京都・久御山町で不法占拠されていた公有地、転売目的の払い下げか

京都
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京都府南部に久御山町(くみやまちょう)という人口1万5千人余りの小さな自治体がある。人口規模や面積こそ小さいが、この久御山町は京都府内唯一の地方交付税交付金の不交付団体となっている。

製造業を中心に約1600事業者が存在するほか、農業も盛んであり、九条ネギや淀大根などの産地としても知られている。

その久御山町で町有地が25年間にもわたって特定の個人によって不法占拠され続け、最終的に久御山町は「苦肉の策」として不法占拠者に土地を払い下ることによって解決したというのである。

「この町有地払い下げについて捜査当局が重大な関心を持っていることは間違いない」

ある町政関係者はこのように語る。

なぜ町有地の払い下げに捜査当局が関心を持っているのか。そこで、まず町有地が不法占拠され、払い下げるに至った経緯をみてみよう。

昭和36年に第二室戸台風という大規模災害が発生し、久御山町にも住宅を失う住民がでるなど甚大な被害が発生した。その後、久御山町では住宅を失った人のために町有地に仮設住宅が開設され、後にこの土地を不法占拠することになるX氏も入居することとなる。

仮設住宅はあくまでも被災者のための臨時の住宅である。当然、被災した入居者は府営住宅や公団住宅、民間の賃貸マンションなどに移っていくものであり、実際にX氏を除いて次々と退去していったのである。

しかしながら、建設業を営むX氏はこの町有地で重機を使った作業を行ったり、仮設住宅の跡地に勝手に建築物を構築したりし、この町有地に居座り続けたのである。

不法占拠が始まったのは久御山町の説明によると平成6年からだという。

この間、久御山町はX氏に土地の明け渡しと建物の取り壊しを求める交渉を続けたというが、X氏はこれに応じず不法占拠を続けたわけである。ところが、なぜか久御山町は何らの法的措置は取っていない。

平成28年にはX氏が死亡。X氏の妻にあたるY氏は引き続き、この町有地に住み続けたわけだが、久御山町は土地の明け渡し要求から方針を転換し、Y氏に土地を払い下げる交渉を行うようになった。

そして令和元年7月に久御山町とY氏が土地の払い下げ契約を締結し、8月には売買代金の支払いなども完了したため、Y氏が土地の所有権を取得したわけである。これによって25年間にわたる不法占拠状態は解消したわけである。

ところが筆者が不動産登記を取り寄せたところ土地の所有権を得たY氏は、わずか8日後に、この土地を第三者に転売していることがわかった。

払い下げられた土地は第三者にスピード転売されていた…

「久御山町の担当者がZ氏になってから急ピッチで話が進んでいった。Z氏の力量によって解決したのであれば何の問題もないが、もし町職員・Y氏・転売先の3者がグルになって町の土地を売ったのであれば汚職事件となる」
(久御山町の元職員)

そして久御山町議会の6月会議では芦田祐介議員(無会派)が一般質問でこの問題を取り上げたのである。芦田議員は、25年間にわたって不法占拠を許してきた久御山町の対応を批判した。

なぜ法的措置を取らなかったのかという質問に対しては、答弁では久御山町の住民であることや元々が被災者であることなどを挙げたが、到底納得できるものではない。

転売について町側はまったく関知していないし、Y氏が転売するつもりであったことも知らなかった、と答弁した。

しかしながら不動産登記を見る限り、随意契約によって払い下げられた土地がスピード転売されているのは「出来レース」のように見える。冒頭で書いたとおり捜査機関が関心を寄せているのも納得できる話しである。

Y氏が土地をスピード転売していることから相当な利益を得たと考えるのが極めて合理的である。地元住民は町有地を不法占拠していたY氏が転売によって利益を得るのはおかしいと激怒している。

また一般質問では町有地の不法占拠という由々しき問題について、これまで議会からも監査委員からも何ら是正を求める声がなかったことも明らかになった。

普通に考えて町有地を不法占拠されているのであれば、監査委員から適切な財産管理を求める勧告があってもいいはずである。歴代の監査委員は何をしていたのだろうか。

この一般質問では久御山町のホームページで録画映像が公開されているが芦田議員が監査委員について言及した部分について不自然に編集されていた。

「芦田議員が不法占拠問題について是正を求めなかった監査委員の対応を暗に批判したため、現監査委員と元監査委員が激怒して、町議会の議長に猛抗議したため不適切発言として議事録から削除されることになったからです」
(議会関係者)

これでは現監査委員と元監査委員の逆切れではないのか。自らの怠慢を指摘され、猛省するどころか議長に猛抗議するとは、一体を考えているのやら。久御山町では、この問題は触れてはいけないタブーだったのか。

いずれにしても捜査当局の動向が注目される。

辻猛(ペンネーム)自営業。久御山町で自治会役員などの地域活動を行う。

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