第48回衆議院選挙は、平成29年10月10日公示、同20日投票という日程に決まった。期日前投票制度も定着しており、投票ハガキが未着でも、公示日の翌日である11日から指定の期日前投票所で投票可能となる。
安倍首相は解散に先立ち会見を開き、解散の大義としてアベノミクス推進、少子化対策のために現役世代への財政投資、そのための消費増税、さらに対北朝鮮強行政策の信任を求める、と説明した。
さらに、自民党の政権公約には憲法9条への「自衛隊明記」が掲げられる見込みだ。とくにこの時期に衆院解散した理由については明らかにされなかったが、米国の対北朝鮮攻撃が迫っており、その前に国民の信任を得る必要があったとされている。
これまで安倍政権は消費増税を延期し、貨幣の量を増やす金融緩和を進めるアベノミクスによって日本経済を浮揚させてきた。長いデフレの時代が終焉し、失業率は低下した。このままアベノミクスを継続すれば、平均賃金の上昇も期待できた。
しかし安倍政権は民主党政権末期に結んだ自民・公明・民主の「三党合意」の呪縛から逃れられず、2年後の消費税増税を決定。その用途を借金返済ではなく財政投資に回すことを公約に盛り込むことになった。
自民・公明・民進の3党が消費増税を進めることにより、2年後の増税と、その結果としての景気悪化は必至とみられていた。
しかし突如として「希望の党」が出現し、消費増税凍結を掲げながら民進党を分裂に追い込むことで状況は一変する。増税を巡って対立軸が生まれ、最大の争点となった。
さらに、憲法改正に関して護憲派と改憲派が「共存」していた民進党が消滅し、改憲派のみが希望の党の公認を受けることになったことで、改憲の是非という対立軸で政党を分類できるようになった。
消費税と憲法改正という2大テーマによって、以下の4象限に主要政党を分類することができる。

政党ポジショニングマップ
(1)消費税減税(または凍結)、憲法改正推進
(2)消費税増税、憲法改正推進
(3)消費税減税(または凍結)、憲法護持
(4)消費税増税、憲法護持
安倍政権は平成28年の参議院選挙の直前に消費増税の延期を掲げ、勝利した。アベノミクスは金融緩和路線であり、そのためには財政再建を建前とする増税は避けねばならない。増税は金融緩和に逆行する緊縮財政路線だ。
従って安倍首相の信念は(1)の「増税凍結&改憲」に属する筈だが、今回は財務官僚に押し切られたのか、(2)の「増税&改憲」に転じざるを得なかった。この時点では対立する民進党も増税派だったため、争点化しないと踏んだのだろう。
しかし増税凍結を唱える希望の党が出現し、民進党が改憲派と護憲派で分裂することで、各政党のポジションの違いが明瞭となった。希望の党と維新の会はともに「増税凍結&改憲」で同じポジションにあり、全国規模で共闘を進める見込みだ。
また憲法改正についても、自民党には「ほんらい護憲派」である(4)の公明党がくっついており、創価学会票なしに小選挙区で競り勝てない自民党は、公明党が容認する範囲の改憲しかできない。それに対し、希望の党と維新の会はより大胆な改憲案を提示できる。
どのポジションの勢力が票を伸ばすのか冷静に判断するならば、安倍自民党は政権維持のためにも(2)から(1)に転換する必要がある。それが選挙前に行われるか、選挙後になるかによって、安倍首相の求心力は大きく変わるだろう。
また、(4)の勢力にある公明党は創価学会票によって議席は減らさないと思えるが、希望の党に公認されない民進党左派が無所属で立候補した場合、比例復活できないため大きく議席を減らす筈だ。そのため民進党左派は選挙前に新党結成を模索中。(新党名は「民主党」というブラックジョークも)
新党が間に合わなければ、左派の比例票は(3)の共産党に流れ、共産党が議席を伸ばすかもしれない。
いずれにせよ、(1)と(3)の議席が増えることで消費増税を凍結し、「実感できる景気回復」への可能性が開ける。
本山貴春(もとやま・たかはる)独立社PR,LLC代表。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会副代表。福岡市議選で日本初のネット選挙を敢行して話題になる。大手CATV、NPO、ITベンチャーなどを経て起業。