新型コロナ「緊急小口貸付」の窓口に電話してみた→すでにパンク状態

新型コロナウイルス感染症によって世界経済はリーマンショック以上の打撃を被ることが確実視されている。そのような中、先進各国は大規模な財政金融政策を次々に打ち出している。

日本政府もすでに複数の経済対策を実施しており、その柱は生活困窮者や経営者に対する「貸し付け」である。

まず前提として、今回の新型コロナによって直接ダメージを受けるのは、感染による重症化率と致死率が高い高齢者である。しかし感染者の発生や感染拡大防止措置によって経済活動が停滞し、経済的ダメージを受けるのは働く現役世代だ。

従って、いま緊急に必要な経済対策は現役世代のニーズに対応したものでなくてはならない。

すでに実施されている経済対策(企業向け)

企業向け支援策としては、資金繰り支援や各種助成金の強化が打ち出されている。特に中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)向けには専用相談窓口が設置され、各地の日本政策金融公庫支店や、商工会議所などが対応している。

中でも大きいのは中小企業信用保険法に基づく「セーフティネット保証制度」で、新型コロナを原因とする「最近1カ月の売上高が前年同月比20%以上減少」かつ「その後2カ月を含む3カ月間の売上高が前年同月比20%以上減少することが見込まれる」場合、「保証料不要で1.3%利子負担のみで借り入れが可能」となっている。

借り入れには審査があり、「売上高及び売上見込明細表」「売上高等の減少が分かる書類(残高試算表・売上台帳など)」の書類を新たに作成する必要がある。

すでに実施されている経済対策(個人向け)

個人向け支援策としては、新型コロナを原因とする休業・失業者向けに生活福祉資金(緊急小口資金・総合支援資金)の特例貸付が始まっており、各地の社会福祉協議会が窓口となっている。

「緊急小口資金」は個人事業主や休校に伴い休業した者には最大20万円、「総合支援資金」は2人以上の世帯で月最大20万円を最大3ヶ月借りることができる。

こちらも借り入れには審査があり、「所得課税証明書や収入の減少が分かる書類(銀行口座のコピーなど)」を準備した上で面談を受ける流れになっている。

今後の緊急経済対策はどうなる?

報道によると、「政府が四月に取りまとめる新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策の大枠が25日、判明した(東京新聞)」という。

その骨子は以下のものだ。(同上)

・現金給付は新型コロナの影響で収入が減少した世帯を対象にする
・売り上げが落ち込んだ企業や個人事業主に対する特別融資枠も拡大
・決定済みの対策と合わせ、事業費の総額は国内総生産(GDP)の約1割に相当する56兆円を上回り、財政支出は15兆円を超える見通し
・9月に始めるマイナンバーカードを使ったポイント事業を拡充。2万円までの買い物に対して5千円のポイントを付与する計画だったが、1万円に倍増する案が有力
・観光分野では、終息後の4カ月程度を対象に、旅行代金の補助を検討。3万円を上限として、国内での宿泊やツアー代から半額を割り引くクーポン発行が浮上
・雇用調整助成金は、給付率を中小企業で5分の4、大企業で3分の2に引き上げる

上記で最も重要なのが「個人への現金給付」だが、前述の社会福祉協議会を窓口とする生活福祉資金貸し付けの枠組みを使い、「5月中の給付を目指す」という。

社会福祉協議会はすでにパンク状態!

私自身も、新型コロナの影響を受けてクライアントの業績が急速に悪化したことに伴い、自社の売上が激減している。私のクライアントは多業種にわたるが、イベント業や飲食業はとくにダメージが大きい。

そこで、 緊急小口資金を申し込むべく、相談受付が始まった3月23日に福岡市社会福祉協議会(社協)の専用ダイヤルに電話をした。ところが受付時間中ずっと話中で繋がらず、その状態が5日目の27日まで続いた。

同じ市内在住の友人は午前9時の受付開始時間と同時に発信したところ繋がったということで、同じ方法を試したがダメだった。まるで人気コンサートのチケット争奪戦である。

ちなみに福岡市社協の専用ダイヤルは携帯電話番号の3回線しかない。人口150万人の都市で3回線というのはあまりにも酷い。そこで社協のメールフォームにて抗議したところ下記の回答を得た。

