【参院選2019】最低賃金、働き方改革…滅びゆく中小企業を各党はどうする?

各党とも今回参院選の公約の一つとして中小企業対策を掲げている。主要7政党の要点をまとめると概ね下記のようになる。

自由民主党

  • 中小企業・小模事業者を固定資産ゼロ、事業継承時の相続税ゼロなどかつてない制度で応援
  • 下請けいじめの撲滅適切な利益分配の実現に向け、産業・業種ごとに取組みを強化
  • 金融機関による新旧経営者からの保証の二重徴求を原則認めない
  • 人手不足に対応するため、生産性向上を支援するとともに、外国人材の受け入れを進める
  • 公明党

  • 中小・小規模事業者等の課題等に対応する「よろず支援拠点」の機能強化を図る
  • 事業引き継ぎ支援センターのさらなる機能強化を図る
  • 海外での販路開拓をめざす中小・正気の事業者を支援するため「新輸出大国コンソーシアム」を活用
  • ポイント還元実施で、中小・小規模事業者の決済端末導入を補助
  • 立憲民主党

  • 最低賃金に関し中小零細企業への支援を拡充
  • 国民民主党

  • 正規雇用増加分の社会保険料に関し事業者負担の半分相当を助成
  • 人材確保策、事業承継を支援
  • 日本共産党

  • 中小企業の社会保険料軽減
  • 大企業優遇税制の是正
  • 大企業やインターネット取引での取引環境の大幅な改善を図る
  • 事業再建は金融だけでなく、施設なども直接支援の対象とする
  • 日本維新の会

  • 中小企業の円滑な事業継承の実現に向けた税制への見直し
  • 社会民主党

  • 生活を再建し、中小企業や農林水産業を支援
  • (最低賃金に関して)中小・小規模企業への支援を一体的に行う
  • 地域で循環する経済を構築するため、地元の中小・小規模企業、農林水産業などの支援を強化
  • 中小企業の存在

    平成30(2018)年度版中小企業白書によると、同年の中小・小規模企業と大企業の売上高、経常利益及び設備投資額は下表のようになる。中小・小規模企業も数値の上では、引けを取っていないといえる。

    売上高 経常利益 設備投資
    中小・小規模企業 137.5兆円 5.5兆円 2.8兆円
    大企業 148.4兆円 12.4兆円 6.4兆円

    また、中小企業庁のデータでは、中小企業経営者の約9割5部が、何らかの形で今後も事業を継続していきたいと考えており、廃業を検討している経営者の約2割5部は、人材面(「適切な後継者が見当たらない」)での理由によるものである。

    さらに中小企業庁の推計によると、後継者不在などのため中小企業の廃業が急増することで、2025年頃までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとされている。中小企業の事業継続対策は、日本の未来を大きく左右すると言っても過言ではない。

    最低賃金

    令和元年7月7日現在(平成30年10月改定)、最低賃金の全国平均は874円、最も高い東京(985円)と逆に最も低い鹿児島(761円)との差は、224円という状況だ。

    維新の会を除く6党が、多少表現の差異はあるものの、時給を「1000円もしくは1000円以上」に引き上げると謳っている。立憲民主党は「5年以内に1300円へ」、共産党に至っては「1500円を目指す」と鼻息が荒い。

    只、与党である自民党・公明党と他野党には、上げ幅に関して一つ異なる点がある。野党は時給の引き上げを全国「一律、どこでも」とだけ明記しているが、与党側は全国「加重平均」で1000円(公明党は2020年代前半に1000円超)としているのだ。

    加重平均とは、企業の賃上げ額を、賃上げの影響を受ける常用労働者数を計算に反映させ「1人当たり」の平均値を算出する方法である。

    これに対し、単純平均とは、企業の賃上げ額を単純に足して「1企業当たり」の平均値を算出して求められるものである。つまり、与党は「1人当たり」、野党は「1企業当たり」での賃上げを掲げているということになる。上述7月7日現在の最低賃金も「加重平均」によるものである。

    勿論、最低賃金が上がることは、給与を支給される側である従業員にとっては吉報である。しかし、当の給与を支給する側である企業経営者にとっては、必ずしもそうとは言えないのではないだろうか。

    確かに最低賃金を上げることで従業員の定着率が良くなるかもしれない。結果、それまで手間暇を掛けて採用した従業員が、待遇面を理由として頻繁に退職をするという事態に歯止めを掛けることにもなるだろう。

    しかし一方で、給与を上げるということは当然、人件費が嵩むことになり、場合によっては経営を圧迫する事態にもなり兼ねない。
     

    人手不足

    中小・小規模企業にとってもう一つの大きな課題が「人手不足」である。

    同上中小企業白書によると、企業の大卒予定者求人数・就職希望者数の推移で求人倍率を見ると下表のとおりであり、299人以下の企業への就職希望者が少ない傾向であることが分かる。

