

Q.岸田政権は安定政権になりそう?

希望としては安定政権になって欲しいし、そのために応援した。実際に安定政権になるかは、人事次第だ。例えば、河野太郎氏を入閣させるのか否か、麻生太郎元首相や安倍晋三前首相との距離をどうするのかが問われる。

河野氏は党員票がトップで国民的人気があるし、保守派を入れなければ反政権に回ってしまい安定しなくなる。

Q.衆院選は乗り切れそう?

総裁選で自民党の露出が増えたし、これからも暫く人事などで露出が続くため、「御祝儀相場」もあって(多少議席を減らしたとしても)衆院選は乗り切れると思う。

Q.「古い自民党に戻るのでは?」という懸念についてはどう考えるか?

「古い自民党」が悪いものだとは思わない。どの時代の自民党に戻るかが問題で、宮澤喜一内閣ではなく池田勇人内閣に戻るのであれば、全ての日本人にとって良いことだと思う。

具体的には「新自由主義」の否定だ。「新自由主義」は小泉内閣の時に出てきたもので、安倍内閣(第一次)でも継承せざるを得なかったし、麻生内閣でも「新自由主義」から脱却できなかった。

今回は明確に「新自由主義からの脱却」を掲げて総裁選に勝利したので、岸田政権が国民所得を増やし、若い人たちに夢や希望をもたらす経済を目指すのであれば、それが「古い自民党」であっても願ったり叶ったりだ。

Q.「新自由主義からの脱却」はどのような政策に結びつくのか?

総裁選において岸田氏は見事な政策集を公表しており、文句のつけようがないほど素晴らしい内容だった。もし高市氏に話題がさらわれていなければ、インターネット上でもお祭り騒ぎになっていたのではないか。

宏池会(岸田派)はもともと官僚出身の国会議員が多い。「新自由主義といかに戦うか」という視点で、岸田陣営の政策集は実務的に完成度が高く、細かいところにまで行き届いている。誰も批判できない完成度だ。

是非「令和版所得倍増計画」をネットで見て欲しい。見てない人は損だと思う。

Q.財政出動を増やし、「大きな政府」にしていくということ?

単に財政出動を増やすのではなく、インフレ率だけのことでもない。個人の給与、可処分所得を増やすための政策など、かなり踏み込んだ指標を設けて具体的な対策を立てている。

例えば、保育士の給与水準が低すぎる問題に対して最低賃金を定めるなど、業界ごとに細やかな政策案を出している。だからこそ、党員票においてもかなりの「職域票」が動いた。

単なるスローガンではなく、貧富の格差を解消するために業界ごとの精緻な政策を作り、印刷物として大量に配布していた。非常に幅の広い、具体的な政策集だ。

経済政策については非の打ちどころがない。「さすが宏池会」と言うべきで、官僚出身議員の力を総動員して書かれたものだろう。

リフレ派などが要求する財政出動よりも高レベルの内容が、総裁選の前から入念に準備されていたと見るべきで、ネットユーザーにあまり知られていないのは勿体ないことだ。

Q.「官僚の言いなりになるのでは」という懸念については?

官僚が復権するのは事実だろう。岸田派は官僚出身者中心の集団だ。そもそも「官僚主導は悪」といわれることについて疑うべき。

私も行政ではなく立法側の人間なので、「政治主導」を言いたいが、はして官僚と同等の能力を議員が持っているのか。高学歴が偉いとは言わないが、衆院議員が1期(最長)4年しかないのに対し、官僚は30〜40年も勤める。

特定分野で、スペシャリストである官僚と撃ち合うのは相当難しい。私も政府の官僚とやり合ったことはあるが、彼らが全面的に間違っているかと言えばそうでもないし、官僚を全否定すべきではない。

「官僚主導が良い」とまでは言わないが、これまでの「政治主導」にも行き過ぎがあったのではないか。もちろん増税の話が出れば反対するが、財務官僚に限らず、岸田政権が全ての官庁と協力関係を結び、うまく使いこなせるなら成果は挙がる。

そもそも官僚を上手く使える国会議員は多くない。実務がわかっていないと官僚との交渉もできず、怒鳴って終わりになる。官僚と上手く付き合える政権なら、官僚の発言権が増すことはプラス材料になり得る。

Q.危機管理内閣としての力量は?

いま最も大事なことは安定政権を築くことだと思うので、岸田候補を応援した。来年の夏には参院選がある。衆院選は勝っても、参院選で負ければ最低3年間「ねじれ国会」になる。そうなれば民主党政権のように国会が止まる。

自民党内の派閥が入り乱れて、内部対立しているような時に、もし外国からミサイルが飛んできて時の政権が超法規的に対応せねばならないとなれば、自民党自体が保たない。

誰が首相になるかよりも大事なのは「党内融和」で、党のまとまりを維持していくことが、危機管理上もっとも重要だ。

私も政策的には高市早苗氏の主張に近いが、こんかい高市内閣ができていたとしても来年の参院選まで政権を維持できないと見ていた。法律1本作るにも、膨大なエネルギーが要る。

「スパイ防止法」など、是非いつか高市内閣に実現して欲しいが、現場を知る地方議員ほど「今じゃない」と考えたと思う。有事だからこその判断だ。

Q.最後にひとこと

リベラル派の岸田候補を応援したが、保守を裏切ったつもりはない。岸田内閣が完全な「左派政権」として成立することは阻止できた。

直接会った印象だが、岸田氏は「聴く力」がある方だと思う。一方で、しっかりした面もある。苦労して応援したからこそ、話を聞いてもらえる。今後は保守系地方議員として、ウイグルの問題など政権に要望していきたい。

高市候補が短期間で支持を伸ばしたのには、ネットの力も大いにあると思う。支援者を含め健闘を讃えたい。ただ、一部の保守系ネットユーザーが他の候補者を叩いたのは良くなかった。

岸田内閣に保守色を加えることについて、少しは貢献できたと思う。その点はご理解いただきたい。

小坪慎也(こつぼ・しんや)/昭和53年福岡県生まれ。九州工業大学工学部卒。平成24年、行橋市議会議員に初当選し現職。全国区の保守活動家として活躍。ブロガーとしても著名で、最大値で年間アクセス2億PVを稼ぎだす。ロビイストとして、国会議員への陳情は最大時で70事務所以上。持ち前のフットワークの軽さと実行力から、全国に活動家仲間・地方議員仲間が多い。救う会福岡副代表。ウイグルを応援する全国地方議員の会幹事長。

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