お尋ねの専用ダイヤルが3回線しかない理由ですが、一つは、今回の特例貸付の受付開始が年度末にかかっており固定電話回線の工事業者のスケジュールが立て込んでおり手配できなかったこと、二つ目は携帯電話の新規契約も在庫不足で機器の確保が3つしかできなかったということです。携帯電話については、すでに手配しておりますので、手配ができしだい回線を増やすこととしております。
(返信メールから抜粋)

結局、社協の代表電話にかけたところ担当部署に回してもらうことができた。回線が足りない理由はお粗末としか言いようがないが、柔軟な対応には感謝したい。面談審査の予約はすでに2週間先まで埋まっているという。

この調子で「個人への現金給付」も社協に担当させるという政府方針はいかがなものか。「5月中の給付」も遅すぎると思うが、それすら実現するのは困難だろう。

速やかな個人給付が必要

個人への現金給付を巡っては「富裕層は除外すべき」などの意見も出ている。しかし条件を増やせば増やすほど、審査に時間と労力がかかる。一切の条件を除外し、電話や対面による受け付けは避けるべきだ。(対面は感染拡大を助長する可能性もある)

具体的な方法として、日本年金機構が送付している「ねんきん定期便」の名簿を活用する案が出ている。この名簿をもとに、政府が直接小切手を全国民に送付し、銀行窓口で本人確認の上、現金を手渡せば良い。

あるいは、マイナンバーカードに銀行口座や電子マネーを紐付け、政府から直接振り込むことも可能だ。そうすればマイナンバーカード保持者も一挙に増えるだろう。

政府中枢から聞こえてくる妄言を叩け

現金給付を巡っては大臣クラスの要人から信じられない発言が飛び出している。

麻生太郎財務相「一律でやった場合、現金でやった場合は、それが貯金に回らず投資に回る保証は? 例えば、まあ色々な形で何か買ったら(金額を)引きますとか、商品券とかいうものは貯金にはあまりいかない」

二階俊博自民党幹事長「何かあるたびに現金を給付しなければいけないということではダメだ」

複数の与党幹部による情報として、「所得制限をつけたうえで現金給付することで最終調整に入った」という報道もある。

また、産経新聞などによると「自民党水産部会は国産魚介類を対象とした商品券を発行する案を示した」「自民党農林部会も国産牛肉を対象とした〈お肉券〉を発行する案をまとめた」という。前述の「旅行クーポン」案と併せ、もはや大喜利状態であるが笑えない。

テレビ朝日によると、日本百貨店協会の赤松憲会長も

「消費がGDPを支えているので、その消費を活性化させるためのクーポンとか商品券とか(現金よりも)直接、消費が刺激できるような策を」

と政府に要請したという。

しかし全国スーパーマーケット協会は公式ツイッターに

「スーパーではセルフレジ、セミセルフが普及してますが、商品券は従業員が時間をかけて対応することになり、お客様の店内滞留時間が延びるでしょう」

と投稿。日本百貨店協会に「当協会は入っておりません」としている。

自民党幹部が現金給付ではなく商品券にこだわる理由として、政治アナリストの渡瀬裕哉氏は自身のツイッターで

「商品券だと使用品目を限定することで、与党を支持する利権業界に分配することが出来るからです。現金は自由だけれども、商品券は紐付き」

と指摘している。

調整型の政治では危機を乗り越えることはできない

今年の1月末以降、新型コロナを巡る安倍政権の対応を概観して思うのは、国家的危機の渦中にありながら従来通りの「調整型政治」が続行されているということだ。

例えば中国武漢滞在者の入国禁止措置は「春節」前に実施されるべきだったし、小中高校の休校要請も中途半端かつ遅すぎた。東京五輪の延期も、外国から批判が挙がってからやっと発表された。

安倍首相は明らかに、危機に際して指導力を発揮できるリーダーではない。だからこそ、緊急経済対策を巡る議論の中で与党「族議員」たちが利権獲得に蠢くのである。自民党政治の醜さが、見事に露見している。

安倍首相は直ちに、トップダウンで「全国民への現金給付」を決断し、宣言すべきである。それができないのであれば、一刻も早く退陣し、それができる首相に交代すべきであろう。



本山貴春(もとやま・たかはる)選報日本編集主幹。独立社PR,LLC代表サムライ☆ユニオン準備委員長。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会事務局長。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。近著『日本独立論:われらはいかにして戦うべきか?』(Amazon kindle)

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