    従業員数 2017年 2018年 2019年
    ~299人 4.2倍 6.4倍 9.9倍
    300人~ 1.0倍 0.9倍 0.9倍

    企業の「安売り合戦」ではないが、経営的な体力が弱い企業にとっては、「賃金増合戦」に落伍してしまう結果、人手を確保できなくなるという場合もある。

    これは、ある企業の担当者から聞いた話である。同企業は、自社食材を素材にしたメニューを提供する飲食店を展開している。同店舗で働く女性のアルバイトは和装で客人をもてなすことになっているのだが、最近の若い女性は、「着付けが大変だ」という理由で、和装での接客を敬遠する傾向にあるという。

    先日、同担当者が、上記理由で辞めてしまったアルバイトに近況を聞いたところ、既に別のある企業で職を得て働いていたという。勤め先は、昨今若者に人気のコールセンターだったそうだ。職場環境は、私服可、「駅チカ(駅から近い)」、快適なオフィス環境等、至れり尽くせり、しかも時給も前職を上回っているという。担当者は、「仮に時給を上げるとしても限界があり、とても敵わない」と嘆息していた。

    外国人労働者

    昨今、「人手不足」の解決策として、外国人労働者の受け入れは違和感のない選択肢となってきた。

    平成31年12月8日、第197会国会(臨時会)で出入国管理及び難民認定法(入管法)及び法務省設置法の一部を改正する法律が成立した。

    これにより、在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」という新たな在留資格が創設され、受け入れのプロセス、外国人に対する支援など7つの規定に関して整備がなされることになった。

    今回の公約では上記7政党の内、与党・自民党、公明党、野党では国民民主党が人手不足に対応するため外国人材受入を支援すると明記していた。

    他野党も外国人に関する記載はあった。「多文化共生社会」が一つのキーワードではあるものの、「外国人労働者の権利擁護」(立憲民主党)、「外国人技能実習制度の抜本的な見直し」「新たな外国人在留資格について、外国人労働者を、地域社会を構成する一員として正面から迎え入れる制度とする」(社民党)、「(人権侵害の温床となっている)技能実習制度は廃止」(共産党)など、その多くは理念的であり人手不足という現実に対処し得るものではないと考える。

    野党としては、ただ制度批判に終始するのではなく、理想である「多文化共生」実現のために現実として眼前に存在する「人手不足解消」の両立案を提示することで存在感を出すべきである。

    外国人労働者について議論がなされる場合、往々にして人手不足への対処という視点から論じられることが多い。しかし、新たなビジネスを創出するという観点から捉えることもできそうだ。

    外国人定住政策の専門家である毛受敏浩・日本国際センター執行理事は、その著書『限界国家』で、地域に移民が増えることで、文化産業、語学、エスニックフードなど国際的なビジネスが地方都市にも増えていき、このことは、留学経験など海外との接点を持つ若者たちが地方に於いても、その能力を活かすことに繋がると期待を寄せている。

    現在、東京都新宿区や静岡県浜松市など一部の都市を除き、まだ大きな潮流にはなっていない。しかし、例えば自民党は「若者の地方での起業・就職に最大300万円を支給し、地方への人の流れを作る」と明言している。若者と外国人が地方活性化の起爆剤になることは、大いに有り得るのではないだろうか。

    働き方改革

    4月に「働き方改革法案」が施行され、約3カ月が経過した。

    第196回国会で、労働時間のデータに不備があったことに端を発し、共産党や社民党が批判する「高度プロフェッショナル制度、残業時間の上限規制、終業時刻と次の始業時刻の間に一定の休息時間を設けることを「努力義務」とした「勤務間インターバル」、そして「同一労働同一賃金」などにより、働き方の見直しが「本格化」されたはずであった。

    これまで、日本の労働制度と働き方における主要課題の一つは長時間労働であった。しかし、現実問題として多くの中小・小規模事業者にとって、労働時間は企業存続の「生命線」と言っても過言ではない。納期など顧客の要望に応えるべく、時には休日返上で稼働させる必要もある。このような場合、労働時間の過度な規制は事業者の活動意欲を削ぐことにも成り兼ねない。私自身、企業のトップからこのような声を聞くことも少なくない。

    とは言え、勿論、長時間労働を肯定する訳ではない。生産性を考慮すれば本来、残業など行わず、所定時間内で業務を終わらせることに越したことはないからだ。

    しかし誤解を恐れずに言えば、自らの仕事に心血を注ぎ、時には寝食も忘れて、誰かのため、何かのために働くことは、決して否定されることではないのではないか。

    我々は何のために働くのか。働くことは、我々を他の動物を分かつ、「人間の証明」でもある。その人が、その人の能力を最大限発揮し、働いた対価で自立した人生を歩む、突き詰めていけばこの為の環境整備を行うことが、政治に課せられた使命ではないだろうか。


    安部有樹(あべ・ゆうき)/昭和53年生まれ。福岡県宗像市出身。学習塾、技能実習生受入団体を経て、現在は民間の人材育成会社に勤務。これまでの経験を活かし、「在日外国人との共生」や「若い世代の教育」について提言を続けている。

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